【杉村富生の短期相場観測】 ─需給の改善が著しいのは確かだが……
「需給の改善が著しいのは確かだが……」
●外国人が本格出動の動きをみせる!
厳しい猛暑はどこに行ったのか。一気に、冬である。最近は春と秋が短い。株式市場は寒波の到来とともに、暖かい風が吹き始めている。マスコミの報道は好意的だ。「日本パッシングは終わった。欧米の投資マネーが日本回帰の動きをみせている」と。外国人が本格的に買い出動する? いや~、ぜひそうなって欲しいと思う。
著名な大手証券のストラテジスト(戦略家)は「年末の日経平均株価は3万円」と唱えている。別の証券会社の投資情報部員(やはり、有能な人物)は「Bad news is good news」(悪いニュースは良いニュース)と大きく変節、流れの変化に敏感に反応している。この人物の主張は「Cash is King(現金は王様)」だったのだが……。
まあ、相場環境が変わったということだろう。古来、続く流れに逆らうな、ついていくのが儲けの道、相場にこだわりは禁物、などと教えている。ただ、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策、CPI(消費者物価指数)上昇率次第の面はある。焦点は12月13~14日のFOMC(連邦公開市場委員会)になろう。
カナダ中央銀行は10月26日、政策金利を0.5%(50ベーシスポイント)引き上げ3.75%とした。予想は0.75%の利上げだった。なお、7月には一気に1.00%、9月には0.75%の利上げを行っている。恐らく、リセッション(景気後退)入りを警戒したのだ、と理解されている。
これを受け、マーケットでは12月のFOMCでの利上げ幅が縮小される、との期待が一段と高まったようだ。しかし、アメリカの景気はサービス業を中心に7~9月のGDP成長率(プラス2.6%)が示しているように、まったく衰えていない。これでは逆に、「Good news is bad news」ではないか。
●個別銘柄対応が引き続いて有効な場面!
とはいえ、米国の30年物住宅ローン金利は7.16%と、2001年以来の7%台突破になっている。この金利水準では多くの人が住宅購入をあきらめるだろう。結果的に、賃貸住宅の家賃が高まる悪循環に陥っている。住宅業界にとって、高金利は痛い。購入予定者だって、そうだろう。もちろん、建設業界、家電販売にダメージを与える。
IMF(国際通貨基金)は欧米の利上げラッシュが「金融システム不安の引き金になる」と警告している。カナダの利上げ幅縮小はこれに応えた面があろう。アメリカについては11月10日発表予定の10月のCPI、12月13日発表予定の11月のCPIがポイントになろう。11月8日は中間選挙である。
投資戦術、物色面はどうか。筆者はベアマーケット(往来相場)との認識をベースに、引き続いて個別銘柄対応が有効と主張している。日経平均株価の上値は限定されるし、自律反発は短期間だ。もちろん、ヘッジファンドの解約に伴う「45日ルール」は通過、会社型投信の利益圧縮のための「損出し」が一巡、需給面は改善している。
具体的な銘柄は? まず、出直りの動きを強めているスポンジチタンの世界第2位メーカーの大阪チタニウムテクノロジーズ <5726> [東証P]だ。世界シェア3割のロシア企業(VSMPOアヴィスマ)が経済制裁の対象となっている。増産余力があるだけに、この分の“特需”を享受できるだろう。
次に、業容一変の夢が膨らむマイクロアド <9553> [東証G]はどうか。子会社のマイクロアドデジタルサイネージが手掛けるデジタル広告が順調に伸びている。出稿は100ブランドを突破したという。この分野では第4位の大株主のSCSK <9719> [東証P]と協業関係にある。
M&Aキャピタルパートナーズ <6080> [東証P]、テセック <6337> [東証S]は好業績を評価できる。テセックの2023年3月期の1株利益は401.1円(前期は305円)となる。倉元製作所 <5216> [東証S]はフェローテックホールディングス <6890> [東証S]の支援を受け、パワー半導体製造装置事業に進出する。
2022年10月28日 記
株探ニュース