明日の株式相場に向けて=米CPI待ちも材料株物色は花盛り
週明け10日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比201円高の2万6175円と3日続伸した。前週末の米国株市場ではNYダウが700ドル高と目の覚めるような切り返しを演じた。ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数も大きく買われた。今の米経済指標は弱い数字が出れば、FRBが金融引き締め策の手綱を緩めるというロジックで好感されるため、前週末発表の12月の雇用統計における平均時給や、ISM非製造業景況感指数がそれに該当する内容だったことから目先買い安心感が浮上した。ただ、今週は12日に12月の米消費者物価指数(CPI)発表というビッグイベントが立ちはだかる。その半月ほど後の2月1日に天下分け目のFOMCが控えていることもあってマーケットの注目度は高く、全般論として「機関投資家の立場に立てば、このタイミングで無理して買いポジションを高めるような運用者はいない」(中堅証券ストラテジスト)とする。
したがって全体指数は今一つ伸びを欠いたのだが、個別材料株の物色意欲は旺盛だ。全方位的にテーマ買いの動きが再燃している。例えば原発関連では、日米が次世代型原子力発電の輸出で協力することに合意したとの報道を受け、当欄でもフォローしてきた助川電気工業<7711>がストップ高に買われたほか、原発向け振動試験装置や計測器でほぼ独占的シェアを有するIMV<7760>も同じく値幅制限いっぱいまで上値を伸ばし、大引けは買い物を残した。ところが、同関連の重鎮である三菱重工業<7011>や日立製作所<6501>などは軟調に推移しているわけで、原発関連という強力なテーマであっても投資資金は中小型株を選好していることが分かる。日経平均株価など全体指数と連動しやすい大型よりは、時価総額の小さい足の軽い銘柄に優位性がある地合いとなっている。
この原発関連で中小型の範疇にある銘柄では、熱絶縁工事で高実績を有する明星工業<1976>。静かに新値街道に復帰しており、継続注目しておきたい。地味ながらも昨年10月中旬以降は着実に下値を切り上げる強い足で、PER・PBRともに割安感が強い。更に、原発のメンテナンスで力を発揮する東京エネシス<1945>も改めてマーク。株価は依然として底値圏といってよいが、PBR0.4倍台つまり一株純資産の半値以下の株価水準に放置されている。配当利回りも高い。両銘柄ともバリュー株としての側面が光る。
インバウンド関連や子育て支援(少子化対策)関連もハイパフォーマンス銘柄の宝庫だ。インバウンドでは中核銘柄のエアトリ<6191>やHANATOUR JAPAN<6561>が復活の兆しにあるほか、「パウダースノー」が訪日客に大人気ということもあって昨年末から上昇機運に乗った日本スキー場開発<6040>が鮮烈な上げ足を披露、きょうは約4年ぶりとなる4ケタ大台を突破した。ここから連想される銘柄としては明治海運<9115>が挙げられる。同社は北海道から沖縄までホテルやレストランなどを幅広く展開するが、ニセコでもホテルを展開。また、くじら保育園なども運営しており子育て支援関連の一角としても材料性を内包している。ちなみにきょうは、保育事業を手掛けるテノ.ホールディングス<7037>は薄商いながらストップ高に買われる人気となっている。
インバウンド特需やリオープン(経済再開)で恩恵を享受するセクターでは飲食関連も外せない。新型コロナの影響が一巡しラーメン人気が高まるなか、力の源ホールディングス<3561>が新高値を更新し20年1月以来約3年ぶりの高値圏に浮上したが、この流れで注目しておきたいのがDDホールディングス<3073>。旧社名のダイヤモンドダイニングの方が馴染みのある投資家が多いかもしれない。株価は2017年に大相場を形成した実績がある。
このほか好業績銘柄では5G関連のsantec<6777>が好チャートを形成。「空飛ぶクルマ」では物流ドローンを開発するベンチャーと協業体制にある東陽テクニカ<8151>が面白い位置にある。不眠治療用アプリでマーケットの耳目を集めたサスメド<4263>も目先急動意、ここから戻り相場に向かう気配をみせている。
あすのスケジュールでは、昨年12月上中旬の貿易統計、12月の輸入車販売、12月の車名別新車・軽自動車販売、消費活動指数、11月の景気動向指数(速報値)など。また、30年物国債の入札も予定されている。海外では11月の豪小売売上高、11月の豪消費者物価指数(CPI)が発表される。(銀)