来週の相場で注目すべき3つのポイント:米PPI、米半導体・小売企業決算、米中小売売上高
■株式相場見通し
予想レンジ:上限29000円-下限27800円
来週の東京株式市場は上値を試す展開か。今週末の流れを引き継いで、週明けもインフレ減速・金融引き締め懸念後退を好感した動きが継続しそうだ。15日に米10月卸売物価指数(PPI)が発表予定で、米10月消費者物価指数(CPI)に続きコア指数の減速が確認されれば株式市場は一段高となろう。ただ、石油輸出国機構(OPEC)プラスによる協調減産や根強い中国での「ゼロコロナ」政策の緩和期待を背景に、原油市況が9月下旬以降は下値を切り上げているため、ヘッドラインインフレの上振れには注意が必要だ。
米10月CPIの方もコア指数が大きく減速したとはいえ、前年比ではまだ+6.3%と高水準だ。また、CPIの3割以上と最も大きい構成比を占める住居費は前月比+0.8%と9月(+0.7%)から加速している。相関性の高いS&Pコア・ロジック・ケース・シラー住宅価格指数などの米住宅価格の代表的な指標は今年4月をピークに減速しているため、1年程遅れて動く遅行性を踏まえれば、住居費の減速も時間の問題だろう。ただ、1年から1年半の遅行性を踏まえると住居費の減速にはまだ時間がかかる見通し。今後、コアCPIが前年比で+6.0%台をしぶとく維持する可能性もあり、中長期では警戒は怠れない。
それでも、今回のコアCPIの減速度合いはモメンタム重視の株式強気派を勢いづかせるのには強力な材料となっており、この勢いは簡単には萎まないだろう。このため、15日の米10月PPIが多少予想を上回る程度ではインフレ減速・金融引き締め懸念後退への思惑は消えず、来週末の米国版SQ(特別清算指数)算出日までは売り方の買い戻しを巻き込みながら上昇基調が続くと考えられる。東京市場でも商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドによる一段の買い持ち高の積み上げにより、日経平均の29000円タッチはありえそうだ。
今週末は地合いの影響が大きいだろうが、業績予想を下方修正した東京エレクトロン<8035>が急伸しており、半導体関連株のあく抜け感を想起させるような動きとなった。こうした中、来週は米国時間で16日にエヌビディアが、17日にはアプライド・マテリアルズが決算を予定している。内容が良くないことは大方分かっているため、焦点は東京エレクトロンと同様にあく抜け感が強まるかどうかだろう。それ以前の話ではあるが、東京エレクトロンの株価が週明け以降もしっかりと続伸できるかも重要なポイントとなってこよう。関連株のあく抜けが強まれば指数寄与度の大きい銘柄が多いだけに、相場全体を押し上げることにつながろう。
一方で、懸念材料が何もないわけではない。来週は15日にホームデポ、ウォルマート、16日にロウズ、ターゲット、17日にギャップ、メーシーズの決算が予定されている。インフレ下で個人消費が減速しつつある中、小売企業は需給の読み違いで大量の在庫を抱えており、今年は年末商戦を前倒しすることで在庫処分に勤しんでいる。ただ、それでも年末商戦は不振に終わる可能性があるとも指摘されており、来週の米小売企業の決算にはやや注意が必要だ。ほか、米中の10月小売売上高や鉱工業生産、米11月各連銀製造業景気指数なども注目される。業績下方修正や在庫処分の遅滞が判明すれば、景気悪化・企業業績悪化への懸念が強まり、相場のムードを一変させる可能性もある。他方、中国当局が新型コロナ対策として入国者などに義務付けている隔離期間を短縮すると伝わっており、「ゼロコロナ政策」緩和による中国経済の回復期待が強まってきた。工作機械受注統計は低調になってきているが、関連株にあく抜けの動きが出てくるか注視したい。
■為替市場見通し
来週のドル・円は戻りの鈍い値動きとなりそうだ。11月10日に発表された米10月消費者物価指数(CPI)と同コア指数は市場予想を下回った。連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利上げへの期待は大幅に後退し、リスク選好的なドル買い・円売りが拡大する可能性は低いとみられる。年末に向け消費の低迷が予想され、景気減速への懸念は消えていないこともドル買いを抑制する一因となりそうだ。
一方、来週発表の米経済指標のうち、10月小売売上高、11月フィラデルフィア連銀製造業景気指数はいずれも前月から小幅に改善する見通し。米金融当局は金融引き締めの方針を早い時期に見直すことには慎重であるため、10月小売売上高などの経済指標が市場予想を上回った場合、ドル買い・円売りがやや強まる可能性は残されている。
なお、8日に行われた米議会中間選挙で下院は共和党が多数党となりそうだが、民主党の議席数は事前予想を上回るもよう。バイデン大統領は2年後の大統領選に再選の意欲を示しているが、党内から金融引き締め政策に批判が向かう可能性がある。また、15日にはトランプ前大統領が2024年大統領選挙への出馬を表明するとの見方が出ており、米国の政治情勢は混沌としていることもドル売りを誘発する可能性があろう。
■来週の注目スケジュール
11月14日(月):日・決算発表→リクルートHD、SMC、マツココ、欧・ユーロ圏鉱工業生産(9月)、インドネシア・米中首脳会談など
11月15日(火):日・GDP速報値(7-9月)、日・鉱工業生産(9月)、ベースフードが東証グロースに新規上場、POPERが東証グロースに新規上場、中・鉱工業生産指数(10月)、中・小売売上高(10月)、独・ZEW期待指数(11月)、米・ニューヨーク連銀製造業景気指数(11月)、米・生産者物価コア指数(10月)、インドネシア・G20首脳会議(16日まで)、米・バー連邦準備制度理事会(FRB)副議長が上院銀行委員会で証言、米・決算発表→ホームデポ、ウォルマートなど
11月16日(水):日・コア機械受注(9月)、中・新築住宅価格(10月)、英・消費者物価コア指数(10月)、米・小売売上高(10月)、米・鉱工業生産指数(10月)、米・NAHB住宅市場指数(11月)、米・NY連銀総裁やSEC委員長が米国債に関する会議で講演、米・決算発表→エヌビディア、ロウズ、ターゲットなど
11月17日(木):日・貿易収支(10月)、米・住宅着工件数(10月)、米・フィラデルフィア連銀製造業景況指数(11月)、米・セントルイス連銀総裁が講演、米・クリーブランド連銀総裁が講演、米・決算発表→アプライド・マテリアルズ、ギャップ、メーシーズなど
11月18日(金):日・消費者物価コア指数(10月)、英・小売売上高指数(10月)、米・中古住宅販売件数(10月)など
《YN》