【杉村富生の短期相場観測】 ─引き続いて個別銘柄での対応!
「引き続いて個別銘柄での対応!」
●不謹慎な株安を「Happy」との高官発言!
歴史は繰り返すのだろうか。1970年代のハイパーインフレに対応できなかったバーンズFRB(米連邦準備制度理事会)議長のことではない。そのあとを受けたボルカーFRB議長の猛烈な金融引き締め、株価下落の話のこと。
1973年10月の第4次中東戦争(第1次オイルショック→原油価格は1バレル=3ドルが12ドルと4倍に)、79年1月のイラン革命(第2次オイルショック)の狂乱の時代である。
原油価格の高騰を受け、アメリカのCPI(消費者物価指数)上昇率は74年12月に12.3%、80年3月に14.8%の異常値を記録している。「インフレファイター」と称されるボルカー議長は利上げを続け、何と政策金利を20%に引き上げた。当然、景気は失速し、株価は下落する。NYダウは82年8月12日に776ドルの安値をつけている。
ウォール街は衰退し、“株式の死”(「この町が再び活気を取り戻す日は絶対来ないだろう」)が語られた。それが再現される? いや、それはない。現在のパウエル議長は「1970年代前半のような金融引き締め、金融緩和などと、不可解な行動を取って、その後のもっとひどい状況を作り出した人達の轍は踏まない」と語っている。
だからこそ、この局面は無条件の物価安定(景気、雇用はある程度犠牲に)と合理的無関心(マーケットの楽観論)の排除を訴えている。FRBは住宅価格、株価など資産価値の値下がりを望んでいるのだろう。もっとも、株価下落を「Happy」と発言(ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁)するのはいささか不謹慎と思うが……。
●円安加速、日本の不動産が狙われる!
ともあれ、適切な金融政策(利下げ)はインフレを抑制する。マーケットはそれを理解しているはずだ。もとより、ウォール街では「Fedに逆らうな」という。ここはFRBの金融政策をにらみつつ、9月13日発表予定の8月のCPIを注視し、引き続いて個別銘柄を攻める戦術が有効だろう。
アメリカの2年物国債利回りは3.5117%に上昇、為替は1ドル=140円台の円安になっている。日米3%超の金利差は、円キャリートレードを加速する。現状では150円前後の円安があってもおかしくない。これは輸出関連企業の収益を押し上げる。日本の不動産価格指数はリーマン・ショック直後の水準まで低下している。
外資はハウステンボスがそうだが、都心のビル、西武グループ系のホテル、ゴルフ場など日本の不動産を買い漁っている。霞ヶ関キャピタル <3498> [東証G]、青山財産ネットワークス <8929> [東証S]など 不動産ビジネスの企業は揃って好業績だ。三井不動産 <8801> [東証P]の価値は上昇の一途となろう。
トヨタ自動車 <7203> [東証P]は電池の増産などEV(電気自動車)関連分野に最大7300億円を投資する。先に、ホンダ <7267> [東証P]は韓国のLGエネルギーソリューションと組み、アメリカにEV電池工場を建設する(約6100億円投資)と発表している。EV向けタンタルコンデンサーの松尾電機 <6969> [東証S]はこのメリットを享受できる。
田中化学研究所 <4080> [東証S]はリチウムイオン電池向け正極材の大手だ。EV化の流れは追い風となろう。実は、日本電波工業 <6779> [東証P]は車載用水晶部品に強みを持っているが、5G(次世代通信網)を含め、微細化(リソグラフィの技術)の潮流が押し寄せている。この分野では同社が独走しているという。
2022年9月2日 記
株探ニュース