明日の株式相場に向けて=「大底圏の動意株」が輝きを放つ時
きょう(16日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比38円高の2万8028円と小幅続伸。日経平均は上げ下げを繰り返しながらもジリジリと上値を慕う展開できたが、足もとでは少々流れが悪くなっている。きょうはアジア株市場もやや不安定な動きで、リスクオフでは決してないのだが、リスクを取りに行くのにもやや躊躇して瀬踏みしているような状況だった。
前日の米国株市場では朝方に発表された10月の米生産者物価指数が前月比で0.2%の上昇となり、事前コンセンサスであった0.4%上昇を下回った。これがFRBの金融引き締めピッチが緩むことへの思惑を後押しし、米長期金利が低下するのを横目に株式市場ではハイテク株を中心に幅広い銘柄への買いを誘導した。NYダウは取引開始直後に前日比450ドルの上昇をみせ3万4000ドル大台を目前に捉えたが、そこで息が上がった状態となった。その後は漸次売りに押される展開となり、午後に入ると急速に値を崩しマイナス圏に沈んだ。これは、ロシアを巡るミサイル問題で地政学リスクが意識されたものだ。
ただ、当初はロシアが発射したミサイルがポーランドに着弾し、しかも犠牲者を出したという話で、やや慌てた雰囲気になったのだが、その後にこれはロシアから発射されたものではないという観測が強まった。とすれば、どこから飛んできたものかは大方察しがつく。
市場関係者によると「もし、ロシアからのミサイルがポーランドに落ちて、しかも人命を奪ったということであれば、ポーランドはNATO加盟国でもあり、かなり面倒なことになるという見方もあった。しかし、『ロシア製のウクライナから発射したミサイル』だったという、不謹慎ながら小噺のオチのような話で、ロシアの(誤射としても)直接的なミサイル攻撃ではなかったということにマーケット的には安堵した」(ネット証券アナリスト)という。だが、この問題はやはり簡単に一件落着というわけにもいかない部分がある。いわく「ロシア製だから製造責任はロシアにあると言うこともできない。また迎撃ミサイルだから、ウクライナ側にすれば(ミサイルを発射したのは)身を守るために仕方がない軍事的行為。だからといって、ポーランドの被害は結局ロシアによるものと強弁できるか、というとそうも言えず、メディア的にも落としどころに思案投げ首という状況のようだ」(同)とする。ロシア・ウクライナ問題についてはなかなか出口が見えない。今回の件は株式市場への影響は一過性で済みそうだが、連想で再びコモディティ価格の上昇などを誘発する可能性もある。資源・エネルギー価格の上昇が、いったんは沈静化の傾向をみせているインフレを再燃させるというケースも考えられ、ここは改めて有事モードへの心構えが必要かもしれない。
きょうは、プライム市場とスタンダード市場は全体指数がマイナスだったが、グロース市場指数とマザーズ指数についてはいずれも1.4%程度の上昇を見せていた。ここにきて中小型株を物色する資金の流れが太くなっている。これは個人投資家の投資マインドの改善を示唆するものだ。ただし、やや前のめりになっている感もあり、好調だからこそここは再びキャッシュポジションを意識して高めにしておくところかもしれない。個別株物色の流れは波状的に続くものの、無理はしない。例えばここ1年くらいのタームで大勢トレンドを俯瞰して、底値圏に近い水準で動意含みの銘柄に視点を合わせるのは有効だ。
その観点では目先動兆著しいが多摩川ホールディングス<6838>などは底値圏からの反転攻勢の初動という見方もできる。同社はモバイル端末や無線機器、計測器の製造販売を行い5G関連の一角に位置付けられる。再生可能エネルギー事業への展開にも注力しており切り口は多彩だが、直近で量子センサー分野に踏み込んでいることは業容拡大に向けた新たな萌芽となる可能性がある。また、金型部品で国内屈指のパンチ工業<6165>もここ小刻みに水準を切り上げ、大底離脱の気配がある。金型部品は半導体の製造工程でも重要なアイテムで同社の活躍余地は大きい。業績も回復トレンドにあり、PER5倍、PBR0.5倍、配当利回り3%は株価指標面からも水準訂正が有力視される。
あすのスケジュールでは、10月の貿易統計、1年物国庫短期証券の入札や20年国債の入札も予定されている。海外では、インドネシア中銀、フィリピン中銀が政策金利を発表、欧州では10月のユーロ圏消費者物価指数の改定値が開示される。米国では10月の住宅着工件数や11月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数への注目度が高い。(銀)