高まる非接触ニーズにタッチ、「空中ディスプレー」で浮揚する銘柄群 <株探トップ特集>

特集
2022年6月9日 19時30分

―社会実装に向け複数の方式で開発進む、企業や自治体庁舎の受付などにも採用―

次世代の技術といわれてきた 空中ディスプレーが実用化に向けた新たなステップを上り始めた。セブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]子会社のセブン-イレブン・ジャパンが今年1月、アスカネット <2438> [東証G]、東芝テック <6588> [東証P]、三井化学 <4183> [東証P]などと共同で、空中ディスプレー技術を採用したキャッシュレスセルフレジ「デジPOS」の実証実験を都内のセブン-イレブン6店舗で開始すると発表し2月から実施。また、3月にはヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス <4433> [東証P]傘下のUsideUが、アスカネットの空中ディスプレー技術を用いた「アバター遠隔接客システム」を広島県庁に提供したと発表した。空中ディスプレーは徐々に生活の場に広がりつつあり、今後更に普及が進むとみられる。関連銘柄に改めて注目が必要だ。

●特殊な光学素子プレートを用い映像を空中に結像

空中ディスプレーとは、光の反射を利用することで空中に映像を表示させる技術のことで、特殊な光学素子プレートとディスプレーを組み合わせて映像を空中に結像する。これまで、立体的に画像を映し出す技術としては特殊なフィルムや煙などに映像を映し出すものや、専用の眼鏡をかけるものなどがあったが、空中ディスプレーは特殊なフィルムや煙などが不要で、更に赤外線センサーなどを組み合わせて指の動きを検知し、非接触のタッチパネルとしても利用できるのが特徴となっている。

これまでも技術開発が進められてきたが、最近になって急速に社会実装が進みつつある背景には、コロナ禍で非接触ニーズが高まっていることに加えて、光学素子プレートの製造技術の進化などがある。一方で歩留まりの悪さなど製造コストの問題や新たな用途開発などいくつかの課題はあるものの、今後の更なる普及が期待されている。

●空中ディスプレー関連の注目銘柄

空中ディスプレーの技術には複数の種類があり、それぞれの方式で社会実装に向けた開発が進められているが、そのトップランナーともいえるのが、「2面直交リフレクター方式」を採用するアスカネットだろう。前述のセブン-イレブン店舗の実証実験や広島県庁の事例のほか、マンションの空中タッチインターホンや企業や自治体の受付順番案内システム、空中ディスプレーデジタルサイネージなどの実証実験に採用。また、マクセル <6810> [東証P]では、同社の技術を採用した空間映像マンマシンインターフェース「AFMI」の量産を始めており、今後の普及に期待が持てる。

日本カーバイド工業 <4064> [東証P]は、道路標識に使われる再帰反射の技術を活用した「再帰反射方式」の空中ディスプレーを開発。クリニック向け自動受付精算機やデジタルサイネージに採用され実証実験が進められているほか、中国向けの非接触空中タッチ制御エレベーターシステムに採用され実用化。マクセルの非接触ヒューマンマシンインターフェースにも採用されている。中期経営計画でも研究開発力の強化の一環として空中ディスプレー用プリズムシートを挙げており、今後の成長が期待されている分野といえよう。

凸版印刷 <7911> [東証P]はパネルと並行に映像を出現させる独自開発の「並行浮遊方式」の空中ディスプレーを開発し、今年8月に竣工予定の「東京ミッドタウン八重洲」のエレベーターホールなどに採用されている。同社では、オフィスビルをはじめとするさまざまな施設や装置の非接触オペレーションのキーデバイスとして普及を図り、2025年までに年間1万台の提供を目指すとしている。

大日本印刷 <7912> [東証P]は、画像を記録したフィルムに一定の角度からLEDなどの点光源の光を当てることで、フィルムから離れた空中に画像を浮かび上がらせることができるリップマンホログラム技術を用いた非接触ホロタッチパネルを開発。更に同技術を用いMIRAI BAR(熊本県八代市)と空中ディスプレーを共同開発した。同製品は資生堂 <4911> [東証P]が銀座に設置したグローバルステージブランド旗艦店などに採用実績があり、今後は店舗を保有するメーカーや金融機関に提供し23年度に10億円の売り上げを目指すという。

三菱電機 <6503> [東証P]は、光源と再帰反射材、ビームスプリッターからなる光学系を用いてディスプレーの光を空中に再結像する空中ディスプレー技術を開発。これを用いて、アスカネットなどと共同開発した来訪者受付システムを福岡市の「天神ビジネスセンター」に設置した。また、空中ディスプレーの映像のぼやけ解消のため、空中映像の画質を補正する技術を開発しており、空中ディスプレー技術の社会インフラでの活用を視野に入れた研究も並行して行っている。

このほか、「2面コーナーリフレクタアレイ(DCRA)方式」の空中ディスプレーを開発したパリティ・イノベーションズ(京都府精華町)と共同で非接触インターフェース・システムを開発した村上開明堂 <7292> [東証S]にも注目。更に、手先や指先をセンシングデバイスでキャプチャーし、非接触で操作できるソリューションを開発したNEC <6701> [東証P]や、空中ディスプレーを用いた非接触タッチパネルに必要なモーションセンサーを手掛けるソニーグループ <6758> [東証P]、宇都宮大学と空中表示/入力デバイスの「ステルス空中インターフェース」を開発したアルプスアルパイン <6770> [東証P]、非接触タッチパネルを手掛けるSMK <6798> [東証P]やNISSHA <7915> [東証P]などにも注目したい。

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