明日の株式相場に向けて=引き潮局面での光明を探す
3連休明けとなった11日の東京株式市場は、再びリスクオフの大波が押し寄せ日経平均株価が前営業日比714円安の2万6401円と急落。前週末と週明けの米国株市場の動向をみれば2万7000円台割れは不可避としても、2万6000円台前半まで一気に下押すとは大方の市場関係者は見ていなかったはすだ。米インフレ懸念を背景としたFRBの金融引き締め強化に対する警戒感と、その延長線上にあるオーバーキルによる景気後退懸念、この2つの材料が相場の重荷となっているが、これに加えて足もとではウクライナ情勢の緊迫化でロシアが戦術核を使用することへの不安、バイデン米政権の中国への半導体輸出規制強化の動きなどもリスクオフを助長している。半導体関連への逆風は台湾株市場が4%を超える急落に見舞われていることからも、その風速の強さが窺い知れる。
しかし、こうした悪材料は基本的にモグラ叩きに等しく、こちらが引っ込めばあちらから別のネタが顔を出す。鴨長明の言葉を借りれば、淀みに浮かぶ“うたかた”といってもよく、詰まるところ相場がスルーすればその時は不問で済むが、荒れた場合は悪役にされる。結局はその時の株式需給関係に委ねられている。きょうの東京市場も「追い証などの投げは発生していないが、相変わらず先物主導で振り回されている」(中堅証券マーケットアナリスト)という。CTAがマシンガンのようにスライス売りを発注し、日経平均は前場にアジア株市場を横目に二段下げの様相となった。そして午後1時過ぎに2万6400円近辺に着陸したような相場で、その後は滑走路を進むように大引けまで安値圏を滑るように推移した。
相場は動いているようでも1年のうちの大半が「波」の状態である。つまり水面(みなも)を大きく揺らしていても、そこに「流れ」は存在しない。実際は移動せずに同じ場所を上下するに過ぎず、真の意味での“動”ではない。コロナマネーによる過剰流動性相場が終わったことはほぼ確かなことだが、それでは明確な下落トレンドに入ったかというと必ずしもそうではないともいえる。なぜなら、日経平均は今年に入ってから大方は2万6000~2万8000円のレンジで往来を繰り返している。突っ込み場面で蛮勇を振るって買い向かえば何度も報われているわけで、米国株市場と比べ日本株の相対的優位性を主張する声が根強いのもうなずける話だ。
しかし、米系ファンドの側からみて日本株のパフォーマンスはどうであろうか。ドル円相場は年初から比較すればもの凄い勢いで円安方向に振れている。春先までは1ドル=110円台半ばを軸とする狭いゾーンの横ばいで推移していたが、3月以降は突如としてドル買い円売りの大潮流が発生した。現在まで半年余りでざっと30円のドル高・円安である。ドルベースに換算した日経平均を見れば、米国株市場同様にヨレヨレの状態だ。円ベースではもみ合い圏の往来であり“波の上下動”と主張することができるが、NYダウと同じ土俵でみれば、日本株市場も大勢トレンドは紛れもなく引き潮に遭遇していることが分かる。
今とは逆方向の沖から入り江へと向かう大局的な流れが生じたら、そこで初めて中長期スタンスで資金を寝かしてよい理屈となる。だが、今はまだそのタイミングにはない。そしてこの流れが変わるのはまだ先で、おそらく来年以降と思われる。例えば、今週13日の米消費者物価指数(CPI)の結果を市場関係者や投資家は固唾を呑んで見守っている状況にあるが、これは近視眼的であくまで短期筋のパフォーマンスを左右する丁半博打的な要素が強い。CPIがコンセンサスと比較して同等なのかそれとも上下どちらかに振れるのかは目先の相場にとって重要なイベントには違いないが、ここで大局的な流れが変わることは、まずあり得ないと考えておくのが賢明だ。
もちろん、そういう相場でも個別株戦略の観点で言えば、つかみどころはいくらでもある。きょうは新高値銘柄が3市場合算で70銘柄を超えており、インバウンド関連の一角などに強い銘柄が散見されている。この流れに沿う銘柄としては、以前にも取りあげたワシントンホテル<4691>や京都ホテル<9723>、力の源ホールディングス<3561>、コジマ<7513>、ビックカメラ<3048>などを改めてマークしておきたい。
あすのスケジュールでは、8月の機械受注、8月の工作機械受注など。また東証プライム市場にソシオネクスト<6526>が新規上場。海外では韓国中銀の政策金利発表、8月のユーロ圏鉱工業生産、9月の米卸売物価指数、FOMCの議事要旨(9月開催分)など。(銀)
最終更新日:2022年10月11日 18時39分