明日の株式相場に向けて=「鋼鉄の鳩」日銀プレーで後場急伸

市況
2022年7月7日 17時00分

きょう(7日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比382円高の2万6490円と大幅反発。前日の下げ分をまとめて取り返して、お釣りが来る強調相場となった。あすはオプションSQ算出が予定されているほか、ETF分配金捻出に伴う売りが現物と先物合計で1兆円を上回る金額で発現する。ETF売りについては、元来は売り需要が集中せず分散されるため、相場にそれほどドラスチックな影響は出にくい。ETF決算日の絡みで7月の8日、9日、10日の3営業日で換金するところを、今回についてはカレンダーのいたずらで9日と10日が休日であるため、8日に集中するという単純なメカニズムである。ということで、今週は強気に買い向かうのはなかなか難儀な週で、むしろETF絡みの売りが噴出して日経平均が下げたところを拾いたいと考えるのが人情である。

更に手慣れた向きであれば、売りから入ってみたい誘惑にも駆られるところ。市場関係者によると「前週からこのETFに絡むイレギュラーな売り圧力が喧伝されていたことから、個人の間でも空売りポジションを積み上げる動きが多くみられた」(ネット証券マーケットアナリスト)という。しかし、全貌が見えてしまっている悪材料は怖くないというのが相場である。買いであろうと売りであろうと、皆が既に知っている話であれば、それは利益を生まない。今週の相場はそれを証明する地合いとなり、とりわけきょうは売り方が焦らされる展開となった。

きょうの相場の立役者は日銀(にまつわる思惑)だった。世界的に中央銀行による金融引き締めの動きが相次ぐなかで、怯むことなく大規模金融緩和政策の維持を標榜する日銀だが、「どこかでそのスタンスに変化が生じるだろう、という見方が海外投資家などの間にも広がっている」(準大手証券ストラテジスト)とする。しかし、これまでの経緯で黒田日銀総裁にタカ派寄りに変節したような発言は全くみられない。現在の黒田氏は、金融引き締めに急傾斜するパウエルFRB議長やラガルドECB総裁に一瞥(いちべつ)を投げることもなく、まさに鋼鉄のハト派と化した状態にある。

今月26~27日の日程で行われるFOMCに先立って、20~21日の日程で行われる日銀金融政策決定会合と黒田総裁の記者会見には、当然ながら世界の耳目が集まることになる。そうしたなか、きょうは後場寄り突発的な大口の買いによって、日経平均がいきなり上げ幅を急拡大させてスタート。前引け段階では190円あまりのプラスだったが、後場寄り早々に400円高を超える上昇をみせ、マーケットにざわめきが起こった。

前場の取引終盤に日銀が22年度の物価見通しを2%以上に上方修正し、23年度も上方修正を検討する可能性があるとの観測報道が流されたが、GDP見通しについては下方修正の可能性が示唆された。そしてそれに付随して、株式市場にインパクトを与えたのが、「(日銀は)持続的な経済、物価の改善には賃上げの実現が不可欠と位置付けており、現行の金融緩和政策を堅持する方針に変化はない」という文脈である。この報道が空売りの踏み上げを狙ったというわけでもないのであろうが、市場に伝わった午前10時50分過ぎあたりから、竜巻のように売り玉が吸い上げられ日経平均が上昇、前場取引終了後も空売り手仕舞いに向けた動きが急速に広がり、後場寄りのジャンピングスタートにつながった。

ただ、これは株式市場の空売り筋をターゲットとした仕掛けの“口実”であった可能性もある。なぜなら前場終盤から後場寄りにかけての時間帯に外国為替市場で大きな動きはみられなかった。本来なら円安方向に大きく振れるところで、株高・円安のセットとなるのが道理であるが、そうはならなかった。「水鳥の羽音に驚いて売り方が買い戻す展開、ショートカバーを誘発する狙いがあったのではないか」(中堅証券マーケットアナリスト)という声もある。結果的にこれがガス抜きとなれば、来週以降の相場で空売りの仕切り直しを画策しやすいという穿った(うがった)見方もある。

あすのスケジュールでは、5月の家計調査、5月の国際収支、6月の景気ウォッチャー調査など。また、3カ月物国庫短期証券の入札も予定される。IPOが1社予定されており、グロース市場にINTLOOP<9556>が新規上場する。なお、この日は株価指数オプション7月物のSQ算出日にあたる。海外では、6月の米雇用統計に注目が集まるほか、5月の米卸売在庫・売上高、5月の米消費者信用残高などが発表される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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