明日の株式相場に向けて=驚愕の戻り相場「三空踏み上げ」
きょう(23日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比816円高の2万8040円と7連騰。前日までの6営業日で日経平均は2000円以上の上昇をみせていたが、ここで上げ足を加速し、一気に2万8000円台まで踏み込むというのはただ驚くよりない。
3月に入ってからの急落局面で、押し目買いを主張していた市場関係者に改めて意見を聞いた。いわく「売られ過ぎの反動といっても、正直(日経平均が)ここまで急激に水準を切り上げるというのは想像の域を超えていた」(中堅証券アナリスト)とする。「根拠なき熱狂」とはアラン・グリーンスパンの言葉だが、前週から東京市場は「根拠なき熱狂リバウンド」の舞台と化している。しいて挙げれば円安の進行だが、そもそもこれは「悪い円安」としてネガティブな側面で語られていた感が強かった。
日経平均はいわゆる「三空踏み上げ」(厳密には陽線4本)の形だが、その理由を聞かれても返答に窮する。“株は需給”とはいえ、インフレ懸念が後退したわけではなく、23年3月期の企業業績に対する先行き不透明感はむしろ強まっている。企業業績に対するアナリスト予想の強弱を映す「リビジョン・インデックス」も日を経るごとにマイナス幅を広げている。ウクライナ情勢にしても停戦の道筋が見えたわけではなく、仮に停戦に漕ぎつけてもロシアに対する経済制裁がすぐに解かれることはない。エネルギーを含むコモディティ価格の上昇によって世界経済にもブーメランのようにダメージが及ぶ。金融政策はタカ派に傾斜するFRBが代弁する形で、既に引き締め方向に急速に舵が切られた状況にある。いうなればこれから先、逆業績相場と逆金融相場が一緒にやってくるような環境にある。
しかし、日経平均はそうした事情を丸呑みして鮮烈な切り返しに転じている。これが現実である。「(今回形成された)三空は一度は埋めに行く公算が大きいだろう。しかし、足もと全力で売りに回っていた向きは、時間的にも資金的にもその時を待つ余裕がない」(国内投資顧問ストラテジスト)という意見が聞かれた。日経平均はここから、“戻り過ぎ”の反動が出るだろうが、今回の怒涛の戻り相場に抗して売りで勝負をかけた向きが、捲土重来を期すにはもはやダメージが大きすぎるという。
それを象徴するように、きょうは2万8000円コールオプションの売りにまつわる話が市場関係者の間で囁かれていた。某証券ディーラーの話によると「到底値のつかないような、現在の株価水準からは遠いコールを売ることで、細かい利益をすくい上げるやり方がある。これを半ば専門的に行っているディーラーや機関投資家もいる。状況判断的に勝つ可能性は非常に高いが見返りは小さい。勢いロットを利かせることになるが、100回に1回くらいは急騰局面に遭遇して逆目を引くことがある。今回は2万8000円コールの売りが積み上がっていたが、その稀有なケースにぶち当たってしまった」という。買いであれば思惑を外しても損失はベットした分に限られるが、売りの場合はそうはいかない。
かつてLTCMがロシア財政危機でロシアのデフォルトに遭遇して運用が破綻したことがあるが、その規模や賭ける対象、売り買いのベクトルの向きは違っても、起こり得るとは思えないことが起こり得るのが相場で、いつの時代もそれに呑まれるのが投資家であるという構図は一緒だ。
全体相場は「三空に売り向かえ」という格言からすれば、目先調整局面が想定されるが、三空踏み上げは大相場の起点となることも少なくない。AIアルゴリズム売買に振り回されにくい“巡航速度”の中小型株に資金を振り向けるほうが得策かもしれない。EV関連では大泉製作所<6618>、IMV<7760>、量子コンピューター関連でフィックスターズ<3687>、暗号資産関連でアステリア<3853>あたりに目を配っておきたい。
あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の議事要旨(1月17~18日開催分)のほか、2月の全国スーパー売上高、2月の全国百貨店売上高が発表される。海外ではフィリピン中銀、スイス中銀、ノルウェー中銀、南アフリカ中銀、メキシコ中銀がそれぞれ政策金利を発表。また、EU首脳会議が25日までの日程で開催される予定。このほか、3月の仏購買担当者景気指数(PMI)、3月の独PMI、3月のユーロ圏PMI、3月の英PMI、3月米製造業PMI(いずれも速報値)、2月の米耐久財受注額など。(銀)