米国株式市場見通し:米7月CPIに注目
景気後退を巡り見方が分かれ、売り買いが交錯しそうだ。S&P500種構成銘柄の企業は2022年通年の増益率予想が8.1%と、景気後退時の10%減益水準には程遠い。また、50年ぶりの低水準の失業率、雇用が50万人増の労働市場での景気後退も考え難い。さらに、主要ハイテク決算も警戒された程悪化しなかったため投資家心理が改善しつつある。投資家の恐怖心理を示すVIX指数も4月来の低水準で推移。相場は下落しても下値は限定的となりそうだ。
来週は消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)の最新7月の結果に注目だ。インフレ動向は、9月FOMCや今後の金融政策を予想するうえで重要だ。投資家の景気後退懸念や来年の利下げの思惑を払しょくすべく、FRB高官は景気よりもインフレ退治を最優先する方針を再確認。インフレにまだ鈍化の兆しはなく、利上げ打ち止めには程遠いと、来年にかけて利上げを続ける方針を強調している。FRBがインフレ指標として特に重要視しているとされている燃料や食料を除いたコアCPIは、前年比で6月からさらに伸びの拡大が予想されている。3月以降伸びは少しずつ縮小しているが未だ6%台で、FRBが目標とする2%には程遠い。
4-6月期の国内総生産(GDP)が1-3月期に続きマイナス成長となり、市場では景気後退懸念が高まったが、FRB高官は、雇用の伸びは依然強く、景気後退ではないとしている。金利見通しも修正していない。2022年のFOMC投票権を有するセントルイス連銀のブラード総裁は、年内に政策金利を3.75%から4%まで引き上げるべきで、物価を下げるため、金利は長期にわたり、高い水準が必要となる可能性があると主張している。同じく投票権を有しているクリーブランド連銀のメスター総裁も23年半ばまで利上げを続け4%を小幅上回る金利にすべきとの見解を示した。
一方、深刻な景気後退を伴わない形でインフレを目標値に戻すこと、すなわちソフトランディング(軟着陸)は可能だと、楽観的な見解を示したことは投資家心理の改善に寄与し、相場の下支えとして働きそうだ。
経済指標では、4-6月期非農業部門労働生産性・単位人件費速報(9日)、7月消費者物価指数(CPI)、6月卸売在庫確定(10日)、7月生産者物価指数(PPI)、週次新規失業保険申請件数(11日)、7月輸入物価指数、8月ミシガン大消費者信頼感指数速報値(12日)などが予定されている。
主要企業決算では、保険会社のバークシャーハサウェイ(6日)、AIG、肉食品メーカーのタイソン・フーズ(8日)、エネルギー製品の生産会社ドミニオン・エナジー(8日)、暗号通貨資産取引所のコインベース、ネットワーク機器メーカーのシスコ、カジノ経営のウィンリゾーツ、ホテルチェーン経営のハイアット、高級衣料ブランドのラルフ・ローレン、クルーズ船運営のノルウェジアンンクルーズ、格安航空会社のスピリット(9日)、エンタテインメントのウォルトディズニー、ファストフードチェーンのウェンディーズ、オーディオ製品開発のソノス(10日)、電気トラックメーカーのリビアン・オートモーティブ(11日)などが予定されている。
先に発表されたMGMリゾーツは過去最高益を計上し、経済活動再開による需要が引き続き強いことが明らかになった。同業のウィンリゾーツを含め、クルーズ船運営会社やホテルなど旅行関連企業決算の強い結果に期待したい。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》