雄飛するジャパニーズアグリ、「スマート農業」で活躍本番の7銘柄 <株探トップ特集>
―農業そのものの在り方を変革、IoT・AIの活用で収益性の飛躍的向上を実現へ―
ロシアのウクライナ侵攻を巡る世界的な混乱、中国の景気減速、そしてインフレ懸念など、種々の問題を背景に不安定な相場が続く株式市場。そんな混乱の最中にあって、農業分野で大企業の動きが活発化している。日本農業の飛躍に向けた原動力となる「 農業機械・ スマート農業」関連に焦点を当てたい。
●農業の6次産業化で新たな商機
農業従事者の高齢化、後継者や働き手の不足、効率化の遅れ、耕作放棄地の扱い、地球環境への影響などをはじめとして、日本の農業が抱える課題は多岐にわたる。しかし、そんな農業を巡って、大企業を中心とする動きが水面下で活発化している。例えば3月には山口県下関市が同市内の遊休農地などを活用し、環境負荷を抑えた持続可能なオーガニック農業の推進や、インキュベーションファームの設置による新規就農者の育成をはじめとした7項目において、楽天グループ <4755> [東証P]及び楽天農業と連携協定を締結している。
新潟県は4月に入って、クボタ <6326> [東証P]及び新潟クボタと農林水産省の「みどりの食料システム戦略」推進に向けたスマート農業の普及や、新潟米の輸出促進に取り組むことで、環境と調和のとれた新潟県農業の持続的な発展を図ることを目的に連携協定を締結した。更にソニーグループ <6758> [東証P]も足もとで、北海道大学内に「ソーシャル・イノベーション部門 for プラネタリーバウンダリー」を開設。北海道大学の学術的知見と同グループの先端技術を生かし、(1)革新的スマート農業(2)リジェネラティブアグリカルチャー(3)ブルーカーボンセンシングの3テーマを中心として、農業・森林・海洋分野における社会や地球環境の課題解決に貢献する技術及びソリューションの開発に取り組むとしている。
挙げたのはほんの一例に過ぎないが、こうした取り組みの根底にあるのは「農業の6次産業化」だ。これは、「農林漁業者(1次産業)が、農産物などの生産物の元々持っている価値を更に高め、それにより、農林漁業者の所得(収入)を向上させていくこと」である。また、生産物の価値を上げるため、農林漁業者が、農畜産物・水産物の生産だけでなく、食品加工(2次産業)、流通・販売(3次産業)にも取り組み、それによって農林水産業を活性化させ、農山漁村の経済を豊かにしていこうとする取り組みのことを指す。農業の6次産業化を通じて、農業そのものの在り方を変革することで、収益性をも飛躍的に高め、新たなビジネスの柱を探ると同時に社会への貢献を積極的に探っていく狙いである。
●加速するスマート農業に向けた取り組み
この農業の6次産業化を考えるうえで切り離すことができないのが、ICTや IoT・ AIや ドローンなどの活用を含めた「スマート農業の実現」となる。農水省が公表している事例を見れば、単純に必要労働力が最小限化することによる大規模農業経営の実現のほか、ドローンとマルチスペクトルカメラによる生育診断技術を導入することで、その分析結果を受けて生産工程を改善し、生育の均一化を実現するなどさまざまな取り組みが行われている。
また、東京メトロは東西線の西葛西駅付近の高架下に完全人工光型植物工場を開設。レタス、ベビーリーフなどを「とうきょうサラダ」というブランド名で栽培し、都内のレストランなどに販売。農地の概念を建物の中にまで大幅に拡大するような、こうした栽培方法は葉物野菜では当たり前のようになって久しい。
足もとでは、天候不順のほか、電気料金の値上げやウクライナ情勢を巡る資源価格の高騰などによって、農作物の生産にも影響が及んでいる。しかし、スマート農業の取り組みが進む中で、生産コストの押し下げや収穫率の一段の向上が実現することで、こうした状況への対応力も将来的には向上していくことになるだろう。そこで、今回は「農業機械・スマート農業」関連の銘柄にスポットライトを当てた。日本農業の飛躍を後押しする関連銘柄の今後の活躍に中長期的に注目したい。
●中長期で注目されるスマート農業関連銘柄はこれだ
オプティム <3694> [東証P]~スマート農業に必要なドローンやセンサー、農業機械などのハードウェアのほか、ソフトウェア、サービスを一括で提供する「スマート農業プロフェッショナルサービス」を展開。IoT・AI、ロボットを活用した「スマート農業アライアンス」においては、パートナー申し込み実績数は約2000団体となっている。また、ソフトバンク <9434> [東証P]やクボタとのスマート化実証実験なども行っている。
ホシザキ <6465> [東証P]~農業分野においては、残留性も作物や土壌への影響も極めて少ない農業用の電解水(電解次亜塩素酸水)生成装置、食品殺菌用電解水生成装置、プレハブ形の恒温高湿庫と冷蔵庫、大型製氷機などを手掛けており、生産から収穫、保管、市場出荷まで作業の効率化をサポートしている。なお、電解次亜塩素酸水は、高い殺菌力に加えて、作物へのダメージも低く、散布時の重装備が必要ないといった特徴を持つ。
クボタ <6326> [東証P]~自動運転・無人化農機の開発を進めており、18年にはトラクター・田植機・コンバインの全3機種でGPS搭載農機を製品化している。また、ICTを融合させたクラウドが構成する営農支援サービス「KSAS (Kubota Smart Agri System)」を14年より提供している。最近では、新潟県と新潟米の輸出促進に関する連携協定を結んでおり、スマート農機の精度向上や効果的な導入に向けて協力する計画だ。
井関農機 <6310> [東証P]~スマート農機は普及・拡大に向けた動きが加速しており、田植機のGPSを活用した直進・旋回アシスト使用の割合が年々増加傾向にある。大型クラスである8条において、21年は約6割が直進・旋回アシスト仕様となった。また、同社は今年2月にロボット田植機、3月に直進アシスト中型トラクターを発売し、成長市場であるスマート農機の商品展開を図っている。
トプコン <7732> [東証P]~GNSSと自動操舵システム技術を駆使した精密農業システムを手掛ける。同社のGNSS受信機は米国のGPSなど、多くの衛星数を受信しているため、安定した作業を行うことができる。また、更に高い精度が求められる作業においては衛星からの情報だけではなく、地上に設置した基地局で発信する「補正情報」を受信することで精度を高める。同社のGNSSガイダンスシステムと自動操舵システムは、付け替えが簡単なため、既存のトラクターを自動化できるメリットがある。
セラク <6199> [東証P]~農業生産の可視化と省力化を実現する農業ITプラットフォーム「みどりクラウド」を提供。21年10月には施設園芸用資材で高いシェアを持つ東都興業(東京都中央区)とビニールハウス用電動換気システムのIoT化技術開発における業務提携を行っている。また、「みどりクラウド」などを用いて取り組んだ農水省スマート農業実証プロジェクトの実証によって、アスパラガス栽培にスマート農業を用いることで最大47%の収量増加効果を得られる可能性があることが明らかになったと発表している。
ユニリタ <3800> [東証S]~圃場(ほじょう)の作付け、スケジュール、生産管理などを1枚のダッシュボードで管理できる「ベジパレット」を提供。施設栽培農家向けの農業経営支援クラウドサービスであり、圃場ごとの損益可視化や圃場の見える化、遠隔で状況がわかるリモートセンシングの利用のほか、作業のマニュアル化や生育方法などのノウハウと情報共有を促進する。
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