明日の株式相場に向けて=「半導体」全面蜂起とFRB議長の胸中
きょう(31日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比482円高の2万7587円と3日ぶりに急反発。まさに目の覚めるような切り返しをみせた。前週末の日経平均は一時2万7000円台を下回る場面もあるなど冴えない動きで、欧州時間に入ってもこの流れを引き継ぐ形でモヤっとした地合い。主要国の株価もドイツ、フランスが高かったものの英国やイタリアは下げるといった高安まちまちの展開だった。ところが、米国株市場では我が道を行く強調相場となり、高く寄り付いた後に上値追いが加速、NYダウは6連騰でしかも800ドルを超える急騰パフォーマンスを演じた。
ただ、注意しなければならないのは今の株高をパウエルFRB議長は良く思っていないことだ。現在インフレ経済にとって株高による資産効果は敵である。FRB高官の“牽制球”が使えないブラックアウト期間は、FRBはFEDウォッチャーとして知られるウォール・ストリート・ジャーナルのニック・ティミラオス記者にリークしてアドバルーンを上げさせる。古典的な手法ながら相場が大揺れしないように事前にガス抜きを図るわけだが、今回ニック氏はターミナルレートがこれまでのコンセンサスより上振れする可能性に言及した。市場では「11月の0.75%は100%織り込んでいるが、12月に0.75%の引き締めを行い、これを打ち止めとするシナリオはおそらく消えた」(ネット証券アナリスト)と指摘する。したがって、目先は再び様子見ムードが漂う可能性もある。相場は人間の呼吸に似た部分があり、息を止めて全力疾走すれば当然ながらその反動も出てしまう。ここは投資家もいったん足を止めて周りの様子をうかがうタイミングかもしれない。
とはいえ銘柄物色の方向性は確認しておきたい。きょうの東京市場では、個別株は8割の銘柄が上昇(プライム市場ベース)しているだけにテーマ買いの動きもやや見えにくくなっているが、特筆すべきは半導体関連株の強さで全面蜂起の様相をみせた。前週末の米国株市場も同様で、NYダウ、ナスダック総合株価指数ともに大幅高をみせたのだが、指数としては半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)の上昇率が約4%高と主要株価指数の上昇率を大きく上回っていた。半導体関連株への資金還流が全体強気相場の源泉ともなっている。
ただし、全体相場が戻り一服となった場合は、勢いよく先頭集団を走っていた銘柄は逆風を受けやすい。その場合は半導体関連でも、先頭集団から株価的にやや出遅れた第2集団を走る好実態株が優位に立つ。PERやPBRなど株価指標面の割安な銘柄に出番が回りそうだ。候補としては三社電機製作所<6882>、巴川製紙所<3878>、内外テック<3374>などが挙げられる。ハイパーグロース系は金利の影響を受けやすくいったん様子をみたい。
ハイパーグロース株にはバンク・オブ・イノベーション<4393>のような問答無用の暴騰をみせる銘柄もあるが、こういうケースはかなり稀な例といえる。同社株は10月19日のストップ高を皮切りに超音速で大気圏外に飛び出たようなチャートを形成、直近9営業日で株価は5倍化した。市場関係者によると「同社の新作RPG『メメントモリ』が国際的な大ヒットを記録している。時間の経過とともにアップルストアのセールスランキングは直近で9位まで落ちてきたが、グーグルストアでは依然として2位をキープ。売上高21億円(前期実績)の同社にとって、1週間弱の日数で課金高16億円の爆発的な人気を博したという現実をみれば、足もとの株価変貌もあながち仕手株と斬り捨てるわけにはいかない」(国内投資顧問会社ストラテジスト)という。まさにモンスター級のアプリが株価大化けの原動力となった。しかし、ゲーム関連や、バイオ系の銘柄は突然変異的な急騰はあっても、横には波及しにくい。“材料があるかないか”が全てだからである。ハイパーグロース株物色への微妙な逆風は東証グロース指数の戻り一服に反映されている。
あすのスケジュールでは、10年物国債の入札、10月の新車販売台数、10月の軽自動車販売台数など。海外では10月の財新中国製造業PMI、豪中銀の政策金利発表、10月の米ISM製造業景況感指数、9月の米建設支出など。国内主要企業の決算発表ではソニーグループ<6758>、三菱重工業<7011>、トヨタ自動車<7203>、三井物産<8031>などが予定されている。また、海外主要企業ではファイザー<PFE>、アドバンストマイクロデバイシズ<AMD>などの決算にマーケットの関心が高い。(銀)