明日の株式相場に向けて=決算発表後に勝つ戦略を考える
きょう(9日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比155円安の2万7716円と3日ぶり反落。大勢トレンドは戻り足ながら、いったんは利益確定の売りが出やすいタイミングではあった。指数寄与度の高い値がさ株として10月以降の日経平均の牽引役を担ってきたソフトバンクグループ<9984>も、さすがに値動きが重くなっている。とはいえ、依然として頑強な値動きできょうは約1年ぶりに7000円の大台に乗せた。一方、指数絡みで売り対象となっていたのがファーストリテイリング<9983>だ。2000円あまりの下げをみせ、1銘柄で日経平均を70円も押し下げた。
前日の米国株市場では、中間選挙後の株高アノマリーを先取りする買いで取引前半は次第高の展開だった。NYダウは一時500ドルを超える上昇をみせたものの、その後は急速に値を消して前の日の終値近辺まで“往って来い”の状態となり、ナスダック総合株価指数の方は一時マイナス圏に沈んだ。やや買い疲れ感も垣間見えるのだが、終盤は再浮上しており、引き続き空売りの残玉が全体相場に浮揚力を与える構図となっている。
同日に投票が行われた中間選挙は、漸次開票作業が進んでいる。日本時間9日午後4時の段階で下院については共和党が大きく民主党を突き放した格好となっているが、これは事前想定通り。一方で上院は接戦だが、これも予想されたところ。ただ、スイング・ステートで民主党がペンシルベニア州などを押さえたことで、情勢は民主党に傾いているようだ(日本時間午後4時現在)。市場では「上院は3分の1だけ改選ということもあって、そもそも全体の議席数が大きくは変動しにくい。仮にねじれ議会となってもならなくても、バイデン政権にとっては運営難であることに変わりはない。その意味で(上院で民主党が過半数を確保しても)株式市場にとってサプライズ要素は少ない」(中堅証券ストラテジスト)とする。中間選挙の結果はマーケットに直接的な影響を与えにくく、かくして「中間選挙後は高いというアノマリー」だけが独り歩きするということになる。
もっとも米CPI発表を前にして、躊躇なくポジションを強気に傾けることは難しいが、市場関係者によると「ヒアリングした限りでは、仮に10月のCPIの結果がコンセンサスよりも高く全体が波乱展開となった場合は、下値を拾いたいと考えている投資家(=機関投資家)はかなり多い」(ネット証券アナリスト)という。つまり、米CPI通過後に相場が下がれば、そこは買い場提供という見方を示しているプロ筋が多いということになる。
それはなぜか。前日の繰り返しになるが、既にCPIの伸び率はピークアウトの方向にあることは間違いなく、特に11月以降は伸び率が急速に鈍化するという観測が強まっているためだ。とするならば、今回の10月分のデータでマーケットが動揺するのであれば、それはCPIショックとしては最後の買い場になるかもしれないという思惑にもつながりやすい。逆説的に言えば、買いたい向きが多ければそれだけ株価の押し幅は小さくなるのが道理で、実際にこのビッグイベント通過後に相場が波乱に陥る可能性は低いとの読みも働く。
こうした事情を踏まえて、東京市場の個別株動向を眺めるとやはり今は「決算プレー」にマーケットの関心が集中している。決算跨ぎは避けるべきと再三述べてきたが、好決算発表銘柄に注目すること自体は悪いことではなく、極めて重要である。これらは決算でいったん買われた後に必ず一服場面があるが、その後改めて買い直されるケースが非常に多い。目先決算通過後の銘柄としては、丸文<7537>、オーナンバ<5816>、田中化学研究所<4080>、岡部<5959>、和井田製作所<6158>などをマークしたい。
あすのスケジュールでは、10月のマネーストック、10月のオフィス空室率、9月の特定サービス産業動態統計、10月の工作機械受注額など。海外では10月の米CPIに市場の関心が高い。このほか米新規失業保険申請件数(週間)や10月の米財政収支、米30年国債の入札など。国内主要企業の決算では、日揮ホールディングス<1963>、富士フイルムホールディングス<4901>、資生堂<4911>、ブリヂストン<5108>、川崎重工業<7012>、ニコン<7731>、バンダイナムコホールディングス<7832>、東京エレクトロン<8035>、三菱地所<8802>、セコム<9735>などが予定されている。(銀)