明日の株式相場に向けて=迷ったら「好業績・激安」中小型株の押し目
きょう(21日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比475円高の2万6245円と3日ぶり急反発。前日の米国株市場は休場だったものの、欧州株市場ではドイツやフランス、英国といった主要国をはじめほぼ全面高に買われたことで、東京市場も必然的にリスクオフの歯車が逆回転するタイミングを迎えた。値上がり銘柄数がプライム市場全体の93.5%を占めるという赤札オンリーの地合いであり、日経平均は最終盤に伸び悩んだものの、500円近い上昇で2万6000円台を回復した。
日経平均の急落が続いた後に生じるリバウンドの特徴としては、大幅高かつ全面高が挙げられるが、いきなり値を飛ばすのではなく、最初は気迷い気味にスタートするパターンが多い。売り物が枯れた後の「始めちょろちょろ」は、次第に炎が「ぱっぱ」と燃え上がる展開となりやすい。取引開始直後は小幅高で売り買いを交錯させているが、徐々に下値を切り上げて意外な大幅高に発展するパターンである。「AIアルゴリズムによる連続的な買い戻し(スライス買い)が作用することが背景にある」(中堅証券ストラテジスト)という。ただし、これは必ずしも大勢トレンド転換にはつながらない。個別株は、全体相場の急反発局面では一斉高に転じるため、業種やテーマなどはあまり関係なく売り込まれた銘柄のリバウンドが大きくなる。しかし、きょうのような目先反発に転じたところで買い出動するとなると、前日よりも当然高いところを拾うことになるので、心理的に躊躇してしまう。
「落ちてくるナイフはつかむな」という有名な相場格言があるが、言うほど簡単な話ではない。地面に刺さってから拾いに行く場合でも、刺さったままジッとしていてくれればいいが、そう都合よくはいかないのが相場の常だ。刺さったと思った瞬間、ゴム毬のようにリバウンドしてしまうのが現実であり、それを掴んでよいのか、はたと当惑してしまう。こうした時の一つの手段としては、好業績・割安かつ足の速い銘柄に照準を合わせるという選択肢がある。全体相場のボラティリティに負けることなく、なおかつ実態面へのアプローチから下値に対する保険をかける狙いで有効なケースが多い。
例えば今回のケースで言えば、総合プラント工事会社で電力やエレクトロニクス分野にも幅広く展開する高田工業所<1966>。PER4倍前後でPBRは0.4倍台と超割安圏にあり、23年3月期は14%増収、69%営業増益という高変化を見込んでいる。時価総額100億円未満の小型株で上にも下にも足は速い。同社株は前週末17日に形成した下ヒゲが、いわゆる地面に刺さったナイフにも見える。また、仮にここから再び下押したとしても超割安な株価指標を拠りどころにブレーキがかかりやすい。
紙専門商社で海外でのM&A戦略を駆使して業容拡大路線を走る国際紙パルプ商事<9274>も、中小型材料株特有の値運びとバリュー株の側面を合わせもつ銘柄としてマークしておきたい。同社株はPER5倍未満、PBRは0.6倍台である。業績面では22年3月期に営業黒字に転換し、23年3月期は28%増益を予想している。
このほか、PER8倍前後でPBR0.9倍前後のリリカラ<9827>はインテリア商品卸大手で21年12月期は営業利益が6倍化、22年12月期は更に前期比2.6倍の13億8000万円と急激な伸びを見込む。エンシュウ<6218>は工作機械の老舗企業でレーザー加工装置でも高い実績を持つが、23年3月期営業利益は前期比66%増予想でPER7倍強、更にPBRが0.5倍というのは、やはり評価不足で時価はイレギュラーに放置されているという見方ができる。ワイヤーロープ最大手の東京製綱<5981>も業績は急回復局面にあり、23年3月期は営業54%増益見通しだ。土砂崩壊対策製品を手掛けており、台風シーズンを控えテーマ性も内包する。同社株もPER7倍台、PBR0.5倍台で800円台の株価は拾い場となっている可能性がある。
あすのスケジュールでは、参議院選挙公示のほか、朝方取引開始前に日銀の金融政策決定会合の議事要旨(4月27~28日開催分)が開示される。また、午後取引時間中に5月の全国スーパー売上高が発表される。海外では、5月の英消費者物価指数(CPI)、パウエルFRB議長の上院での議会証言に耳目が集まる。また、シカゴ連銀のエバンズ総裁の講演や、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁とリッチモンド連銀のバーキン総裁の討論会参加などFRB高官の発言機会が相次いで設けられている。(銀)