来年相場の注目テーマに、「インボイス制度」で活躍必至の銘柄群とは <株探トップ特集>

特集
2022年12月13日 19時30分

―企業のデジタル化後押し、システム企業に商機到来―

来年10月のスタートを前に、「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」への関心が早くも広がってきた。人手不足の解消や生産性向上の実現に欠かせない企業のデジタル化を後押しするものとして、今年1月に施行された改正電子帳簿保存法とともに注目されている制度だ。経理負担の増加やフリーランスの収入減につながるといった声が上がるなど何かと批判を浴びているが、株式投資の観点からは同制度を追い風とする企業を探したいところだろう。インボイス制度に絡む銘柄群を追った。

●制度巡り期待と不安、政府は軽減策導入へ

インボイス制度とは、企業など事業者間の取引において、従来の請求書に適用税率や消費税額などの記載を追加した「適格請求書(インボイス)」を使用するというルールのこと。事業者が課税売り上げにかかる消費税額から仕入れなどにかかった消費税額を差し引く「仕入れ税額控除」を行う際にこの適格請求書が必要となり、従来の請求書では控除を受けられなくなる。制度開始をきっかけに請求書のやり取りや管理の効率化に向けて電子化の動きが強まるとみられ、これが経理業務全般のデジタル化につながっていくとの期待が高まっている。

一方、同制度を巡っては不安や懸念の声も出ている。制度への対応に伴い、経理負担の増加が中小事業者の大きな重荷となってしまうことや、これまで消費税の納税を免除されていたフリーランスなど免税事業者が納税義務のある課税事業者への転換を迫られる可能性があることなどだ。こうした声を受けて政府は直近、フリーランスや中小事業者に対して負担軽減措置を導入する方針を打ち出しており、制度実施に理解を得られるよう対策を急ぐ姿勢をみせている。

●ラクスなどシステム企業の取り組み続々

いずれにせよ、来年秋からインボイス制度がスタートすることになるため、制度対応に向けて各所で準備が進められている。経理業務のデジタル化の動きもあわせて広がるなか、 会計ソフトなど法人向けシステムを手掛ける企業には大きなビジネスチャンスが到来している。

ラクス <3923> [東証P]は経費精算サービス「楽楽精算」をインボイス制度に対応させる方針を4月に発表。新機能の開発やリリースを順次行っている。マネーフォワード <3994> [東証P]は法人向けサービス「マネーフォワード クラウド」において、来年初めごろから制度に対応したサービスを追加していくことを明らかにしている。クラウド会計ソフトのフリー <4478> [東証G]、名刺管理サービス大手で請求書管理サービスも手掛けるSansan <4443> [東証P]も制度対応を進める構えにある。関連大手の動きではこのほか、基幹業務ソフト「奉行シリーズ」を展開するオービックビジネスコンサルタント <4733> [東証P]、情報処理サービス大手TKC <9746> [東証P]の動向も見逃せない。

これら企業に加え、株式市場にはインボイス制度開始をにらみ取り組みを進めている企業が数多くある。来秋に向けて制度への関心は一段と高まっていくとみられ、いまから関連銘柄に注目しておいて損はない。今後の活躍が期待される7銘柄をピックアップした。

●活躍の舞台広がる有望7銘柄

インフォマート <2492> [東証P]はフード業界向けを中心に企業間電子商取引サービスを運営。同サービス内の請求書システム「BtoBプラットフォーム 請求書」が電子インボイス(電子化されたインボイス制度)の国内規格「JP PINT」に対応予定であることを11月に明らかにした。請求書システムの利用企業数は直近で80万社を突破している。

ミロク情報サービス <9928> [東証P]は会計ソフトや統合業務ソフトの開発・販売を手掛ける。電子インボイス発行・受領サービス「MJS e-Invoice(エムジェイエス イー インボイス)」を9月に提供開始。インボイス制度や改正電帳法への対応を背景としたデジタル化投資の高まりを追い風に、今期は売上高・営業利益とも過去最高を更新する見通し。

ウイングアーク1st <4432> [東証P]は帳票作成ソフトなど企業向けソフトウェアを開発。昨年に電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent(インボイスエージェント)」を立ち上げ、各企業とのサービス連携を進めるなど取り組みを加速させている。四半期ベースで営業増益基調を継続しており、今期見通しの上振れが期待される。

エフアンドエム <4771> [東証S]は個人事業主や中小企業向けに会計・管理支援サービスを展開。業績拡大や継続的な配当実施を背景に株価は長期上昇トレンドを描いており、2006年につけた上場来高値3230円(株式分割考慮後)の更新が意識される水準にきている。今期も大幅増益で最高益更新見通しにあり、増配の方針も示している。

ピー・シー・エー <9629> [東証P]はパッケージソフト大手。主力の法人向けサービス「PCAクラウド」において、来年からインボイス制度に対応した製品をリリースする予定にある。今期営業減益見通しながら上期時点での進捗率は良好で、業績に対する過度な警戒感は後退。株価は上期決算の発表を境に上昇に転じている。

データ・アプリケーション <3848> [東証S]は、企業間で契約や受発注などのデータをやり取りする際に使うEDI(電子データ交換)ソフトの開発で業界最大手。インボイス制度などへの対応を機に増加すると見込まれるEDIシステムの構築需要を捉えるべく、10月に対応製品をリリース。営業利益ベースでの進捗率は上期時点で8割近くに達している。

ジェクシード <3719> [東証S]は経営コンサルティング会社で、米オラクル製ERP(統合基幹業務システム)の導入支援を主力とする。インボイス制度対応に向けた案件増加などが寄与し、足もと導入支援は引き続き順調に推移。コスト削減策の効果も顕在化し、1-9月期の営業利益は通期計画を大きく上回って着地している。

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