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米国株
2022年11月15日 19時30分
特集

新たに動き出す「水素」プロジェクト、活躍機運が高まる関連株を追え <株探トップ特集>

―社会の構造変化、ビジネス新領域開拓で成長のカギを握る水素のネクストステージ―

ロシアのウクライナ侵攻を通じて、エネルギーに対する各国の危機感は一段と高まった。足もとでも日本駐在の各国外交官8人が福島県を訪れ、水素製造の先進的な取り組みの様子を視察した。そこで社会構造、ビジネス両面から成長・変革の好機につながると捉えられている「水素 」に注目してみたい。地方自治体も各々の構想実現に向けて歩みを進めており、先行きへの期待感が高まりつつある。

●札幌は水素モデル街区構想で脚光浴びる

札幌、神戸、福岡といった地方の雄たる主力自治体がこぞって新たな社会の姿を模索するべく、足もとで動きを加速している。共通のキーワードは「水素」である。

まずは北の都「札幌市」。同市は企業などと連携して計画を組み、環境省の脱炭素先行地域に選ばれた。大きな注目点が「水素モデル街区構想」だ。再生可能エネルギーポテンシャルの高い北海道における水素社会の到来を見据え、FCV(燃料電池自動車)だけでなく、FCバスやFCトラックなどの大型車両にも対応可能な定置式の水素ステーション を整備。また、純水素型燃料電池のほか、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)などを導入した集客交流施設を民間活力により整備する。また、石狩市で開発計画が進んでいる洋上風力の余剰電力や、北海道内の電力系統における再生エネ余剰電力を活用して製造された水素を札幌市内で活用することが念頭に置かれている。2024年内に水素ステーションの竣工及び供用開始を予定している。

●水素スマートシティ構想を掲げる神戸市

次は光の都「神戸市」だ。同市は「水素スマートシティ神戸構想」を掲げ、民間企業が進める技術開発への支援など取り組みを進めている。18年4月には大林組 <1802> [東証P]、川崎重工業 <7012> [東証P]と協力し、水素を燃やして発生する熱風で発電機を動かして電気をつくり、市民病院やスポーツセンター、下水処理場などに電力を供給する実証実験に成功し、大きな話題となった。更に、川重や岩谷産業 <8088> [東証P]、Jパワー <9513> [東証P]、丸紅 <8002> [東証P]など7社で構成されている技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構と協力して取り組む「水素サプライチェーン構築実証事業」という世界初のプロジェクトも注目に値する。オーストラリア産の「褐炭(かったん=水分含有量の多い石炭)」から水素を製造、神戸港まで海上輸送した後、荷揚げ、貯蔵するまでの流れに挑戦するという内容だ。既に今年6月には運んできた水素で発電も行い、「つくる」「運ぶ」「貯める」「使う」という一連のプロセス構築に成功している。

●福岡市は水素リーダープロジェクト推進

最後は博多を擁する「福岡市」だ。「水素リーダー都市プロジェクト」を推進している同市は、西部ガスホールディングス <9536> [東証P]傘下の西部ガスや豊田通商 <8015> [東証P]など民間5社と協力して15年に国土交通省の実証事業で開設した「福岡市水素ステーション」を9月から商用としてリニューアルオープンしている。ただの水素ステーションではなく、面白いのは市民の生活排水である下水から水素を製造する世界初の水素ステーションであるという点だ。下水汚泥から生じるバイオガスでメタンガスを生成し、それに化学反応と化学処理を加えると高純度の水素を製造できる。商用とはいえ、啓発の意味合いが大きいようだが、先行きが楽しみな取り組みであることは間違いない。

ちなみに首都・東京も「水素」が、社会構造、ビジネス両面から成長・変革のカギとなると捉えている。実際、3月に「東京水素ビジョン」を策定し、8月には国際サプライチェーン構築などに向けて先進的な事業を展開する国内企業と意見交換する「東京グリーン水素ラウンドテーブル」を開催し、グリーン水素(再生エネ由来の電力を利用して生成される水素)の普及に向けて検討を深めている。また、11月に入って小池百合子都知事は国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)の会合において、水素エネルギーの活用拡大を進める方針を示した。

更に10月には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発」の「水素製造・利活用ポテンシャル調査」に対して、商船三井テクノトレードなど4社が「洋上に於ける水素サプライチェーン構築に関する調査」を提案し、採択されている。海水を活用した、洋上での水素製造と燃料船への水素供給といった洋上水素サプライチェーンの構築について検討を進める構えだ。いよいよ地上及び海上での水素の活躍場面が具体性を増してきており、そのエネルギーとしての位置付けが急浮上する段階に至っているといえよう。

●水素関連で要注目の銘柄をピックアップ

株式市場でも水素関連銘柄は改めてテーマ物色の波に乗りそうだ。有力企業にスポットライトを当てた。

◆岩谷産業 <8088> [東証P]~水素の製造から輸送・貯蔵・供給・保安まで一貫したネットワークを築いており、水素ステーションの整備を全国で進めている。関西電力 <9503> [東証P]や名村造船所 <7014> [東証S]などと、水素・燃料電池の利活用拡大と25年に開催予定の大阪・関西万博などでの利用・PRに向け、水素燃料電池船の商用運航を目指しており、同社はマネジメントと船舶用水素ステーションの建設に携わる。

◆旭化成 <3407> [東証P]~水素製造用のアルカリ水電解システムを手掛けており、中期経営計画で、次の成長を牽引する注力領域の一つとして挙げている。アルカリ水電解システムを中心とした水素に関する事業の開発を推進。水素製造用アルカリ水電解パイロット試験設備を着工しており、24年初頭に運転開始、25年までに大型アルカリ水電解装置を上市する予定だ。

◆住友商事 <8053> [東証P]~今年5月にはコロンビアやペルーにおける水素モビリティー市場の開拓と普及を目指すとして、コロンビアの大手輸配送会社プロミガスと覚書を締結。また、9月末に韓国ロッテグループのロッテケミカルと、水素・アンモニア分野での協業に関する覚書を締結しており、これらを脱炭素社会における重要なエネルギーの一つとして位置付け、持続可能なエネルギーシステムの構築に向けた取り組みを加速させる方針。

◆リンナイ <5947> [東証P]~家庭用給湯器において世界で初めて水素100%燃焼技術の開発に成功。課題とされていた「爆発の危険性」「不安定な燃焼」に対して、燃焼技術や流体制御技術を駆使してこの問題をクリアした。水素給湯器の量産化に向けて、技術確立と信頼性アップを進めていく構え。

◆日工 <6306> [東証P]~東京ガス <9531> [東証P]と共同で、水素を燃料とした世界初のアスファルトプラント向けの専焼バーナーの開発を進めている。24年3月までに500キロワットクラスの産業用小型バーナーの販売開始を予定。その後、水素及びアンモニアの供給状況を踏まえて、1万キロワットクラスの大型バーナーの実用化に向けた開発を加速させる計画にある。

◆デンヨー <6517> [東証P]~発電機や溶接機を手掛けており、日立製作所 <6501> [東証P]とコマツ <6301> [東証P]の協力を得て、250キロワット水素混焼発電機の23年の量産開始を目指しているほか、クボタ <6326> [東証P]が開発している産業用水素エンジンを搭載した「水素専焼発電機」の市場投入に向けた研究開発を進めている。

◆神戸製鋼所 <5406> [東証P]~同社の米子会社ミドレックスは、スウェーデンの製鉄会社H2グリーンスチール社向けに、世界初の100%水素直接還元鉄プラント商業機を受注。年産能力は210万トンで25年の稼働開始を目指している。なお、H2グリーンスチール社は、従来の製鉄・製鋼工程と比較して約95%のCO2排出量削減を目指す。

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