ボラの高い中小型グロース、「売り買いは腹八分」で勝率UP
第33回 日本株&アメ株で勝つ人~個人投資家4800人の調査で判明!
(億り人・バガー投資家・トビンさんの場合その2)
2003年から1000万円を元手に株式投資をスタート。アベノミクスの波に乗り18年には運用資産が8000万円まで増加。専業投資家デビューを機に投資スタイルを短期売買へと切り替えたことで資産増に弾みがつき、19年には億トレを達成。外資系の運用会社で営業マンとして機関投資家を相手にしていた経験を活かし、「待機資金を残して暴落時の投資に回す」「中小型グロース株の短期売買」という投資手法を編み出す。運用資産の一部は海外不動産への投資やアメ株、スタートアップ企業へのエンジェル投資へと回している。写真はハワイに所有するコンドミニアムから撮影した写真。
前回記事「機関投資家の弱点を逆手にとった『キャッシュ温存戦略』で億り人」を読む
「売り買いは腹八分」という格言には2つの意味がある。1つは「全財産を投資に向けるな」という戒め、2つ目が「相場の天井や底値を当てようと欲を出さず、腹八分目ほどの利益を目指すべき」という教えだ。
専業投資家のトビンさん(ハンドルネーム)は、まさにこの格言に沿った投資スタイルを心がけてきた。それが前回の「キャッシュ温存戦略」と、今回解説する「中小型グロース株の波乗りトレード」だ。
波乗りトレードは、業績の高成長と長期的な株価の上昇余地がある銘柄に照準を定めながら、細かく利確を挟むようにしてリスクを押さえるのが特徴となる。
あくまでも安定的な資産増を目指しているトビンさんが、ボラティリティ(株価の変動率)の高くなりがちな中小型グロース株でどのようなスタイルを取っているのか見ていこう。
業績成長の上振れを期待してアズームを取得
「中小型グロース株の波乗りトレード」での基本的な銘柄選別のポイントは
① | 参入障壁が高いビジネスモデルを持つ、 |
② | 創業者が事業に精通している、 |
③ | 好業績を維持し、かつ2四半期以内の業績上振れが期待できる、 |
――の3点だ。
①の参入障壁が高いビジネスモデルを手がけている企業は、「独り勝ち」状態を続けている可能性が高く、業績の持続成長が見込める。
②の創業者の存在を重視するのは、中小型ならではの注目点として、成長途上の会社ではその手腕に業績が左右される可能性が高いと見ているためだ。
③については、知名度の低い中小型株に株価モメンタムが生じるのは、業績上振れやサプライズ決算など何よりカタリスト(株価変動のきっかけ)が重要と捉えていることがある。
この3つの視点で銘柄選別した最近の成功例が、ビル駐車場のサブリース(所有者から物件を借り上げて利用者に賃借する)を展開するアズーム<3496>、脂肪・血液由来の細胞加工など再生医療関連の事業を手がけるセルソース<4880>となる。
アズームはIT(情報技術)を駆使して、オフィスビルにある不採算の駐車場の活用を促進する事業が主力の不動産テック企業だ。
同社の強みは自社で構築した月極駐車場の検索サイト「カーパーキング」を通じ獲得した駐車場情報と、IT を活用した駐車場の管理システムにある。
「カーパーキング」を通じて周辺地域の車室数、賃料等をリアルタイムに分析し、適正賃料を算定することで、駐車場の稼働率の向上と管理コストの低減を図っている。この事業モデルが奏功し、同社は上場以来、2桁の増収を達成し続けている(下の表)。
■『株探プレミアム』で確認できるアズームの通期業績の長期の成長性推移
こうした高成長が続くのは、「競合が少ないブルーオーシャンの事業を確立している可能性がある」とトビンさんは考え、先の3つのチェックポイントの②について調べた。
すると、同社の創業者である菅田洋司社長は、同業の日本駐車場開発<2353>で月極駐車場事業に長く携わっていたことが分かり、3つのうち2つが当てはまることが確認できた。
最後の業績上方修正のカタリストは、同社株を買い出動したのが21年2月頃としたことと関係がある。
■アズームの週足チャート(20年12月末~)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
この時期はコロナ禍で収益を落とす企業が多い中で、アズームが21年1月27日に発表した21年9月期第1四半期決算は、前年同期比31.6%の増収、営業利益も同101倍の増益と大幅の増収増益となった。
業績急拡大の理由は、同社サイト「カーパーキング」で駐車場を探す利用者が増加したこと。それまで不動産仲介業者の店舗に来店して駐車場を探していた利用者が、同社サイトを通じて探すようになったという。
この変化にトビンさんは同社の収益環境に追い風が吹いていると判断。業績のさらなる拡大、計画の上振れを想定した。
その想定通り、アズームの21年9月期中間決算は、上振れ着地となった(下の図)。この内容にトビンさんは業績拡大の勢いは衰えていないと判断し、同社株をさらに買い増す。
■アズームが21年4月30日に発表した21年9月期中間決算の業績上方修正のリリース
手仕舞ったのは、21年9月期決算が発表された21年11月頃だ。通期決算も上方着地しているので、さらに買い増したくなるものだが、ここで一旦は利確するのが「腹八分目で良し」とするトビンさんらしい。
ただ、その後もアズームの好業績が続いていることから22年3月頃に同社株を再度保有して、8月上旬に売却し、累計で800万円以上のリターンを獲得することに成功した。
セルロースは手仕舞い後に暴落、そして
セルソース<4880>は、知人の医師からの評判を参考に調査を開始した銘柄だ。同社は患者から採取した幹細胞を培養・加工し、再生医療などで用いる場合に医療機関などに卸すというビジネスモデルを採用している。
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