日本株&アメ株で伸びる人~郵船注目の裏にアメ株あり
第24回 日本株&アメ株で勝つ人
~個人投資家4800人の調査で判明!
(川羊さんの場合)
理学博士の学位を持つ元エンジニアの投資家。同僚の勧めもあり2013年に150万円で投資を始め、わずか1カ月で+50%に膨らます。好調な滑り出しのままアベノミクスの波に乗り、累計で1000万円の投資資金を2倍以上にする。主に割安成長株を狙い、全体相場の急落時にアメ株を対象としたETF(上場投資信託)や投資信託を積み上げていくという戦略で安定した資産増を目指す。芝生の手入れに力をいれており、写真は自慢の芝生を撮影したもの。
昨年末からの日米主要株価指数を比較すると、今年7月末時点でTOPIX(東証株価指数)は▲2.6%ほどに対して、米S&P500種株価指数は▲13%ほどと、アメ株が日本株をアンダーパフォームする状況に。足元の環境はアメ株の投資意欲を減衰させがちだ。
しかし、長期で見ればアメ株への投資は、"本家"のみならず日本株の投資にプラス面をもたらす。『株探』編集部が今春に実施した「株探-個人投資家大調査」(2022春)の回答によると、日本株とアメ株に投資している日米二刀流さんは、日本株一筋さんよりも、日本株投資の年間成績が「勝ち」になる割合が高くなっている。
■日本株投資の年間成績が「勝ち」と答えた割合
年 | 二刀流 | 一筋 | 差 |
足元 | 42% | 46% | ▲5% |
21年 | 33% | 38% | ▲6% |
20年 | 28% | 37% | ▲9% |
19年 | 24% | 32% | ▲7% |
こうした結果を踏まえ、これから2回に分けて日本株とアメ株の投資でシナジー効果を挙げている人を紹介する。初回に登場するのはスタートしたばかりのアメ株投資が日本株投資の底上げにつながった元エンジニアの川羊さん(ハンドルネーム)だ。
米国の金融引き締めから資金の流れを読み、郵船で110万円のリターン
足元での成功例が、割安性と抜群の配当利回りの高さで注目されている日本郵船<9101>への投資だ。2021年12月下旬に取得し、翌22年4月中旬に売却して、配当収入を合わせて110万円のリターンを獲得した。
同社株に注目した要因の1つが、米国が金融引き締めに舵を切り始めたこと。アメ株投資を始めていたことで、米国の金融政策に対する感度を高めていた。
金利上昇が起きることで、理論株価が下押しされるグロース株からバリュー株に資金シフトが起きやすくなる。
米国の金融政策の転換は、割安成長株を主力とする川羊さんにとっては追い風の環境となり、銘柄探しに力が入った。
そうした状況の中で、郵船株に注目したのは、
① | PERが2倍台、配当利回りが10%台と割安水準にある、 |
② | コンテナ船運賃市況の高止まりと、航空貨物の代替需要で収益成長が見込めたこと、 |
③ | 多数の証券会社が目標株価を引き上げたこと(下の図)、 |
――点を評価したからだ。バリュー株の象徴として注目されていた海運株の中でも、郵船は航空運送も手がけており、コンテナ船の需要が逼迫する中で、航空輸送へとシフトする需要も収益の押し上げになると考えた。
郵船で上の3つに注目したのは、川羊さんが投資において
A. | テーマ性のある割安成長株から、 |
B. | チャートが上昇トレンドに入った銘柄を探し、 |
C. | 騰勢が続くまでは保有する、 |
――スタイルを取っているからだ。
割安成長株の基準にはPER(株価収益率)が12倍以下、成長性は過去10年の業績トレンドや、ROE(自己資本利益率)が10%以上という目安を設けている。
これらに有利子負債が少ないことや、複数の証券会社が強気のレーティングをつけていることも重要視するポイントの1つとなっている。
■川羊さんが参考にした株探の日本郵船のレーティング
75日線を見ながら売買タイミングを図る
郵船の売買では、21年末に株価が75日移動平均線を上抜けたことを確認してから買い出動した。さらに上昇トレンドが継続していたことから、翌22年1月4日頃に買い増しを行っている。
売却したのは、22年4月下旬。ファンダメンタルズ面では、中国・上海でのロックダウン(都市封鎖)が長期化する懸念があり、中国発のコンテナ輸送量が減少する可能性があったことに加え、テクニカル面では25日線が75日線を下抜けるデッドクロスが起きたこともあり利益確定した。
■『株探プレミアム』で確認できる郵船のヒストリカルPERと日足チャート(21年11月末~)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
結果的にはリターンを手にしたが、チャートの動きを踏まえると、利確のタイミングは遅れた面もある。同社株は3月中旬から短期の移動平均線では下落トレンドに転換していた。米バイデン大統領が海運各社を寡占的な利益をあげていると非難したことから、川羊さんは海運株に逆風が吹き始めたと感じており、実際に同社株も軟調になり始めた。
そうした中で、川羊さんは3月末の配当の権利確定までは、得られる予定の配当収入と売買益のトータルリターンを計算しながら手仕舞いするタイミングを図っていた。本来なら配当の権利確定後に即座に手放すべきだったが、同社株は依然として割安水準であったことに加え、この時点では75日線は上向いており、短期の下落トレンドから転換する可能性を考慮し、保有を続けた。
結果的には4月12日を底に反発したが、先に触れたようにファンダメンタルズとテクニカルの両面から4月下旬に手仕舞った。
バリューシフトで商社株にも乗る
バリューシフトのトレンドの中で海運株のほかにリターンをさらうことに成功した例が、総合商社の丸紅 <8002> だ。
総合商社株は、リオープン(コロナ禍からの経済活動の再開)による原油や銅・鉄鉱石需要の増加によって、業績への追い風が強いセクターとなっていた。
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