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60銘柄を総合ランク! 先行き不透明なら、見るべきは「増収・増益・増配」の長期透明度

特集
2022年3月23日 10時05分

大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第85回

大川智宏大川智宏(Tomohiro Okawa)
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。

前回記事「ロシア・リスクの高い30銘柄、低い30銘柄をランキング」を読む

ウクライナ情勢が緊迫の度合いを強めている中で、世界中の株式相場も混迷の中にあります。ただ、その主因は紛争そのものというよりは、「インフレの加速」といえるでしょう。

原油価格は一時の急騰からは落ち着きを取り戻したとはいえ、WTI原油価格は一時90ドルまで下がったものの、足元では110ドル台に止まりを続けています。2月の米国の消費者物価指数は前年同月比で+7.9%と市場予想を上回り、40年ぶりの伸び率を記録しました。

では、このような環境下で、どのような銘柄に投資をしていけばいいのか。これは非常に難題で、「誰にも分からない」というのが実情でしょう。

今回の地政学リスクの結末も、収束する時期も分かりません。また米国のインフレも、米連邦準備理事会(FRB)のさじ加減1つで見通しが一気に変わるような状況です。

過去20年から、3つの「増」の実績に注目

こうした不透明な環境下では難しいことは一切考えず、長期的に実績を積み上げ、安心感があり、堅調さが継続しそうな銘柄に期待するのが無難な戦略になります。

何十年も淡々と増収、増益、増配を続け、今後も事業の好調さがそのまま続くことがあり得そうな銘柄を選別するのです。こうした銘柄は、派手さはなくとも難局を乗り越えていける可能性が高いと思われます。

今回はその選別の対象を、東証1部上場企業の中で、長期の実績を見るため、過去20年以上にわたって上場している銘柄に絞りました。選別はシンプルで過去20年のうち「増収」「増益」「増配」を何年達成したのかの割合を算出し、順位付けします。言ってみれば、増収・増益・増配の透明度ランキングになります。

ただし、20年以上の実績に絞ると銘柄が限定されることも踏まえ、10年以上20年未満の期間で上場している銘柄についても同様のランキングをしました。

なお同率1位の銘柄が多数存在する場合はサンプル数の多い方から順にランク付けしていくことにします。また数字は、2022年3月現在に取得できる最新値から遡った年数としているため、決算期や数字の発表のタイミングによってはサンプル数にズレが生じることがある点をご了承ください。

20年以上の実績がある上場組からランキングすると

まずは、20年以上の上場実績がある企業からです。最初のランキングは「増収」透明度の高い銘柄です。

トップは、食品卸の加藤産業<9869>と、システムインテグレータ(SI)のNTTデータ<9613>。両社はサンプル年数が30年と大きい中で、増収になったのも30年。「30年間連続増収」というのは、なかなかにインパクトのある字面です。

■増収・透明度の高い銘柄(上場20年以上)

順位銘柄名<コード>業種増収
の年
減収
の年
サンプル
年数
割合
割合
1加藤産<9869>卸売業30030100%
1NTTデータ<9613>情報・通信業30030100%
3アクシアル<8255>小売業29029100%
4ニトリHD<9843>小売業29029100%
5バローHD<9956>小売業28028100%
6パンパシHD<7532>小売業25025100%
7西松屋チェ<7545>小売業24024100%
8ベルク<9974>小売業23023100%
9レック<7874>化学23023100%
10楽天グループ<4755>サービス業23023100%
出所:データストリーム

3位以下は、スーパーやディスカウントストア、家具などの小売業が名を連ねています。また、赤字が続いて株価が乱高下を見せているお騒がせ銘柄の楽天グループ<4755>は、実は売上高の観点では文句なしの透明感の高い銘柄あり、おそらくはこのまま増収自体は続いていくのでしょう。

事業投資による赤字は、増収が続いている間は基本的に株価に対してそこまで悪影響をもたらさないことで知られていますが、楽天については、売上高以外はやや透明感に欠けると見てもいいかもしれません。

続いては、純利益の「増益」明度の高い銘柄のランキングです。

■増益・透明度の高い銘柄(上場20年以上)

順位銘柄名<コード>業種増益
の年
減益
の年
サンプル
年数
増配の
割合
1ヤオコー<8279>小売業2913097%
2ニトリHD<9843>小売業2812997%
3サンドラッグ<9989>小売業2522793%
4小林製薬<4967>化学2422692%
5ベルク<9974>小売業2122391%
6Mスター<4765>サービス業1922190%
7イオンモール<8905>不動産業1822090%
8ハローズ<2742>小売業1822090%
9三益半導<8155>金属製品2532889%
10パンパシHD<7532>小売業2232588%
出所:データストリーム

増収に続いて「増益」でも、小売の勢いが強いようです。トップは優等生スーパーマーケットとして名を馳せている埼玉地盤のヤオコー<8279>です。

小売は、店舗の拡大や同業他社の買収、吸収などが足し算として直接的に利益の成長につながるため、安定的な増収、増益といった観点では上位に来やすいのも納得です。

その他では、小林製薬<4967>なども92%の年で増益を達成している超優等生で、期先の安定的な成長を見通すうえでも透明性が高いといえそうです。半導体のシリコンウエハーなど製造する三益半導体工業<8155>は、唯一の製造業からのランクインとなりました。

そして、3つ目は「増配」透明度の高い銘柄です。20年以上上場している企業について、過去30年間で増配した年の割合が高かった銘柄のランキングです。

■増配・透明度が高い銘柄(上場20年以上)

順位銘柄名<コード>業種増配
の年
変わ
らず
減配
の年
サンプル
年数
増配の
割合
1花王<4452>化学300030100%
2SPK<7466>卸売業230023100%
3ニトリHD<9843>小売業27102896%
4コーナン<7516>小売業24102596%
5USS<4732>サービス業21102295%
6サンエー<2659>小売業19012095%
7パンパシHD<7532>小売業23112592%
8小林製薬<4967>化学21202391%
9ハイデ日高<7611>小売業20112291%
10マニー<7730>精密機器19202190%
出所:データストリーム

1位は、消費財メーカーの雄である花王<4452>です。花王の連続増配は非常に有名で、30年連続どころか33年連続の増配であり、株主還元意識の大変高い会社として知られています。株価は軟調な状態が継続していますが、配当の下方硬直性も含めてこれからまさに底堅さを見せる可能性が高いかもしれません。

2位は、同じく100%の増配年割合として、自動車部品および産業機械のSPK<7466>がランクインしました。それ以降は有名小売銘柄が続き、再び小林製薬<4967>が8位に入っています。小林製薬は株価も底堅く上昇を続けていますが、前述の淡々とした増益の基調と還元への意識の高さの合わせ技で強いディフェンシブ性を発揮しているのかもしれません。

そして、この3つの要素の%の値をスコアの代理変数とし、それらを平均することで総合ランキングを作成したいと思います。ただし、過去数十年間に淡々と増収、増益、増配を続けてきたとしても、足元で事態が急変して減益や減配に転じてしまう可能性もゼロとはいえません。

そこで、念のために12カ月先コンセンサス予想の「増収率」「増益率」「増配率」が共にプラスであるという条件を付けくわえたうえで銘柄を抽出し、ランキング付けしました。

こちらは、上位30銘柄を掲載しています。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ 次ページ 上場20年以上組の総合ランキングに入った30銘柄は

 

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