【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─新年度相場では「挽回」&「回復」がキーワードに!
「新年度相場では『挽回』&『回復』がキーワードに!」
●日銀会合後の植田新総裁の発言がポイントに
4月の東京株式市場は、欧米での金融システム不安が残り上値は重いものの、日本企業の2024年3月期の業績改善期待などで下値は限定的な展開となりそうだ。日経平均株価の予想レンジは2万7000円~2万8500円。
スケジュール面からは、米国では3日のISM製造業景気指数、7日の雇用統計、12日のCPI(消費者物価指数)、13日のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨、14日の小売売上高の発表などが注目される。インフレが警戒される一方で、米中堅銀行の相次ぐ破綻で景気の先行き不透明感も浮上するなか、一連の指標の動向が株価の反応材料となる可能性がある。なお、4月はFOMCの開催はなく、次回は5月2日~3日となる。ECB理事会も同様で、次回は5月4日に予定されている。
日本では3日に日銀短観、28日に日銀金融政策決定会合の結果発表が予定されている。日銀短観では大企業製造業の設備投資や業績見通しなどが注目点となる。日銀会合は植田新総裁の下での初会合。金融政策は現状維持が見込まれるが、記者会見で今後の方向性に対する発言があるかがポイントだ。
シリコンバレーバンク破綻やUBS<UBS>による経営不振のクレディ・スイス・グループ<CS>買収など、金融システムに対する懸念は継続している。クレディ・スイスが発行する劣後債のAT1債が無価値になったことで、保有する他の金融機関の財務内容に懸念が生じている点も不安を増幅している。投資家心理を含め事態収束には時間がかかるとみられ、日本株も上値は追いにくい。
●半導体、FA関連、IPOなどを軸に展開へ
物色面では、半導体設備投資関連に市場の関心が向かっている。通信量の増大に伴うサーバー需要の増加、対話の如く回答する生成AI(人工知能)である「チャットGPT」の台頭など、先端半導体のニーズが増加しているためだ。
メモリー半導体の需給は緩んだままだが、年後半の回復への期待感も高まりつつある。日米では先端半導体を受託生産する台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>の工場建設が進む。国内では九州に5-10ナノ(ナノは10億分の1)メートルの先端品を扱う第2工場の建設を検討しているという報道もある。シリコンウエハのSUMCO <3436> [東証P]、信越化学工業 <4063> [東証P]、前工程に強い東京エレクトロン <8035> [東証P]、研削・研磨・切断装置のディスコ <6146> [東証P]、検査装置のアドバンテスト <6857> [東証P]などが注目される。
4月下旬からは23年3月期の決算発表が本格化する。自動車など製造業の23年3月期は、半導体不足や資材価格の高騰が売上高や利益の圧迫要因となってきた。24年3月期はこれらの解消による「挽回」が期待される。また、中国ではコロナ禍からの経済再開が本格化している。22年度は中国依存度の高いFA(ファクトリーオートメーション)関連は苦戦したが、米国の対中規制もあり、中国は自前での生産を急ぐ必要がある。23年度のFA関連は業績の「回復」期待が強い。
また、「挽回」ではトヨタ自動車 <7203> [東証P]、SUBARU <7270> [東証P]、マツダ <7261> [東証P]の完成車メーカーのほか、デンソー <6902> [東証P]、アイシン <7259> [東証P]、ユニプレス <5949> [東証P]などの部品メーカーにも注目したい。
「回復」のFA関連では、ロボット制御技術の安川電機 <6506> [東証P]、NC(数値制御)世界首位のファナック <6954> [東証P]、空圧機器のSMC <6273> [東証P]、センサーのキーエンス <6861> [東証P]などの決算が注目される。
IPO(新規公開)ラッシュが4月末まで続く。4月の大型案件では12日のトライアルホールディングス <5882> [東証G]への関心が高い。九州発の流通・小売事業者で、23年6月期に連結売上高6658億円(前期比11.4%増)、営業利益128億円(同7.0%増)を見込んでいる。レジ付きショッピングカートを導入し、経営効率の高さも評価ポイント。また、4日上場の電子マネーを中心としたキャッシュレス決済サービスを展開するトランザクション・メディア・ネットワークス <5258> [東証G]、12日上場で月への物資輸送サービスを始めとした月面開発事業を手掛けるispace <9348> [東証G]への注目度も高いようだ。
(3月30日 記/次回は4月30日配信予定)
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