明日の株式相場に向けて=胎動始めたメタバース関連株
きょう(29日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比308円高の2万8252円と反発。前日に日経平均は10営業日ぶりに安くなり、2万8000円台を割り込んだが、きょうは再び買い直される展開で、前週末のひと押し入れる前の水準を上回ってきた。
目先投資家の視線が集中しているのは為替市場の動向で、前日は一時1ドル=125円台に入るなど、ひと頃の原油市況の高騰を思わせるような急勾配のチャートを形成している。足もとは1ドル=123円台後半まで押し戻されたとはいえ、引いては寄せる波のごとく継続的にドル買い・円売りの動きは続くとみる向きが多い。円はユーロなどドル以外の他国通貨に対しても安い。日銀の指値オペが円の独歩安に拍車をかけている。
円安の進行はハイテクや自動車など輸出セクターには為替差益をもたらすことで、日経平均株価というフィルターを通して眺めた場合はポジティブ材料視されている。しかし、コモディティ価格高騰などで企業のコストが急上昇している現状において、日本経済全体、あるいは国民目線で見れば喜んでもいられない。円の総合的な実力を示す実質実効為替レートも大幅に低下している。この状況は方向性として国全体が貧しくなっていく流れにある。黒田日銀総裁は円安容認だが、ガソリン価格などインフレへの警戒を強める岸田政権の立場では、このまま音無しの構えで円安を放っておくことは考えにくい。
市場では、「今後、財務省主導で為替介入の動きが想定される。そのなか、松野官房長官の発言に注目している」(ネット証券マーケットアナリスト)という声がある。いわく、為替に関する発言は「注視する」「緊張感をもって注視する」「非常に緊張感をもって注視する」の3段階に分けられており、現在はこの真ん中で“緊張感をもって”という言葉がついている段階。これにもう一つ“非常に”という副詞がついた場合は、介入が秒読み局面に入ったということのようだ。日米金利差が浮き彫りとなるなか、更に加速度的に円安が進んだ場合は日経平均の枠組みとは関係なく、国富を失うという観点で相場のネガティブ要因となる可能性がある。為替介入の思惑は、今後の株式市場にとって関心の高い項目となりそうだ。
個別では引き続きメタバース 関連やその周辺株に物色の矛先が向いている。為替市場の動向や原油価格など商品市況の動向に左右されにくいという強みもある。今月16日の当欄でも取り上げたANAP<3189>は大陽線形成後に適度な押し目を入れながら中段で売り物を吸収し、400円近辺で瀬踏みを続けている。ファッションアイテムをメタバース空間で利用可能な形にデジタル変換するサービスが、投資マネーの食指を動かしている。
また、メタバース世界で需要が浮き彫りとなるのが暗号資産だ。同関連ではアステリア<3853>が上値指向を強めているが、業績面でも申し分なく、中勢4ケタ大台指向とみて目先押し目は拾っておきたい。更に、穴株ではメディア工房<3815>をマーク。SNS分野への参入及びXR事業への注力姿勢を明示しており、その視線の先にはメタバース市場での活躍に向けた青写真があると思われる。このほか、今月中旬に紹介したクリーク・アンド・リバー社<4763>の上げ足の強さが目立つ。株価は9連騰で、一時2000円大台に乗せる場面もあった。株価的には目先過熱感もあるが、上値余地は依然として大きそうだ。同社はVR/NFTアーティスト・せきぐちあいみと専属契約を結んでいるが、元来、映像やゲーム、Webコンテンツなどの制作代行が本業で、メタバース事業に向けた布石も着々と進めている。
そしてWeb3時代の到来と、ハード面で時間軸的に一致するのが量子コンピューター である。同関連株として前週当欄で取り上げたフィックスターズ<3687>は底値からの戻り一服場面にあるが、これに続いて底値買いの動きが期待できるのがHPCシステムズ<6597>。前日に同社は量子コンピューターアプリケーション開発会社との資本・業務提携を発表、同分野への参入に本腰を入れる構えにある。
あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に2月の商業動態統計(速報値)が発表される。また、東証マザーズ市場にギックス<9219>が新規上場する。海外では、タイ中銀が政策金利を発表する。また、3月の独消費者物価指数(CPI)のほか、米国では3月のADP全米雇用リポート、21年10~12月期米GDP(確報値)などに注目が集まる。(銀)