新興市場見通し:米雇用統計控え資金の逃げ足には注意、IPOは2社
■金利高や業績悪化懸念などで投資家心理悪化
今週の新興市場は3週続落。国内の連休中、英中央銀行の大規模減税策を受けてグローバルに金利が大幅上昇し、週明けの東京市場もリスク回避の動きを引き継いで売りが先行、マザーズ指数は700ptを割り込んだ。その後は週末まで一進一退の展開。急落後の自律反発を挟みながらも先行き不透明感が強いなか腰の入った買いは入らず。28日には米アップルの最新スマートフォンの増産計画の撤回が伝わり、リスク回避の動きが加速、東証プライム市場の大型株中心に売られたが、新興株も連られて売られた。週後半、英中央銀行による長期国債買入れなどの緊急措置で世界的な金利上昇が止むと、投資家心理が改善して買い戻しが入った。しかし、金利が早々に上昇転換すると、週末は米企業の冴えない決算で業績悪化懸念も強まるなか、再びリスクオフムードが支配。週末で持ち越しリスクを避けたい投資家の手仕舞い売りも出て、新興株も崩れた。なお、週間の騰落率は、日経平均が-4.48%であったのに対して、マザーズ指数は-2.41%、東証グロース市場指数は-2.44%だった。
個別では、週間でウェルスナビ<7342>が-10.4%、メドレー<4480>が-8.9%と大幅に下落したほか、JTOWER<4485>が-4.0%、フリー<4478>が-6.4%となり、時価総額上位銘柄はやや売りが優勢。一方、ANYCOLOR<5032>は+14.6%と大幅に上昇したほか、ビジョナル<4194>が+3.0%、M&A総合研究所<9552>が+7.9%と、直近に好決算を発表した時価総額上位銘柄は堅調だった。今週は6社の新規株式公開(IPO)があり、全て公開価格を上回る初値となった。ただ、地合いが悪く、初値形成後の株価推移では値を崩すものが多く見られた。
■米雇用統計前に短期資金主体か、先週IPO銘柄には評価余地あり
来週の新興市場はもみ合いか。一時的に低下した欧米の金利が再び上昇してきており、引き続き金利先高観が重石となる。今週、米連邦準備制度理事会(FRB)高官からは時期尚早の利下げを戒めるタカ派発言が相次いだ。週末に発表された米8月個人消費支出(PCE)コアデフレータが予想を上回ったこともあり、金融引き締め懸念がくすぶるだろう。
こうした中、来週末は米9月雇用統計が発表予定で平均賃金の伸びが注目される。インフレの中でも特に逼迫した労働市場にもとづく賃金上昇が粘り強く騰勢を維持しているため、予想比での上振れに対する警戒感は強い。週末にかけてはリスク回避の動きが出やすいとみられ、週半ばまで上昇していたとしても資金の逃げ足には注意したい。
一方、粛々と持ち高を削減する海外投資家などの影響が大きい大型株に比べれば、中小型が中心の新興株は年後半に入ってから、米金利が上昇する中でも堅調な値動きのものが多い。米10年物実質金利が急上昇を開始した8月1日以降においても株価が右肩上がりのチャートを描いている銘柄には銘柄固有の実力が内在していると考えられ、投資に値するだろう。該当するものは多くあるが、例えばGA technologies<3491>などが挙げられよう。
ほか、今週に上場したばかりのポーターズ<5126>やグッピーズ<5127>は業績成長を踏まえればまだ評価余地がありそうだ。週末にかけて酷い売られ方になってしまったグラッドキューブ<9561>もポテンシャルは高く、評価不足の印象が否めないため、先行きに注目したい。
来週は6日にFIXER<5129>が、7日にキューブ<7112>が東証グロース市場に新規に上場する。また、10月3日からSBIシーリング<5834>、4日からビジネスコーチ<9562>がそれぞれブックビルディング(BB)期間に入る。
《FA》