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最低でも同値撤退、「ノー損」投資にこだわる原点

特集
2022年8月18日 10時30分

すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 お多福さんの場合-最終回

登場する銘柄
日本郵船<9101>、フィードフォースグループ<7068>

編集・構成/真弓重孝(株探編集部)、文・イラスト/福島由恵(ライター)

お多福さん(ハンドルネーム・女性)のプロフィール:
2018年に40万円を元手に株式投資を開始。2年ほどで利益を100倍、その後に5000万円の追加資金を経て4年で億り人になったすご腕ウーマン。本業では勤務時間が安定せず、時間のやりくりに追われる兼業投資家。2人の子どもの母でもある。

投資スタイルは、新高値を抜けた銘柄に着目し、期待値の高い銘柄にピラミッティングをしていくトレンドフォロー型。投資知識を身に付けるため、図書館でたくさんの投資本を借りて読み、成功者の記事をノートに貼って繰り返し確認するなど努力を積む。

現在も通勤時間に投資動画や自身作成の投資メモを読むなど学習を継続中。四半期決算時は手書きのノートで業績変化をメモして気づきを得る。実際に店舗や関連施設に足を運び、自身の目でも好業績につながる要素があるかも確認する。勉強会では自発的に学び、様々な考え方を貪欲に吸収し、自己研鑽中だ。

第1回「開始2年で利益100倍のパワフル女子、郵船トレードで7割増の技」を読む

第2回「100倍の原動力は身近な銘柄選び、でも本当に貢献したものは」を読む

第3 回「すご腕もびっくりの急成長! その裏に、とにかく上手くなると『練習の虫』」を読む

今回登場のお多福さん(ハンドルネーム)が株式投資を始めたのは、あるツラい経験をしたことが影響している。

2011年3月、よく知る人とその家族が東日本大震災で発生した津波にさらわれ命を落としてしまった。その人とは、地震の前日に会って、話をしていただけに、悲報を聞いた時の衝撃は大きかった。

この体験を通して、お多福さんは、「今、生きていられることが、どれだけかけがえないことか」と痛感する。そこから、「今やれること」「やりたいこと」を先送りせずに、懸命に取り組もうと考えるようになったという。

投資を始めたのは、以前から気になっていた疑問を、具体的に解決しようと思い立ったから。それは、利息が「無い」に等しい預金口座に「お金を眠らせたままで本当にいいの?」というもの。その疑問を解消すべく、2018年秋に投資家デビューする。

「今」を精一杯、生きるお多福さんにとって、絶対に譲れないものが現状からの後退。その達成のために行っているのが、前回に紹介した「練習の虫」であり、今回の「最低でも同値撤退」になる。これは、損小利大のための取り組みだ。これから具体的に見ていこう。

損失は極力小さく、そのために同値撤退は死守ライン

お多福さんが株式投資で徹底していることの1つは、「間違えたと思ったら、潔くミスを認める」ことだ。手仕舞うときは、最悪でも買った価格と同値で、それより低い価格での撤退はしない、つまり「最低でも同値撤退」だ。

とはいえ、日々値動きするのが株式市場。思惑通りに株価が上昇し続けることはあり得ない。日中は本業で忙しく、パソコン画面に張り付いて株価のチェックをし続けられないお多福さんが、同値撤退を遂行するために行っているのが「逆指値注文」だ。

株価が指定する価格になったら、買いないし売り注文が発動される発注方法。買いの場面では株価上昇の勢いに乗る、売りの場面では損失を大きく拡大させない――効果をもたらす手法だ。初回の記事で紹介した日本郵船<9101>の取引でも活用した。

■郵船の日足チャート(21年1月~9月、再掲載)

【タイトル】

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同


想定外に翻弄されないよう「トレーリングストップ」も導入

もちろん、企業研究をしっかりと重ねて期待値の高い銘柄選びを行い、買いタイミングも極力下落リスクが少ない場面を狙う工夫も欠かさない。

だが、どうしても全体相場の不調に引きずられ、株価が想定に反して下落に向かってしまうことがある。逆指値で売り注文を出すのは、そんな想定外に対応するための有効なやり方だ。

この逆指値を使った利益確定方法は失敗を経ながら体得してきた。その1つがRS Technologies<3445>での取引だった。

お多福さんは同社株で35%の含み益を溶かす失敗をしてしまう。その経験から、感情で取引せず、自身が事前に決めたルールに従っての売買を厳格に行うことをより意識した。

そこで徹底したのがトレーリングストップの考え方だ。保有株が上昇していく過程で、それを追いかけるように損切り、ないしは利確するラインを引き上げていく。

これによって、買い値より株価が大きく上昇して含み益が乗った後、高値から急激に大きく値を下げた場合でも、含み益を大きく削り込まれずに利確する技を磨く。

■一般的なトレーリングストップの例

【タイトル】

だが、様々な思惑や想定外のイベントが押し寄せる株式市場に、どんな局面でも通じる魔法の杖はない。お多福さんがいくら逆指値注文の手法を進化させても、それが裏目に出てしまう場面にも遭遇する。

それは、2020年8月28日。今は故人となった安倍晋三・総理大臣(当時)が、健康上の理由で総理の職を辞することが明るみになった日だ。

総理辞職のニュースが報じられると、その日の日経平均株価は始値の2万3232円から、一時3%近くも売り込まれる水準となった。

お多福さんは、常日頃のルーティンでこの日も保有株に対して逆指値による売り注文を設定していた。だが、この日の展開は、その売り注文がお多福さんにとって喜ばしくない方向に動くことになる。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

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