メタバース相場第2幕、亜空間の上昇旋風に舞う「とっておき5銘柄」 <株探トップ特集>
―バーチャル世界は比類なき成長ステージ、デジタル時代のニューノーマルに刮目せよ―
ネット上の仮想空間であるメタバース は、企業のビジネス戦略をも大きく変えようとしている。ブロックチェーン 技術やそこから派生したNFT が「Web3」というバーチャル空間における新たな定義を生んだ。Web3は国家や大資本企業などのサーバーが支配する中央集権型とは異なる分散型のネット世界を意味する。この概念は3次元に模した疑似的空間でアバターを介し実社会さながらにコミュニケーションを可能とするメタバースと融合して、巨大な経済圏の創出を可能とする。
デジタル時代のニューノーマルが個人の生活を劇的に変えていくなか、ここ顕在化している一連の流れは利益を追求する企業にとっても、大きなビジネスの舞台へといざなう不可逆的な潮流となっている。
●メタバースに針路をとる企業急増の気配
米国では旧フェイスブックのザッカーバーグCEOがメタバース領域でアバターを活用したコミュニケーションサービス開発に意欲を燃やし、社名を現在のメタ・プラットフォームズ<META>に変えたことが世界の耳目を集めた。それだけ、このバーチャル空間には成長のエッセンスが詰まっているのだ。米国の大手IT企業やゲーム関連企業が、相次いで資本・業務提携やM&Aなども駆使してメタバース関連分野に経営資源を注ぐ動きがみられ、同分野から目が離せない状況にある。そして、日本でもこれに追随する動きが活発化してきた。
最近では9月28日、NTTドコモがメタバース事業の新子会社「NTTコノキュー」を設立することを発表し話題となった。NTT <9432> [東証P]はメタバース関連ビジネスを機動的に推進していくために、NTTコノキューに事業を集約しサービスの開発に取り組む構えだ。コノキューは、メタバースのほか、実在の製品を仮想空間で再現する「デジタルツイン」、VRゴーグルなどの「XRデバイス」の3事業を主要事業とする。
メタバースはビジネス領域としては魅力があっても、現状はまだ概念が先行していて具体的な商業モデルが見えにくい部分もある。そうしたなか、普及の初動で消費者のニーズを囲い込むことができれば、ドコモは採算性が低下している通信事業とは路線の違うソフト分野で、新たな成長ドライバーを獲得することができる。NTTグループの戦略は、メタバース分野での展開を狙う他の国内企業にも影響を与えそうだ。
これに先立って9月中旬に幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2022」でも、時流を映して同時設置されたバーチャル会場「東京ゲームショウ VR 2022」が人気を集めた。これまでにはなかった新たな演出や機能が実装され、VRならではの体験を楽しめるメタバース空間が、一般消費者にも広く認知される形となった。今後は、こうしたメタバース関連の催し物が頻繁に行われ、メディアで取り上げられるケースも増えそうだ。
●政府もデジタル資産の重要性に着目
メタバース経済圏が動き出すなかで政府も音無しの構えではいられない。金融庁は今月4日、Web3で使われるデジタル資産の安全性が担保できる環境整備の議論をスタートさせたことが伝えられている。デジタルコンテンツが唯一無二であることを示す証明書の役割を担うNFTなど、ブロックチェーン技術によって生まれた新たなマーケットは経済成長の起爆剤となる可能性を内包する。一方で、中央集権型の金融システムには看過できない影響が及ぶ懸念もゼロではない。銀行などの管理主体を必要としないDeFi(ディーファイ)と称されるブロックチェーン上に構築されたサービスは、分散型金融の典型で、企業体などの組織に関与されることなく利用者同士が直接金融サービスを活用し、同時に提供することも可能となる。
官邸ではWeb3が成長産業に発展するとの認識を持っており、6月に閣議決定を行った成長戦略にもWeb3の環境整備を盛り込んだ。自民党のNFT政策検討プロジェクトチームも年内に日本のNFT分野に関するルールや、社会基盤の整備に言及した「NFTホワイトペーパー」を改訂し、規制が成長の妨げにならないことに配慮しながら、政策をまとめていく構えにある。
●動意株相次ぐなか、要注目の5銘柄を選抜
株式市場でも、メタバースやNFTといったバーチャル経済圏に足を踏み込む企業への注目度が日増しに高まっている。スマートフォンゲームに展開するグリー <3632> [東証P]やenish <3667> [東証S]、gumi <3903> [東証P]、東京通信 <7359> [東証G]、バンク・オブ・イノベーション <4393> [東証G]といった企業群や、コンテンツで強みを持つ円谷フィールズホールディングス <2767> [東証P]、メタバースと音楽ライブイベントの融合で注目を浴びたBirdman <7063> [東証G]、メタバースのマーケティングソリューションの開発に動き出したラバブルマーケティンググループ <9254> [東証G]など、やや思惑先行ながら日替わりで物色人気の中軸を担う銘柄のオンパレードとなっている。
このメタバース関連株への投資資金の流入は、同分野へ参入する動きが急増していることもあって、以前とは比べ物にならないほど厚みを増している。そのなか、今回はここから中期スタンスに立って魅力を内包するメタバース関連の有望株を5銘柄選出した。
【イマジカGはTGCとメタバース連携で脚光】
IMAGICA GROUP <6879> [東証P]は映像制作の大手で動画配信事業者向けのコンテンツに傾注し収益を伸ばしている。また、高速度ビデオカメラなど先進の映像ソリューションを強みとする。映像制作は海外動画配信の需要を開拓し収益拡大を後押ししており、23年3月期営業利益は前期比5%増の36億円を計画。メタバース分野でも注目度は高く、東京ガールズコレクションではメタバース空間上に再現された会場での映像をプロデュースするなど存在感を示している。このほか、9月末には東宝 <9602> [東証P]と共同でデジタルシネマパッケージの劇場向けデリバリーを展開する新会社設立を発表した。株価は直近、4ケタ大台に乗せ年初来高値圏に浮上した後、上昇一服となっているが上値指向は強い。18年1月には1419円の最高値を形成した実績があり、中期的にはここを目指しそうだ。
【Tワークスはメタバース体験型店舗で新境地】
トレードワークス <3997> [東証S]は証券会社を主要顧客に株式やFXなどの取引システムの開発を手掛ける。ディーリングシステムのほか不正取引監視システムの開発及び運用などで受注を伸ばしている。収益の多角化にも取り組み、手術支援ロボットなど医療機器ベンチャーへの出資やメタバース領域へも積極的にアプローチを図っている。メタバース上の店舗におけるシステム全般の開発及びリアルとデジタルが連動したOMOプラットフォームなどの提供を行うが、12月に開催される世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット2022Winter」に体験型店舗を出店する予定にある。業績は21年12月期の大幅営業増益(単独ベース)に続き連結決算に移行する22年12月期も実質大幅な伸びが見込まれており、株価も一貫した戻り波動が続きそうだ。
【JTPはメタバースとAIの融合でDX支援】
JTP <2488> [東証S]は海外のIT企業を主体に情報機器の保守・点検業務を受託し、ソフト開発も手掛ける。また、医療機器などのライフサイエンス事業やAI、サイバーセキュリティー分野でも実力を発揮する。同社はメタバースとAIを融合したソリューションを展開して顧客企業のDX推進を支援するビジネスにも注力しているが、7月1日付で一般社団法人Metaverse Japanに加入し、メタバース領域拡張の一翼を担う意気込みを示している。23年3月期営業利益は前期比26%増の5億5000万円を見込み、24年3月期以降も2ケタの利益成長トレンドが続く公算が大きい。グロース(成長)系の企業にして株主還元にも積極的な点はポイントで、今期は31円配当を計画、配当利回りは4%を超え株価面でも見直し余地は大きいといえる。
【共同PRはメタバース領域でのPR事業開拓】
共同ピーアール <2436> [東証S]は国内首位クラスの独立系総合PR会社として企業PR支援やコンサルティング事業を展開する。新規顧客開拓が好調に推移し、大型案件の継続受注などで業績は絶好調に推移している。22年12月期営業利益は前期比80%増の6億8500万円予想と期初見通しから大幅な上方修正を行ったが、一段の増額が有力視される状況にある。企業のプロモーションで有効性が高いメタバース領域の深耕にも貪欲な姿勢をみせ、次世代VRシステム開発会社と連携し、今後の需要獲得に向けた取り組みを進めている。10月末の株主を対象に1株を2株にする株式分割を実施する予定でこれから分割権利取りの動きも想定される。時価は年初来高値近辺で目先筋の利食いを吸収しているが、滞留出来高の多い1500~1700円のゾーンを上抜け、2000円台活躍も視野。
【C&RはNFTで先駆しメタバースの布石着々】
クリーク・アンド・リバー社 <4763> [東証P]はゲーム、Webコンテンツ、映像などの制作やクリエーターの派遣事業を主力とする。人材関連では医師や看護師の紹介など医療をはじめ専門職分野にも傾注する。また、ゲームや映像はもちろん、データやNFTなどの知的財産を収益化するライツマネジメントでも強みを発揮。メタバース領域への布石を着々と進めており、同社に所属するVR/NFTアーティスト・せきぐちあいみは一般社団法人Metaverse Japanアドバイザーも務める。業績は高成長路線をまい進し、前期まで12期連続の増収を達成、営業利益も大幅増益基調を継続中だ。22年3-8月期営業利益は前年同期比16%増の25億1100万円、23年2月期通期の営業利益は前期比17%増の40億円予想と連続最高益更新が濃厚。深押しの今は買いチャンスとみたい。
株探ニュース