金は堅調、米利上げ減速観測やドル安などが支援 <コモディティ特集>

特集
2023年1月25日 13時30分

の現物相場は、米連邦準備理事会(FRB)の利上げペース減速見通しや欧州中央銀行(ECB)の利上げ見通しによるドル安を受けて堅調となり、昨年4月以来の高値1936ドルをつけた。

12月の米雇用統計で賃金の伸びが鈍化したことや、米消費者物価指数(CPI)でインフレの伸びが鈍化したことで、1月31日~2月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では25ベーシスポイント(bp)利上げに減速し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準は4.50~4.75%になる見通しである。また、CMEのフェドウォッチによると、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)は3月に4.75~5.00%となることを織り込んでおり、11月まで維持するとみられている。

一方、ラガルドECB総裁は、高インフレを抑制するために利上げを続けるとした。クノット・オランダ中銀総裁は、ECBが2月と3月の理事会で政策金利を50bp引き上げるとのタカ派姿勢を示しており、ドル安が進みやすくなっている。ただ、ビスコ・イタリア中銀総裁は慎重姿勢を示しており、ECB理事会での協議も確認したい。ユーロ相場は1ユーロ=1.0927ドルと昨年4月以来の高値をつけた。

中国経済の再開期待も金の支援要因である。中国金協会(CGA)は、2022年の同国の金需要は前年比10.6%減の1001.7トンと発表した。これは新型コロナウイルスの感染拡大による混乱が需要を抑える要因になったと考えられる。ただ、年初の金価格は地政学的リスクの先行き不透明感やインフレ懸念、中国人民元の軟調を受けて堅調に推移しており、春節が需要回復のきっかけになるとみられている。中国の金プレミアムも上昇しており、需要が回復したことを示している。

一方、春節の大移動で新型コロナウイルスの感染拡大が続く可能性もある。金価格は短期的に買われ過ぎであり、利食い売り主導の調整局面が警戒されている。中長期的には上昇トレンドが続くとみられており、春節明けの中国勢の動きを確認したい。

●JPX金は円安再開でレンジ上限を試す

JPX金先限は17~18日の日銀金融政策決定会合で金融緩和が維持されたことを受けて円安に振れた。25日の午前中に昨年6月以来の高値8096円をつけ、昨年4月の上場来高値8160円が視野に入った。市場ではイールドカーブ・コントロール(YCC)の再修正の見方が出ていたが、黒田日銀総裁は記者会見でYCCは存続可能との見方を示し、長期金利の変動幅の拡大を否定した。また、同総裁がダボス会議のパネル討論で極めて緩和的な金融政策を継続すると述べたことや、共通担保資金供給オペによる金利低下も円安要因となった。

ただ、黒田総裁は4月8日に任期満了を迎える。岸田首相は後任人事案を2月に国会に提示する考えを示しており、後任の行方も確認したい。また、米FRBの利上げペース減速見通しは円高要因であり、円安が続くかどうかも焦点である。

●金ETFに投資資金が戻る

世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、1月24日に917.34トン(昨年11月末908.09トン)に増加した。米FRBの利上げペース減速見通しを受けて投資資金が流入した。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは1月10日時点で15万3240枚(前週15万0535枚)に拡大し、昨年6月28日以来の高水準となった。昨年9月27日の5万2081枚を当面の底として新規買い、買い戻しが入った。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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