決算発表に先回り、「増額修正シグナル点灯」で上げ潮に乗る6銘柄 <株探トップ特集>

特集
2022年10月17日 19時30分

―決算発表シーズンいよいよ本番、通期上方修正の可能性高まる企業に照準―

小売業を中心に内需関連が大半を占める2月期決算企業の上期決算発表が一巡し、今週からはいよいよ3月期決算企業の上期(4~9月)決算発表が本格化する。東京証券取引所の集計(10月13日時点)によると、ディスコ <6146> [東証P]が発表する20日から増え始め、月内に545社、11月に入ってからは1600社を超える企業が発表する予定だ。今回は上期決算発表シーズン入りを前に、3日の株探トップ特集「決算発表シーズン目前! 好決算&増額実績で探る『上方修正予備軍』6銘柄精選」に続いて、23年3月期通期の業績予想を上方修正する可能性が高いとみられる銘柄を探った。

●3~8月期決算は下方修正目立つ

一足先に発表を終えた2月期決算企業200社の上期(3~8月)決算を集計したところ、経常利益が前年同期比で増益(黒字転換と赤字縮小を含む)だった企業は116社となり、全体の半数以上が前年比プラスを達成した。増益幅が大きい企業を見ると、コロナ禍の行動制限解除による外出需要の高まりが追い風となった銘柄が目立つ。上位には国内流通を牽引するセブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]とイオン <8267> [東証P]、百貨店大手の高島屋 <8233> [東証P]とJ.フロント リテイリング <3086> [東証P]のほか、エービーシー・マート <2670> [東証P]、アダストリア <2685> [東証P]、東宝 <9602> [東証P]が入っている。

一方、ホームセンター食品スーパーなどは、巣ごもり需要の反動に加え、仕入れ原価や光熱費の高騰が重くのしかかり苦戦を強いられた。3~8月期決算は増益を確保する企業が多く、客足が回復した小売りセクターを中心に通期見通しを引き上げる企業もみられたが、消費や為替の動向、人件費を含むコスト上昇の影響など不透明な先行きに対する懸念は大きく、全体では上方修正よりも下方修正する企業の方が多かった。

●上期増額も通期“据え置き”銘柄に注目

前回の「決算発表シーズン目前! 好決算&増額実績で探る『上方修正予備軍』6銘柄精選」では、業績予想を上方修正する傾向がある企業に着目し、昨年の10月から11月にかけて上方修正した実績のある企業に主眼を置いて銘柄を選出した。今回は視点を変え、上期予想を上方修正したにもかかわらず、通期計画を据え置いた企業に注目。以下では、こうした企業の中から、業績の上振れ余地が大きいとみられる6銘柄をリストアップした。

●特殊陶は今年も上方修正する公算大

自動車エンジン点火プラグの世界トップメーカーである日本特殊陶業 <5334> [東証P]は9月26日に、上期の税引き前利益を623億円(前回予想は465億円)へ上方修正するとともに、中間配当を83円(前回予想は69円)に引き上げた。自動車補修用プラグや半導体製造装置用部品の販売が好調に推移するなか、円安によるプラス効果や事業開発コストが想定を下回ることが利益を押し上げる。同社はここ2年連続で上期予想を上方修正した後、上期決算発表と同時に通期予想を増額修正した経緯があり、今年も有力とみられる。指標面では予想PER7倍台と割安感が強く、配当利回りは5.6%前後と高水準で見直し余地は大きい。株価は中間配当の権利落ち以降、調整を強いられているが、ここは押し目買い候補としてマークしたい。

●クロスキャトは業績絶好調で再び最高値狙う

クロスキャット <2307> [東証P]は銀行やクレジットカード会社などの金融機関向けシステムに強みを持つシステムインテグレーター。官公庁など公共分野の実績も豊富で、政府が普及を急ぐマイナンバーカードの関連銘柄としても注目度が高い。足もとの第1四半期業績は、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の動きが活発化するなか、クレジットや金融、官公庁、製造向けの案件が増勢だったことに加え、原価率や販管費率も改善し、売上高、経常利益ともに四半期ベースの過去最高をマークした。株価は9月16日に上期予想を上方修正した後いったん利益確定売りに押されたが、その後は切り返しに転じている。目先の押し目形成場面は狙い目となりそうだ。

●三信電は上期計画が通期予想の8割で上振れ濃厚

三信電気 <8150> [東証P]は半導体や電子部品を取り扱うエレクトロニクスの総合商社。システム構築などIT分野も深耕しており、好採算のソリューション事業が利益を支えている。第1四半期業績は、商権拡大や家庭用ゲーム機向けの販売好調によって海外製半導体が大きく伸び、経常利益は11億6500万円と前年同期の3.5倍に膨らんだ。好調な業績を踏まえ、上期の同利益予想を22億7000万円(前年同期比97.9%増)へ上方修正した。通期計画(29億円)は据え置いたが、修正した上期予想が通期計画の8割近くに達しており、業績上振れは濃厚とみられる。また、配当は前期の創立70周年記念配20円を落とし年85円とする方針だが、業績上方修正に踏み切れば、配当も積み増す可能性が高そうだ。配当利回りが4%台後半で推移する一方、予想PER10倍近辺、PBR0.6倍台と割安評価にあり投資妙味は大きい。

●戸田工の期初予想は保守的、EV関連としても注目

戸田工業 <4100> [東証P]は国内トップシェアを誇る酸化鉄を主軸に、顔料や磁石材料、電池材料などを手掛ける化学素材メーカー。独化学大手BASFと共同で展開するリチウムイオン電池の正極材料では急拡大をみせる電気自動車(EV)市場で商機を捉えている。第1四半期業績は売上高97億800万円(前年同期比18.8%増)、経常利益11億7000万円(同11.7%増)と5四半期連続の増収増益を遂げた。車載モーター向けの磁石材料を中心に電子素材部門が大きく伸びたほか、機能性顔料部門では複写機・プリンター向けトナー用材料などの旺盛な需要を取り込んだ。23年3月期は原材料やエネルギー価格の高騰を警戒し、経常利益段階で前期比4割減益を見込むが、上期予想の上方修正や第1四半期実績の対通期進捗率(46.8%)から見て上振れする公算は大きいとみられる。

●日曹達は7年ぶり最高益更新も視野

日本曹達 <4041> [東証P]の第1四半期業績は、農業化学品事業で世界的な海上輸送の混乱や今後の販売価格上昇を想定した前倒し需要が発生するとともに、病害の発生拡大を見越した引き合いの増加によって殺虫剤などの海外向け販売が伸びた。また、持ち分法による投資利益の増加に加え、為替の円安進行も追い風となり、売上高404億4100万円(前年同期比27.1%増)、経常利益86億9000万円(同3.2倍)と業績高変化を示した。これを受けて、上期の経常利益予想を従来の82億円から142億円へ大幅に引き上げたが、通期計画は165億円を据え置いた。前倒し需要の影響もあるが上期予想を60億円も増額しており、通期は16年3月期に記録した過去最高益189億5200万円の更新も視野に入りそうだ。

●イーグランドは株主還元の切り口でも妙味

首都圏を中心に中古住宅の再生販売を展開するイーグランド <3294> [東証S]の第1四半期業績は、居住用物件の販売価格が上昇したうえ、利益率の高い収益用一棟マンションを3棟売却したことが寄与し、経常利益は10億2300万円(前年同期比33.8%増)と四半期ベースの過去最高益を更新した。足もとの好調な業績を踏まえて、期初段階で減益予想だった上期の経常利益を一転して増益見通しに大幅上方修正している。通期予想は据え置いたものの、第1四半期実績の通期計画に対する進捗率が43%に達するほか、前期まで2年連続で10月下旬に通期予想を増額しており、上方修正期待が膨らむ。また、年間配当79円(前期比8円増)から算出した配当利回りは5%近辺と高水準にあり、株主還元の切り口でも要注目だ。

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