【植木靖男の相場展望】 ─12月第3週が分岐点か
「12月第3週が分岐点か」
●日本経済復活の決め手となる「円安」
日経平均株価は2万8000円を目前に苦戦を強いられている。その背景は、いうまでもなく米国景気の減速懸念と米国株価の下落にある、と指摘されている。だが、NYダウは実際にはそれほど大きく下げているわけではない。ナスダック指数にしても、11月安値からみれば、かなり上方にある。仮にナスダック指数が1万ポイントを割るような展開になるのならばともかく、むしろいまは粛々と懸念材料をこなしている印象だ。雌伏して時の至るを待つ、といったところか。
一方、東京市場は、現状の米国の金融、経済政策と国内のそれに大きな違いがあるにもかかわらず、米国株の動きを見て一喜一憂している。仮に米国経済の落ち込みが深刻化して世界全体が不況になれば、日本経済も足を引っ張られるとのリスクに脅えているのだ。中国経済の行方に神経質になっているのも同じ理由だ。もっとも、米連邦準備制度理事会(FRB)もこの辺りは十分心得ていて、不況や株価が大きく下がるのは本意でないはず。
東京市場にとってさらに無視できないのが為替相場だ。10月21日に1ドル=151円台だった円相場が、12月2日には133円台と実に18円も円高に振れている。
株価はどうか。この間、逆に若干ながら上昇しているのだ。これをどう解釈するか。これまで円安で株価は上昇してきたはず。ひょっとして、いまの円高は単なる一時的なものであって、依然として円安基調に変わりはない、ということか。
最近、台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>の熊本への上陸が話題となっている。TSMCの海外への進出は、もちろん経済安保が最大の理由のようだが、進出先の菊陽町ではマンション建設が活発だし、地価の値上がりも著しい。さらに、国内企業が中国から国内生産に切り替える動きもある。これを後押しするのが円安効果だ。
ともあれ、いまは円安こそ、日本経済復活の決め手といえる。ひょっとして黒田日銀総裁の本音は「円安=インフレ」にあるのではないか。ここで円高に戻れば万事休す。再びデフレ・低成長が続くことになると考えているのではないだろうか。
●ベアマーケットラリーを信じるか否か
現在の東京市場はそれほど厳しい下げではないが、投資家からの不満は多い。なぜか? 仮に上昇する日があってもそれが続かないのだ。
これはかつての海運株のように人気業種、銘柄が存在しないことが大きい。これでは投資家、なかでも短期投資家は手の出しようがない、といえる。その点で言えば、主力ハイテク株が買われた12月9日の週末での上昇は、12日からの週に大きな期待を持たせることになろう。
ところで、いま我々はベアマーケットラリーを信じるかどうかの判断を迫られている。もし、ベアマーケットラリーがあるとすれば、グロース株が二番天井を目指すだろうし、そろそろバリュー株も芽を吹き出す可能性がある。交互物色となるが、これがまた同じ銘柄の上昇が続かない理由でもある。
一方、ベアマーケットラリーなど信じないのであれば、来年の半ば頃とみられる逆業績相場の終わりまでじっと我慢するところだ。信じるのであれば、自分なりの相場技術を駆使して果敢に挑戦すべきであろう。
いずれにしても、12月第3週はその方向性が明確になりそうだ。
半導体を中心としたグロース株を狙うにしても、商社や自動車、航空、電力、金融、重工業など新たな主役のバリュー株のどちらを狙うとしても、一方でヘッジすることも必要であろう。
2022年12月9日 記
株探ニュース