明日の株式相場に向けて=半導体&メタバースの相乗とゴールド関連
きょう(19日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比185円高の2万6985円と3日ぶり反発。朝方高く始まった後すぐにベクトルは下向きに変わり、午前10時過ぎにはいったんマイナス圏に沈む場面もあったが、その後は持ち直した。ただ、引け際に手仕舞い売りが出て、2万7000円ラインはわずかに下回った。
全体相場は瀬踏みの状態で、日経平均は2歩進んで2歩下がるような相場が続いている。直近では、ウクライナ情勢や新型コロナウイルスに対する警戒モードが薄れているが、その代わりに投資家や市場関係者の視線を釘付けにしたのが為替市場の動向だ。1ドル=128円台と円安に拍車がかかってきた。週刊誌などでも「悪い円安」をネタにしようと記者が走り回っている状況のようで、複数の市場関係者から、「(週刊誌記者から)円安絡みでコメント要望の電話が来た」という声が聞かれた。今最も世界で耳目を集めている中央銀行総裁はパウエル氏でもラガルド氏でもなく、日銀の黒田総裁であることは間違いない。今月28日に予定される、金融政策決定会合後の記者会見は、これまでになく注目度の高い会見となる。
そうしたなか、個別株の物色意欲は旺盛である。テーマとして浮上しているのはまず、 半導体関連のリベンジ相場。半導体セクターはここ逆風が強く、米国市場ではフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が、グッドフライデーを挟んだ3連休前の前週14日時点で年初来安値を更新している状況にあった。中国でのロックダウンの影響でサプライチェーンリスクが浮き彫りとなり、これが半導体価格に影響を及ぼしている。
ただし一方で、世界的に新たな商機創出が意識されるメタバースの普及が半導体需要を喚起するというシナリオも浮上しており、これまで積み上がっていた空売りのアンワインドを誘発するのではとの思惑がある。折からの急激な円安も輸出主導の半導体関連にとってはプラス材料だ。更に3月決算企業は決算発表を前に手を出しにくいタイミングではあるが、2月決算でウエハー搬送装置を手掛けるローツェ<6323>がひと足先に好決算を発表、今期見通しも絶好調だった。また、8月決算企業のマルマエ<6264>も中間期決算発表後に通期見通しの大幅上方修正を発表した。半導体関連をショートポジションで固めている向きにとっては、どこで買い戻そうか頭を悩ませる局面となっている。個別に見てもチャート的に調整十分でPERも割安に放置されている銘柄が少なくない。中小型株では日本電子材料<6855>が底値圏で動意含み。パワー半導体関連の三社電機製作所<6882>のほか、伯東<7433>、丸文<7537>なども押し目買い好機に映る。
また、半導体需要とも密接に関わるメタバース関連に再攻勢の動きがみられる。前日に、三菱商事<8058>やANAホールディングス<9202>、ベイカレント・コンサルティング<6532>などをはじめ22社による「メタバース推進協議会」の立ち上げが正式発表され、これが投資資金の食指を動かしている。NTTドコモと協業体制で、メタバース分野の需要開拓に意欲をみせるフィールズ<2767>、 NFTアートへ積極的に舵を切るShinwa Wise Holdings<2437>、VR分野の知見を武器にメタバース事業に野心を燃やすクリーク・アンド・リバー社<4763>、「メタバースイベントサービス」を立ち上げ、NFTメタバースの米スタートアップ企業にも出資するブイキューブ<3681>などを引き続きマークしておきたい。
そして、金市況関連だ。投資対象としてETFは分かりやすいが、個別株では住友金属鉱山<5713>が25日移動平均線をサポートラインに上値を慕う動き。このほか、ここにきて着実に下値を切り上げているのが、貴金属回収・リサイクルを手掛けるアサカ理研<5724>で改めて注目しておく価値がありそう。あくまで話のネタだが、同銘柄は2014年11月に8営業日連続のストップ高という驚異的な上昇パフォーマンスを演じ、その時はわずか13営業日で株価をテンバガーならぬエイティーンバガー(18倍化)させた実績がある。
あすのスケジュールでは、3月の貿易統計が朝方取引開始前に財務省から発表されるほか、後場取引時間中には2月の第3次産業活動指数が経済産業省から開示される。このほか、3月の主要コンビニ売上高も発表予定。海外では、4月の中国最優遇貸出金利決定、2月のユーロ圏貿易収支・ユーロ圏鉱工業生産、3月の米中古住宅販売件数、米ベージュブック(地区連銀経済報告)など。(銀)
最終更新日:2022年04月19日 19時27分