デリバティブを奏でる男たち【33】 プライベート・エクイティの巨人、アポロ・グローバル(前編)

特集
2022年8月8日 13時30分

◆高まる日本での存在感

今回はブラックストーン<BX>やKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)<KKR>などと並び称されるプライベート・エクイティ(PE、未上場株式)の巨人、アポロ・グローバル・マネジメント<APO>を取り上げます。2022年7月、運用資産規模5128億ドル(3月末時点)を誇る同社と、日本の三井住友トラスト・ホールディングス <8309> [東証P]が業務提携し、三井住友信託銀行が総額15億ドル(約2000億円)をアポロのオルタナティブ・ファンドに出資すると発表しています。

アポロ・グローバル・マネジメント<APO> 月足

【タイトル】

また、ESG(環境:Environment、社会:Social、企業統治:Governanceの頭文字)投資の観点から「インパクト投資」を手掛けるファンドへの投資を始めるという農林中央金庫は、第1弾としてアポロが運用する「インパクト・プライベート・エクイティ・ファンド」への投資を決めています。このようにアポロは近年、日本での存在感を高めています。

ちなみに「インパクト投資」とは、経済的な利益を追求しながら、社会的にも環境的にも有益で測定可能な影響を生み出す企業や組織への投資を指します。こうした投資対象は上場していない企業が多いと考えられ、まさにPEの巨人であるアポロが得意とする分野でもあります。

◆共同創設者レオン・ブラック

アポロ・グローバル・マネジメントは1990年、バルジ・ブラケットと称される米投資銀行のひとつ、ドレクセル・バーナム・ランバート(1990年に破綻)のM&A(合併買収)部門に在籍していたレオン・デイビッド・ブラック(通称レオン・ブラック)を中心に、ジョシュ・ハリス、マーク・ローワンらが共同で設立した投資会社です。バルジ・ブラケットとは、本来「突出した層」を意味しますが、投資銀行の業績ランキングであるリーグ・テーブルにおいて常に上位を独占し、世界経済に大きな影響を与える投資銀行のことを指します。

レオン・ブラックは、ポーランド系のユダヤ人実業家であるエリフ・メナシェ・ブラコヴィッツ(通称イーライ・M・ブラック)の息子として1951年に生まれました。イーライ・M・ブラックはバナナのチキータ・ブランドで有名なユナイテッド・ブランズ・カンパニー(現在のチキータ・ブランズ・インターナショナル)の株式を取得して乗っ取りますが、同社の経営不振や贈賄容疑の捜査などの問題を抱え、1975年にビルから飛び降りて亡くなっています。

レオン・ブラックは1973年にダートマス大学で哲学と歴史の学士号を、1975年にハーバード大学でMBAを取得しました。卒業後はピート・マーウィック(後のKPMG)で経営コンサルタントとして働き、出版社のボードルームレポートへ転職。その後、金融業界のキャリアを1977年にドレクセル・バーナム・ランバートでスタートします。そこではマネージング・ディレクター、M&Aグループのトップ、コーポレート・ファイナンス部門の共同責任者を務め、遂には「ジャンクボンド(投資不適格債)王」として名を馳せた同社のマイケル・ミルケンの「右腕」と見なされるまでになりました。

(続きは「MINKABU先物」で全文を無料でご覧いただけます。こちらをクリック)

◆若桑カズヲ (わかくわ・かずを):

証券会社で株式やデリバティブなどのトレーダー、ディーラーを経て調査部門に従事。マーケット分析のキャリアは20年以上に及ぶ。株式を中心に債券、為替、商品など、グローバル・マーケットのテクニカル・需給分析から、それらに影響を及ぼすファンダメンタルズ分析に至るまで、カバーしている分野は広範囲にわたる。MINKABU PRESS編集部の委託により本シリーズを執筆。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

プレミアム会員限定コラム

お勧めコラム・特集

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
株探プレミアムとは

日本株

米国株

PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.