明日の株式相場に向けて=ビッグイベント前夜の不可解な動き
きょう(13日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比112円高の2万7954円と反発した。前日の米国株市場の大幅上昇を受けて、きょうの東京市場は再びリスク選好の地合いとなったが、若干腰が引けている感じも否めなかった。日経平均は寄り付きで2万8000円大台を回復したものの、その後は階段を下るように水準を切り下げ2万7900円台へと押し戻された。後場も頑強な値動きを続けたが、終値で今月1日以来となる2万8000円台には届かなかった。
今週は13日(日本時間今晩10時半)に発表される11月の米消費者物価指数(CPI)、そして14日(日本時間15日未明)に予定されるFOMCの結果及びパウエルFRB議長の記者会見にマーケットの視線が集中している。そうしたなか、前日の米国株市場では景気敏感株を中心に買われ、NYダウが500ドルを超える上昇を示したことに、若干の驚きを示す市場関係者も少なくなかった。「持ち高調整の買い」という表現が新聞などの情報メディアには見られたが、このタイミングでは明確な理由がつきにくい、やや違和感の伴う強調相場だったといえる。
FOMC通過後の米国株市場は空売り筋の年内最後の踏み上げ(強制的な買い戻し)を誘う形での上昇を期待する声が強い。当欄でも来年の株式市場については、日米ともに逆業績相場の色彩が強まり下げトレンドとなる可能性が高いとの認識を繰り返してきたが、同時に今年の10月以降、年末にかけてはいったん株価に浮揚力が働きやすいとの見方も示してきた。FRBをはじめ世界的な金融引き締めピッチが緩むタイミングで、過度に織り込んだ逆金融相場の反動が出やすいのが10~12月のタームとみていたからだ。ただ、最終関門ともいえる今週の2つのビッグイベントがサンタクロースラリーの火付け役となるかどうかは微妙なところである。
改めて前日の米国株市場を振り返ると、この日は欧州株市場が総じて安かったにもかかわらず、朝方から一貫して強気優勢の地合いに傾いた。だが、同じ時間軸で米債券市場では長期債が売られ、為替市場ではドルの買い戻しが進み、恐怖指数と称されるVIX指数はマドを開けて25ポイントまで上昇した。この流れに従えば、株は安くなるのが道理であったが、実際は逆方向に進んだ。
特に取引終盤にNYダウ、ナスダック総合株価指数ともに上げ足を強めたのだが、これについて市場関係者は「今回発表されるCPIが市場コンセンサスよりも大幅に低くなるという観測が流れ、これを拠りどころに買いが流入した」(ネット証券マーケットアナリスト)という。ところが、債券市場は冷静で10年債利回りだけでなく2年債、3年債、5年債、7年債のほか、30年債利回りも上昇した。観測報道を完全スルーした状態になっている。更にVIX指数も9.5%高という不自然な急騰をみせた。「株式市場だけが正しい可能性はあるが、米CPIについて今回は下がって当然のムードが浸透しているので、その意味では株高材料として機能しにくい」(前出のマーケットアナリスト)と指摘する。
そして、14日のFOMCだが、万が一11月のCPIがコンセンサスの前年比7.3%上昇を大幅に上回るようなケースとなれば、これに先立って発表され予想外に上振れたPPIも伏線となり、結論が変わる可能性がある。つまり12月0.5%引き上げは既定路線のように見られていたが、0.75%の可能性も十分に残されているわけで、買い方としては気持ちの悪いところではある。ただし、考えようによってはここで波乱含みの下げがあれば、そこは買い場提供との見方もできる。週末にかけてキャッシュポジションは高めを維持しておくのが実践的といえそうだ。
あすのスケジュールでは、12月の日銀全国企業短期経済観測調査(日銀短観)、10月の機械受注がいずれも朝方取引開始前に開示される。午後取引時間中には10月の鉱工業生産指数(確報値)が発表される。このほかIPOが2社予定されており、東証プライム市場に大栄環境<9336>が、東証グロース市場にスカイマーク<9204>が新規上場する。海外では11月の英消費者物価指数(CPI)、10月のユーロ圏鉱工業生産指数、11月の米輸出入物価指数が発表される。また、FOMCの結果公表とパウエルFRB議長の記者会見にマーケットの注目度が高い。(銀)