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米国株
2022年11月15日 10時36分
特集

注目は「隠れ円安」に「嫌われ」~中間決算明けの投資戦略★第1回

~株探プレミアム・リポート~

東海東京調査センター シニアエクイティマーケットアナリスト 仙石誠さんに聞く

株式市場は依然として米国のインフレと利上げ動向に左右され、米中間選挙の行方も不透明な状況にあるものの、日本株市場は比較的底堅さをキープできている。

3月決算企業の中間決算も出揃いつつあり、年末に向け上昇機運を高められるかに関心が集まるところだ。

この先、日本株ではどんなセクターや銘柄に着目し、どう投資に向かっていけばいいのか。仙石さんに聞いた。

(聞き手は真弓重孝/株探編集部、福島由恵/ライター)

仙石誠さん仙石誠さんのプロフィール:

証券会社でリテール向け営業に従事した後、市場分析アナリストのアシスタントや企画部門などを経て、現職に。現在は、マーケットアナリストとして株式市場分析を担当する。

テレビ東京の『Newsモーニングサテライト』『ゆうがたサテライト』や日経CNBC、ラジオNIKKEI等の番組にも出演している。


「隠れ円安銘柄」に期待

――23年3月期中間決算の発表が一段落しました。今回の決算の特徴や印象に残ったものは?

仙石誠さん(以下、仙石): 決算は全体として良好な内容で、よい数字が出た企業に対しては素直に買いが入り株価上昇につながっている印象があります。

10月の米CPI(消費者物価指数)が市場予想より低い水準となったことで、先週後半から円高が急速に進みましたが、中間決算では円安を追い風に業績を伸ばした企業が目立ちました。

――円安恩恵といえば、かつては製造業など輸出関連企業でしたが。

仙石: 輸出関連企業にも恩恵は受けていますが、私がまず注目したのは「小売」、中でも百貨店です。百貨店株は22年の年初から上昇基調にある中で、今中間決算は業績がV字回復しています。

その大きな要因はコスト削減です。百貨店というと、1年前までは将来性に疑問符が付く業態のように見られていました。消費者の低価格志向にネット通販の浸透などでしばらく収益が伸び悩んできたところに、コロナ禍の行動制限が襲ったことで、先行きの不透明感が一層増した状況にありました。

こうした逆風が吹きすさんできた中で、百貨店業界は必死にコスト構造を改善し、収益性の回復に努めてきました。その効果が足元の業績、特に収益性に反映されています。

■高島屋の日足チャート(2021年末~)

【タイトル】

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同

――とすると、円安というより構造改革の効果といえそうですが。

仙石: 本質的には構造改革の効果が大きいと捉えています。その点も踏まえて、「隠れ円安銘柄」と呼んでいます。

今回、百貨店が業績を改善させている背景には、主要な顧客である富裕層やプチ富裕層が、この円安で今まで以上に足を運ぶようになった効果もあると見ています。

百貨店が取り扱っている海外の高級ブランドなどは、この急激な円安の進行で、円換算の値段が急騰してしまいました。となると、海外で買うよりずいぶんお得と、国内の百貨店で購入する人も増えた可能性があります。

緩和されたとはいえ、まだコロナは終息していないうえに、円安で海外の旅行費用も割高になっている。それならば国内で旅行や買い物を楽しもうという消費者の一部が、百貨店でお金を落とす機会も増やしたのかもしれません。

かつては、高級ブランドといえばハワイやシンガポール、香港や韓国などの国や地域で購入する方が安く、芸能人が海外で爆買いする様子を、おもしろおかしく取り上げられたようなこともありました。

しかし、長引くデフレ経済の影響で内外価格差は縮まり、最近ではむしろ日本で買う方が安い状況になりました。それに拍車を掛けたのが今回の「急激な」円安の進行で、その恩恵を百貨店が受けている可能性はあります。

■コロナ禍での百貨店売上高の前年同期比推移

【タイトル】

出所:日本百貨店協会

――米アップルのスマートフォン「iPhone」などを見ても、輸入品は円安が進んだ分を値上げされています。百貨店が取り扱う海外の高級品も今後値上げされて、お得度が薄れてしまうかもしれませんね。

仙石: その点もあり、今の円安による効果が一時的になる可能性も含めて「隠れ円安」と呼んでいます。

―― インバウンド(訪日外国人)の受け入れ制限の緩和での需要回復の恩恵が期待されていますが。

仙石: 百貨店に限らずインバウンド復活の効果はさまざまな業界に期待されていますが、やはり消費力という点では中国人観光客が以前の水準に戻るかが注目点になります。

――インバウンド需要が復活したとしても、百貨店はIT(情報技術)関連のような急成長期待は持ちえません。そうした中で、百貨店株が堅調に伸びている背景は。

仙石: これまで市場での評価が低すぎたところから、実力に見合った水準へと、評価が見直されている段階だからと捉えるのが適切でしょう。

――足元のPBR(株価純資産倍率)では、高島屋<8233>は0.6倍台前後、三越伊勢丹ホールディングス<3099>は0.8倍台前後と、現在も解散価値の1倍を下回っています。

仙石: そうした水準が、百貨店ビジネスに対する投資家の現実的な評価です。ITやハイテク株のような爆発的な成長は、期待されていません。

一方で、コスト構造の改善に取り組んだことで、一時のような厳しい評価が緩和され、株価の水準訂正が進んでいるのが、足元の百貨店株です。

他のリベンジ消費銘柄にも波及

――先の「隠れ円安」の効果は、「小売」以外のリベンジ消費銘柄にも波及しますか?

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ 隠れ円安以外での注目は

 

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