爆需復活へ! インバウンドで噴き上げる「疾風怒濤の10銘柄」 <株探トップ特集>
―入国規制の完全撤廃でゲームチェンジ、スポットライトを浴びる次の主役を追え―
週末14日の東京株式市場は、前日までのリスクオフに支配されていた地合いが一変し主力株をはじめ幅広い銘柄に投資資金が流入、日経平均株価は一時900円を超える大幅高で一気に2万7000円台を回復した。行き過ぎた悲観からの脱却を経てテーマ買いの動きが復活する兆しにあるが、ここで牽引役を担うのはずばりインバウンド関連である。
●思わぬ方向に走った米CPIショックの電流
9月の米消費者物価指数(CPI)発表を前に戦々恐々としていたマーケットだったが、実際フタを開けてみればCPIは事前コンセンサスを上回る伸びを示し、その瞬間息を呑み込んだ市場関係者も多かったはずだ。ところが、相場は天邪鬼(あまのじゃく)な生き物である。前日の米国株市場は朝方こそ大きく売り優勢で始まったものの、その後は急激な戻り足に転じ、終わってみればNYダウは800ドルを超える急反騰でフシ目の3万ドル大台を回復した。
空売り筋の買い戻しが全体指数を押し上げる、典型的なショートスクイーズによる反転となったが、これぞ相場の醍醐味といえる動きでもあった。CPI発表を目前に戦々恐々としていたのは実は“売りを仕掛けていた側”であり、積み上げたショートポジションを誰よりも早く解消してキャッシュ化することに血眼になった結果、自らが想定外のリバウンド相場を演出するという皮肉な結果となった。
●アンワインド局面でインバウンド関連株に着火
そして、米国株市場で発生したこのアンワインドの流れはビッグウェーブと化して東京市場にも押し寄せた。この日はこれまで売り込まれた主力株をはじめ中小型株も一様に買われる展開となり、内需株、外需株を問わず総花的な上昇をみせた。ただ、今回のリバウンドは真空地帯の戻りであり、恩恵を享受している投資家はそれほど多くはない。いうまでもなく、ここからの仕切り直し相場でどこに照準を合わせるかが肝要となる。その答えは、今の岸田政権において唯一といってもよい巨大な国益をもたらしている政策、「インバウンド関連」が最有力といえる。
3連休明けとなった今週11日、株式市場はリスクオフ一色の地合いで日経平均は700円を超える下げに見舞われ、テーマ物色の動きなどは全く音沙汰無しであったが、この日は日本国内で転機ともなる重要な政策が動き出した。それは、満を持して新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和されたことだ。これまで1日5万人とされていた入国者数の上限が撤廃され、68の国・地域からのビザなし渡航や個人の外国人旅行客の入国も認められることになった。それからわずか数日しか経っていないが、折からの円安加速と相まって、日本への観光需要が一気に盛り上がる格好となっている。
もちろん、中国ではゼロコロナ政策の下で出国制限が継続していることから、インバウンド特需といっても今はまだ助走段階にあるが、来年以降はコロナ前の成長戦略の要でもあった“観光立国日本”の喧騒が復活する可能性が強く意識されそうだ。岸田政権では円安効果を加味したうえで、コロナ禍以前の水準を上回る年間5兆円超のインバウンド消費額を目指す方針を掲げている。
●“国策関連”の代表的テーマで開花が相次ぐ
既に関連銘柄は軒並み蕾を膨らませ開花寸前、中には大輪を開花させた銘柄も相次ぐ状況にある。HANATOUR JAPAN <6561> [東証G]、エアトリ <6191> [東証P]、ベルトラ <7048> [東証G]、旅工房 <6548> [東証G]、オープンドア <3926> [東証P]、リゾートトラスト <4681> [東証P]、KNT-CTホールディングス <9726> [東証S]、エイチ・アイ・エス <9603> [東証P]などの旅行関連や、JR東日本 <9020> [東証P]、JR東海 <9022> [東証P]、JR九州 <9142> [東証P]などの電鉄、日本航空 <9201> [東証P]、ANAホールディングス <9202> [東証P]などの空運に追い風が吹く。
更に三越伊勢丹ホールディングス <3099> [東証P]、高島屋 <8233> [東証P]、J.フロント リテイリング <3086> [東証P]といった百貨店やサンドラッグ <9989> [東証P]、ウエルシアホールディングス <3141> [東証P]、ツルハホールディングス <3391> [東証P]といったドラッグストア、帝国ホテル <9708> [東証S]、ロイヤルホテル <9713> [東証S]、ワシントンホテル <4691> [東証S]などのホテル運営会社も今後活況を呈する可能性が高まる。また、コト消費の代表格であるレジャー・アミューズメント関連ではラウンドワン <4680> [東証P]、セガサミーホールディングス <6460> [東証P]、JALCOホールディングス <6625> [東証S]、バンダイナムコホールディングス <7832> [東証P]などがあり、テーマパークではオリエンタルランド <4661> [東証P]、サンリオ <8136> [東証P]、三精テクノロジーズ <6357> [東証S]などが挙げられる。訪日客に日本のスキー場が人気ということで、ひと捻りして日本スキー場開発 <6040> [東証G]なども立派なインバウンド関連である。
このテーマは物色の裾野も広く、人気素地をこれから開花させるであろう銘柄も数多く存在する。今回のトップ特集では、マーケットで現在スポットライトが当たり旬の極みにある“オンザステージ銘柄”のほか、ダイナミズムを内在させ“変身前夜”の雰囲気を醸す妙味株、合計10銘柄を厳選紹介する。
●この10銘柄のパフォーマンスは要注目
◎パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス <7532> [東証P]
総合ディスカウント店の象徴ともいえる「ドン・キホーテ」を展開する。M&A戦略にも長じ、ユニーや長崎屋などを傘下に置く。アジアや北米など海外出店も積極的で、業容拡大を意識した経営はトップラインの伸びに反映され、今後も成長路線が続く。足もとの業績も好調だ。9月既存店売上高は前年同月比2.8%増となり、4ヵ月連続で前年実績を上回った。客単価の上昇が収益押し上げに寄与しているが、ここからインバウンド特需も上乗せされる。株価は2000円台後半で売り物をこなし、早晩未踏の3000円大台乗せも視野。
◎コシダカホールディングス <2157> [東証P]
低価格を売り物とする「カラオケまねきねこ」を直営で全国展開する。新型コロナウイルスの影響が一巡しているほか、カラオケは外国人にも人気のコンテンツであるだけにインバウンドの追い風に期待。22年8月期営業損益は22億500万円の黒字(前の期は76億2800万円の赤字)と急回復を果たしたが、23年8月期は74億3000万円予想と伸びが加速する見通し。店舗数も増勢が続く。カラオケルームでのライブ視聴や動画レコーディングなど新機軸のサービスも打ち出している。株価は目先急騰の反動はあっても4ケタ台を地相場とする強調展開へ。
◎明治海運 <9115> [東証S]
タンカーやばら積み船の中長期貸船を手掛ける中堅海運会社だが、北海道から沖縄までホテルやレストランなどを幅広く展開していることが最大の特長で、訪日外国人の増加は同社の収益機会拡大に直結する。また、本業でも為替の円安効果が大きく、23年3月期は会社側が計画する営業利益44億円(前期比横ばい)予想は大きく上乗せされ、2ケタ増益に変わる可能性がある。PER、PBRともに割安感が強いほか、株価の急騰力にも定評がある。今年8月以降は一貫して下値を探る展開だったが、目先売り物を枯らし反騰の機が近づいている感触だ。
◎コスモスイニシア <8844> [東証S]
首都圏を中心にマンション開発・販売を手掛ける。旧リクルートコスモスで現在は大和ハウス工業 <1925> [東証P]の傘下にある。訪日外国人を対象に長期滞在型アパートメントホテルなども展開、9月29日に日本橋のホテルをオープンし、12月には浅草のホテルも開業予定にある。前の期に落ち込んだ業績も前期を境にしっかりと立ち直り、22年3月期営業利益は前の期比41%増の33億5100万円で、続く23年3月期も増益基調が維持される見通し。時価予想PER8倍台、PBRも0.5倍台と水準訂正余地が際立つ。
◎三重交通グループホールディングス <3232> [東証P]
近鉄系で三重県に路線網を有するバスの大手で不動産開発も行う。名古屋・東京・大阪・京都への都市間高速バスのほか空港行きリムジンバスなども運行。不動産開発はオフィスビルや商業施設、都心型ホテルなど幅広く展開する。2016年の伊勢志摩サミットはまだ記憶に新しいが、伊勢神宮などは外国人にも人気のスポットで、インバウンド需要復活となれば同社への追い風は強い。業績は急回復途上にあり、営業利益は7.4倍化した22年3月期に続き、23年3月期も前期比6割増の48億円を見込む。株価は500円台復帰から新値街道突入が目前。
◎CSSホールディングス <2304> [東証S]
ホテルやレストランの食器洗浄及び衛生管理業務、レストラン運営受託と外食事業、BGMや映像・音響関連などの空間プロデュース、この3部門を手掛けるが、訪日外国人によるホテル需要や外食需要が高まることで同社の業績回復に向けた環境が整う。東証スタンダード市場の上場維持を念頭に24年9月期に売上高143億円(21年9月期実績94億1200万円)、最終利益2億円(同4億2000万円の赤字)、ROE8%以上を目標とする中期計画を遂行中だ。株価はここ急動意をみせているが信用買い残など枯れた状態で上値は軽い。
◎コメ兵ホールディングス <2780> [東証S]
名古屋を地盤に宝石、貴金属、時計、バッグなどの中古ブランド品を扱う。中古高級ブランド品に対するインバウンド需要は旺盛で、ここ為替の円安進行も購買意欲を強力に後押しする。また、人工知能(AI)を活用した真贋判定ソフトの開発に成功したことで同社が重点を置く取扱量も増えており、収益成長に磨きがかかっている。22年3月期は営業利益が前の期比で6.3倍化し一気に過去最高を更新したが、23年3月期も17%増益の43億5000万円予想と連続ピーク利益更新へ。目先急騰で押し目狙いも中長期スタンスなら最高値4095円奪回が可能。
◎日本空港ビルデング <9706> [東証P]
羽田空港ターミナルビルの賃貸・管理のほか、物販や免税店なども手掛ける。新型コロナウイルスの影響で23年3月期の営業損益は166億円の赤字(前期は412億5500万円の赤字)見通しにあるが、株価面で赤字は織り込まれており、下期は水際対策緩和による恩恵が収益改善効果をもたらしそうだ。24年3月期の営業損益は4期ぶり黒字化が有力視される。信用買い残も枯れた状態で信用倍率は1倍前後と拮抗している。日本航空 <9201> [東証P]やANAホールディングス <9202> [東証P]との株価連動性が高い点もポイント。
◎タカチホ <8225> [東証S]
長野など東日本を営業基盤に土産品の卸売業で国内最大手に位置する。菓子製造のほか、商品の企画開発なども多角的に展開。インバウンド消費による土産関連の売り上げに押し上げ効果は大きく、商品値上げも購買意欲減退にはつながりにくい。23年3月期は営業黒字転換が濃厚、更に24年3月期は利益の伸びが一段と顕著に。東日本だけでなく西日本への営業エリア拡大にも意欲的で、26年3月期に営業利益3億5000万円(前期は2億1600万円の赤字)を目指す中期計画を策定。株価面では小型株特有の足の軽さが光る。
◎京都ホテル <9723> [東証S]
今年で創業134年となる国内ホテル業界の老舗で、筆頭株主はホテルオークラ。「ホテルオークラ京都」と「からすま京都ホテル」の2つを経営する。一部メディアで京都は世界の人気観光都市ランキング首位に選ばれるなど外国人観光客にとっても注目の的であり、水際規制緩和によるインバウンド需要の復活は強力なフォローの風。23年3月期は営業赤字が継続する公算が大きいものの、前期と比べ損失幅は大きく縮小しそうだ。今月11日からスタートした「全国旅行支援」も物色人気を後押しし、調整を交えながら株価は900円台も視野。
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