明日の株式相場に向けて=決算通過で流れは再び「材料株」へ
きょう(16日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比2円安の2万8868円とわずかに反落。前日までの2営業日で日経平均は1050円強の上昇をみせたが、さすがに足もとは上値が重くなってきた。
しかし、ネット証券の店内情報ではNEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>(=日経レバ)の手口を見る限り、個人投資家はきょうも買い越しだった。前日も取り上げた話だが、これは空売りポジションをとっていた個人投資家の手仕舞い売りならぬ「手仕舞い買い戻し」が反映されたものとみられる。いわく「日経レバの手口が、現状はまだ投機筋の売りが溜まった状態にあることを示唆している」(マーケットアナリスト)とする。よく想定外の強調相場で、“ここから更に上値を買い進むような勇者(=物好き)は一体誰なのか?”という場面に遭遇するが、「大抵は売り方の総撤退に伴うショートカバーであるケースが多い」(同)ようだ。きょうあたりも下げそうで下げない相場で、これは機械的な買い戻しが依然として全体に浮揚力を与えている公算が大きい。
目先は国内企業の決算発表がほぼ終了した状態となり、これまでの決算プレーに支配された相場は趣きを変えることになる。通常モードに戻ったテーマ買いや、テクニカル及びファンダメンタルズからの銘柄アプローチが本流となる。ただ、現状は日経平均ベースでは買い疲れ感が台頭しており、指数に絡む主力どころから中小型株へと視点が移りやすい。きょうのマザーズ指数の強さなどは、その方向感を裏付けている。
しかし、今回の日経平均の望外の戻り相場に際し、大手ネット証券では「個人投資家の体感温度はあまり上昇していない。その多くは白けた状態にある」と指摘する。その実情が投影されたのが個人投資家の信用評価損益率だ。プライム市場をはじめとした全市場ベースの評価損益率は直近データでマイナス6%、これは「今年に入って最も良好な環境といってもよい」とするが、8月に入ってからの日経平均の動向をみれば当然うなずける話ではある。ところが、旧マザーズ銘柄に特化した数字でみると全く状況は変わってくる。評価損益率は何とマイナス26%で、これは追い証を誘発するレベルの冷え込み方である。個人投資家の多くは全体指数の空売りで担がれ、個別株への信用買いでも投げ売りの瀬戸際に立たされているような、ダブルパンチ状態にあることが分かる。したがって、マザーズ指数がもう少し戻り足を強めてくるような状況にならないと、個人投資家資金の流動性は高まってこない。今はその復活シナリオに向けてマザーズ指数が助走を開始した段階にある。
株式需給面では、グロース株の中で売り残の溜まっている株のパフォーマンスがいいようだ。例えば、ここ上昇が目立つHENNGE<4475>は今月5日申し込み現在の信用倍率が1.3倍と拮抗、日証金では前日時点の貸借倍率が0.65倍で逆日歩がついている。またJTOWER<4485>は、きょうは上ヒゲをつける形で上げ足が止まったが、信用倍率は0.88倍と売り長、日証金では大幅な株不足で20円の逆日歩がついた状態だ。これらの銘柄は日経平均のミニモデル的な“売り方が踏まされた相場”のチャートを形成している。
テーマ株物色では「ワンピース」人気でバンダイナムコホールディングス<7832>や東映アニメーション<4816>が大幅高に買われており、この流れでゲームやメタバース周辺株に資金が向かっている。そのなか、ドリコム<3793>はマークしておきたい銘柄だ。また、決算発表絡みでKudan<4425>が急伸したが、クシム<2345>あたりも目を配っておきたい。このほかenish<3667>が急速に上値を追っているが、押し目狙いで一考だろう。クリーク・アンド・リバー社<4763>も妙味を内包している。一方、低位株ではパレモ・ホールディングス<2778>が満を持して動き出した。ジェクシード<3719>も動意前夜の気配が漂う。25日・75日線のゴールデンクロスを示現している日本エンタープライズ<4829>あたりもチェックしておきたい。
あすのスケジュールでは、6月の機械受注、7月の貿易統計に市場の関心が高い。海外では、ニュージーランド中銀の政策金利発表、7月の英消費者物価指数(CPI)、4~6月期ユーロ圏GDP改定値のほか、米国では7月の小売売上高、6月の企業在庫が発表される。また、7月26~27日開催分のFOMC議事要旨の内容が注目されている。なお、インドネシア市場は休場となる。(銀)