景気懸念による期待インフレ低下は痛しかゆし?/後場の投資戦略
日経平均 : 26726.65 (+135.87)
TOPIX : 1880.00 (+3.48)
[後場の投資戦略]
本日の日経平均は海外市場の動向睨みで上下に振らされつつも、ひとまず3ケタの上昇で前場を折り返した。もっともここ2日で960円あまり下落していただけに、自律反発としても物足りない印象は拭えない。個別・業種別では、中国株の先行き懸念から前日大きく下落したソフトバンクGが買われているほか、中小型を中心としたグロース(成長)株が堅調。一方で原油などの商品相場が下落し、市況関連株に売り。前引けの日経平均が+0.51%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.19%。値がさ株がけん引役とあってTOPIXの伸びは鈍い。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆2000億円あまりで、ここ数日と同様にさほど膨らんでいない。
新興株ではマザーズ指数が+1.61%と9日ぶりに反発している。こちらも朝方伸び悩む場面があったが、中小型グロース株への買いが追い風となってまずまず堅調だ。日足チャートを見ると、700pt割れからすかさず切り返してきた点には安心できるものの、下降する5日移動平均線(710pt近辺)を明確に上抜けできてはいない。なお、明日27日はストレージ王<2997>とモイ<5031>、翌28日はクリアル<2998>とペットゴー<7140>が東証グロース市場に新規上場する。モイはライブ配信サービス「ツイキャス」で知られる。これらの後は5月末までIPO(新規株式公開)がないため、個人投資家の関心を集めそうだ。
さて、25日の米市場動向を見ると、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI6月物)が1バレル=98.54ドル(-3.53ドル)と続落。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.91%(-0.07pt)に、10年物国債利回りは2.82%(-0.08pt)にそれぞれ低下した。
米10年BEIは先週、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締め観測が強まるなかで一時3%台まで上昇し、「FRBはインフレを退治できない(著名投資家デービッド・アインホーン氏率いる米ヘッジファンド、グリーンライト・キャピタル)」との見方も出ていた。それだけに原油価格の下落とBEI低下は安心材料と受け止められるかもしれないが、その背景がロックダウン拡大による中国経済の減速懸念とあれば素直に喜べないだろう。本日の上海総合指数は前日ほど弱くないものの、一進一退の展開でコロナ禍への懸念に揺れる投資家心理を映しているようだ。
また、世界中の投資家から投資資金を集めていた中国テック株の下落を不安視する向きもある。足元下げ渋っているのに安心感を覚える投資家が多いのはソフトバンクGの反発からも窺えるが、海外メディアの記事では中国ハイテク株の下落による「痛みはこれから(DZバンクのアナリスト、マヌエル・ミュール氏)」との指摘が見られる。
前日の当欄で触れられていたが、日米とも6月限のプットオプション(売る権利)の建玉が増えているようで、「5月に売れ(セル・イン・メイ)」への警戒感が強いことがわかる。また、前日のように相場が大きく動く局面では、カウンターパートとなっている金融機関などからヘッジ目的の先物売りが出やすいだろう。5月3~4日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が控えていることもあり、当面落ち着かない展開とみておいた方がいいだろう。
本日も国内ではファナック<6954>、キヤノン<7751>などが決算発表を予定しており、米国でも企業決算とともに経済指標の発表が多い。特に2月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数などはインフレの行方を占ううえで注目されそうだ。(小林大純)
《AK》