明日の株式相場に向けて=「土地」はインバウンド最強の“裏テーマ”

市況
2022年6月1日 17時00分

名実ともに6月相場入りとなった1日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比178円高の2万7457円と反発した。EUがロシア産原油の禁輸で合意したことを受け原油価格が上昇、またぞろ欧米でインフレ警戒感が再燃し、東京市場もセンチメントの悪化が予想された。しかし、日米金利差から1ドル=129円台までドル高・円安が進行し、これを援軍に思った以上に頑強な地合いだった。

前日の米国株市場では、朝方から荒れ模様となりNYダウは450ドルを上回る下げとなったものの、その後は買い戻され一時はプラス圏に浮上する場面もあった。結局、売り直され220ドルあまりの下落となったが、前々日までの6営業日で2000ドル近い上昇をみせていたことを考慮すれば当然の一服といってもよい。東京市場でも取引開始直後こそ、米株安に歩調を合わせ気迷いムードが漂ったが、その後は次第に買い優勢に傾き、日経平均は前引け時点で192円高と高値圏での着地をみせた。後場は上値が重かったとはいえ、緩む場面ではすかさず買い注文が這わされ、2万7000円台半ばで粛々と売り物をこなす展開に終始した。

市場では「毎月、月初め(1日)に投信の積立設定の買いが入るため、それが株価に浮揚力を与えている」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘もあった。その影響もあってか、売買代金上位の半導体主力株が軟調だったにもかかわらず、弱気ムードは全体に伝播しなかった。米10年債利回りや30年債利回りの上昇を背景にメガバンクや大手生保株などが堅調だったほか、日米金利差を背景としたドル高・円安で自動車株や海運株など円安メリット株に買いが誘導され、全体相場を支えた。

注目されるのは、やはり 海運株の強さだ。円安の進行はドル建て決済の海運には有利に働く。もっとも、ドル円相場を横目に海運に投資資金が流入している感触はない。また、現在の海運株人気は以前とは中身が大分異なっている。“海運大手3社”というが、これまでは日本郵船<9101>、商船三井<9104>がツートップ銘柄で、川崎汽船<9107>はそれらから株価面で後塵を拝していた。ところが、5月以降はこの川崎汽が完全に主役の座を占めるようになった。株価も郵船との差を急速に縮め、足もとでは1万800円台でほぼ横並びとなっている。先に1対3の株式分割を実施した商船三井に続き、日本郵船も9月末を基準日に3分割することを発表している。したがって、未発表の川崎汽は分割期待の買いが入りやすいという理屈はつくのだが、しかしそれは今の株高の本質ではない。

「需給はすべての材料に優先する」という格言に示される通り、川崎汽が郵船の株価にキャッチアップを果たした最大の要因は株式需給関係によるところが大きい。郵船と商船三井の信用倍率は直近データでいずれも3.7倍台。買い残の方が売り残を大きく上回る状況にある。対して、川崎汽船のそれは0.8倍台でいわゆる売り長だ。また、日証金では株不足で逆日歩がついている状態にある。おそらく表面化していない貸株調達による空売りも考慮すれば、川崎汽だけ踏み上げ相場の素地を内包していることになる。

明治海運<9115>の株価変貌については、大手3社のようにコンテナ船市況の高騰ではなく、 インバウンドや不動産部門の収益機会拡大が買い材料となっているが、直近の急騰はやはり貸株調達による空売りの強制的な買い戻しが機能した可能性が高い。前日の当欄では、同社株については上がり過ぎている嫌いがあり、とりあえず様子見姿勢を推奨したが、荒ぶる投資マネーの勢いは止まらず、きょうは前日のザラ場高値を上回って取引を終えた。明治海運のネクスト銘柄としてマークしたいのは飯野海運<9119>だ。都心の一等地でオフィスビル賃貸を手掛け、膨大な土地含みを有する。今の日本にとって「土地」はインバウンド最強の裏テーマといってもよい。ちなみに防衛関連は現在の株式市場で旬だが、「買収防衛」はそれを上回る喫緊のテーマとなる。少なくとも飯野海のPBR0.8倍は安過ぎる。

あすのスケジュールでは、5月のマネタリーベースが朝方取引開始前に日銀から発表される。また、午後取引終了後に5月の財政資金対民間収支が財務省から開示。このほか10年物国債の入札が午前中に予定されている。海外では4月の豪貿易収支、5月のADP全米雇用リポート、1~3月期米労働生産性指数(改定値)、4月の米製造業受注など。なお、英国市場は休場となる。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2022年06月01日 19時11分

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