馬渕治好氏【再びリスクオフ加速! 年末に向けた展望を読む】 <相場観特集>
―更なる下値模索か、それともお決まりのリバウンドコースか―
3連休明けとなった11日の東京株式市場は主力銘柄中心にリスク回避目的の売りがかさみ、日経平均株価は2万6000円台前半まで一気に水準を切り下げた。引き続き米国のインフレ高進を背景とした金融引き締め強化への警戒感や、米国景気の後退懸念が相場の上値を押さえている。なかなか本格的な戻りの転機がつかめない状況が続くなか、年末に向け米国株市場や東京市場はどういった動きをみせるのか。独自視点による全体相場の見通しでファンも多いブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏に意見を聞いた。
●「売られ過ぎ是正で早晩急反発局面が視野に」
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
東京株式市場は足もとリスク回避ムードの強い地合いで日経平均も大きく売り込まれているが、時価は売られ過ぎと判断してよく、年末に向け大きく切り返す展開を見込んでいる。今の下げは日本国内の問題ではなく、海外要因によるところが大きく、特に米国株市場の動向に左右されている。逆に言えば米株市場がリバウンド局面に移行できれば、東京市場も上昇基調を取り戻すことは可能となる。
その米株市場は米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制を第一義に金融引き締め姿勢を強めるなか、金利上昇傾向が続いておりこれが嫌気されている。FRBのタカ派的な政策に伴い、米国経済のリセッションに対する警戒感が取り沙汰されているが、実際にはすぐに景気が後退するような局面ではなく、(リセッションが起こるとしても)実際は来年に入ってからであるとみている。過去の例から米10年債利回りと米2年債利回りが逆転するいわゆる逆イールドが発生してから、リセッションに移行するまで大体1年前後、早くても半年後というタイムラグがあり、それを今回に当てはめれば来年1月以降ということになる。足もとはファンダメンタルズではなく需給先行の行き過ぎた悲観による下げといってよく、その巻き戻し局面が年内に訪れる公算は大きい。
米株市場では急落局面で空売りが高水準と推察される一方、信用買い残は減少している。全米個人投資家協会のアンケート調査でも、個人投資家の心理を示す指標はリーマン・ショック以来の低水準にある。また一方で、機関投資家の現金比率が高まっており、これはITバブル崩壊以来の水準に達している。これらはいずれも今の相場が陰の極にあることを示唆する。
今週は13日発表の米消費者物価指数(CPI)の結果が注目されている。市場予想では総合指数で9月は前年比8.1%上昇と8月からは若干減速する見込みながら、見込み通りであったとしても株式市場が素直にこれを好感するかどうかは実際に場が立つまでは分からない。今はいずれにしても投資マインドで振り回されており、乱高下が続きそうだ。
ただし、少し長い目で見れば現状が売られ過ぎの水準であり、その是正局面が訪れるであろう。米株市場ではNYダウが年末までに大きく切り返す場面が想定され、3万5000ドルをうかがうような大幅な戻りもあり得る。つれて東京市場でも日経平均はリバウンドに転じ、年内に3万円大台ラインを超える場面があっても不思議ではない。日本株は10月末から11月前半にかけて4~9月期の決算発表期に入るが、円安効果や日銀短観の内容などを考慮して、想定から上振れる可能性が高いとみている。それに伴い企業のファンダメンタルズ面から日本株の優位性が浮き彫りとなる可能性もある。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
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