国内株式市場見通し: モメンタム継続か、短期割り切りで買い参戦も一考の余地

市況
2022年11月12日 14時56分

■米CPI減速で週末は半導体がけん引役

今週の日経平均は週間で1063.83円高(+3.91%)と3週続伸。ローソク足は3週ぶりに陽線を形成。26週移動平均線をはじめ、その上に位置する52週、13週線をも一気に上抜いた。

週前半は買いが先行し、7、8日の日経平均は327.9円高、344.47円高と続伸。米10月雇用統計の内容や米連邦準備制度理事会(FRB)の一部高官の発言を受けて利上げ減速観測が広まったことが株価支援要因になった。さらに、米中間選挙において、下院で共和党優勢との報道を受け、民主党政権が掲げる増税法案が通りにくくなるとの思惑も買いに拍車をかけた。

週半ば9日に155.68円安と騰勢一服を挟んで10日は270.33円安とやや大きめに続落。米中間選挙で下院での共和党勝利の勢いが期待された程ではないことが判明し、政局の先行き不透明感が台頭。加えて、暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXが資金繰りの悪化に直面し、破産法適用の申請が近いとの報道を背景に、暗号資産価格が軒並み急落したことも投資家心理を悪化させた。

しかし、週末11日は一転して817.47円高と急反発。米10月消費者物価指数(CPI)の伸びが予想以上に鈍化したことで、FRBの利上げペースが減速するとの思惑が強まり、米長期金利が大幅に低下。10日のフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が+10%と急騰したことで、業績予想を下方修正した東京エレクトロン<8035>も急伸するなど値がさハイテク株を中心に上昇し、指数を押し上げた。

■米小売・半導体企業決算など注目材料多数

来週の東京株式市場は上値を試す展開か。今週末の流れを引き継いで、週明けもインフレ減速・金融引き締め懸念後退を好感した動きが継続しそうだ。15日に米10月卸売物価指数(PPI)が発表予定で、CPIに続きコア指数の減速が確認されれば株式市場は一段高となろう。ただ、石油輸出国機構(OPEC)プラスによる協調減産や根強い中国での「ゼロコロナ」政策の緩和期待を背景に、原油市況が9月下旬以降は下値を切り上げているため、ヘッドラインインフレの上振れには注意が必要だ。

米10月CPIの方もコア指数が大きく減速したとはいえ、前年比ではまだ+6.3%と高水準だ。また、CPIの3割以上と最も大きい構成比を占める住居費は前月比+0.8%と9月(+0.7%)から加速している。相関性の高いS&Pコア・ロジック・ケース・シラー住宅価格指数などの米住宅価格の代表的な指標は今年4月をピークに減速しているため、1年程遅れて動く遅行性を踏まえれば、住居費の減速も時間の問題だ。ただ、1年から1年半の遅行性を踏まえると住居費の減速にはまだ時間がかかる見通し。今後、コアCPIが前年比で+6.0%台をしぶとく維持する可能性もあり、中長期では警戒は怠れない。

それでも、今回のコアCPIの減速度合いはモメンタム重視の株式強気派を勢いづかせるのには強力な材料となっており、この勢いは簡単には萎まないだろう。このため、15日の米10月PPIが多少予想を上回る程度ではインフレ減速・金融引き締め懸念後退への思惑は消えず、来週末の米国版SQ(特別清算指数)算出日までは売り方の買い戻しを巻き込みながら上昇基調が続くと考えられる。東京市場でも商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドによる一段の買い持ち高の積み上げにより、日経平均の29000円タッチはありえそうだ。

今週末は地合いの影響が大きいだろうが、業績予想を下方修正した東京エレクトロンが急伸しており、半導体関連株のあく抜け感を想起させるような動きとなった。こうした中、来週は米国時間で16日にエヌビディアが、17日にはアプライド・マテリアルズが決算を予定している。内容が良くないことは大方分かっているため、焦点は東京エレクトロンと同様にあく抜け感が強まるかどうかだろう。それ以前の話ではあるが、東京エレクトロンの株価が週明け以降もしっかりと続伸できるかも重要なポイントとなってこよう。関連株のあく抜けが強まれば指数寄与度の大きい銘柄が多いだけに、相場全体を押し上げることにつながろう。

一方で、懸念材料が何もないわけではない。来週は15日にホームデポ、ウォルマート、16日にロウズ、ターゲット、17日にギャップ、メーシーズの決算が予定されている。インフレ下で個人消費が減速しつつある中、小売企業は需給の読み違いで大量の在庫を抱えており、今年は年末商戦を前倒しすることで在庫処分に勤しんでいる。ただ、それでも年末商戦は不振に終わる可能性があるとも指摘されており、来週の米小売企業の決算にはやや注意が必要だ。ほか、米中の10月小売売上高や鉱工業生産、米11月各連銀製造業景気指数なども注目される。業績下方修正や在庫処分の遅滞が判明すれば、景気悪化・企業業績悪化への懸念が強まり、相場のムードを一変させる可能性もある。他方、中国当局が新型コロナ対策として入国者などに義務付けている隔離期間を短縮すると伝わっており、「ゼロコロナ政策」緩和による中国経済の回復期待が強まってきた。工作機械受注統計は低調になってきているが、関連株にあく抜けの動きが出てくるか注視したい。

■米中小売売上高、米連銀製造業景気指数など

来週は15日に7-9月期国内総生産(GDP)速報値、中国10月鉱工業生産、中国10月小売売上高、米10月PPI、米11月ニューヨーク連銀製造業景気指数、16日に9月機械受注、米10月小売売上高、米10月鉱工業生産、17日に10月貿易収支、米10月住宅着工件数、米11月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、18日に10月全国消費者物価指数、米10月中古住宅販売、などが予定されている。

《FA》

提供:フィスコ

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