攻めるは守るなり、有力投資テーマで反撃開始の「最強ストック6選」 <株探トップ特集>
―全方位型で有望6テーマを選出、4月相場で勝つための強い銘柄群をエントリー―
週末7日の東京市場は日経平均株価が3日ぶりに反発、2万7500円台で取引を終えた。それまでの直近2営業日で800円以上の下落をみせていたのに対し、この日の上げ幅はわずか45円にとどまり、自律反発というにもはばかられるリバウンドではあったが、2万7000円台前半は売り飽き気分も観測された。3月の米雇用統計発表を前に、週末の欧州主要国株市場や米国株市場が休場ということもあり、このタイミングで買いポジションを増やすのは難しいタイミングでもあった。
●強気で臨み果実を得る4月相場
しかし、4月は日本株市場にとって決して相性の悪い月ではない。特に外国人投資家は過去10年間を振り返って月間ベースで実に9回買い越している。日本企業は業績面からのアプローチでも再評価余地がある銘柄が多く存在している。攻めるは守るなりという格言もある。足もとの軟調地合いに惑わされることなく、ここは強い銘柄にしっかりと狙いを定めていきたい。
ただし、ここマーケットを賑わしたテーマ買いの動きについては、今週は全体指数の急落もあって資金の流れが止まっている。株は安い時に買って高いところで売るというのが基本戦略であるとすればここはチャンスとなるのだが、一つのテーマに決め打ちでは臨みにくい。今回のトップ特集では、全方位的な視点に立って有力視される投資テーマを6つ選択し、それぞれのテーマにおいて、株価上昇が期待できる有望株をピンポイントで選出した。
●この6テーマ6銘柄に要注目
その1・【次世代パワー半導体】
次世代パワー半導体は世界的な脱炭素シフトと密接な関係がある。パワー半導体 は半導体のなかでもデータを扱うメモリーなどと異なり、電子機器へ電力を供給したり制御したりする役割を担うデバイスで、産業用電源や電気自動車(EV)向けで高水準の需要がある。中長期的に市場は拡大の一途をたどることが必至だ。パワー半導体のメーカーは三菱電機 <6503> [東証P]や富士電機 <6504> [東証P]など重電大手をはじめ、日本企業が世界的にも売上高シェア上位を占めるなど優位性を発揮している。そのなか、現在使われているシリコンを材料とするものからSiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)、更に酸化ガリウムを素材として利用した次世代パワー半導体が注目されている。
◎タムラ製作所 <6768> [東証P]~電磁誘導により電気エネルギーを伝達するトランスの製造大手で、はんだ材料や導電性材料などの電子化学材料も製造する。売上高の6割以上を海外で占めるが、生産も7割を海外で行っている。同社のカーブアウトベンチャーであるノベルクリスタルテクノロジーは次世代製品として注目される酸化ガリウム製パワー半導体の開発を鋭意進めている。これが社会実装されれば、中耐圧から高耐圧領域のパワーデバイス市場において省エネルギー化で飛躍的な貢献が期待できるだけに、今後も目が離せない。業績面では、市場に連動させた販売価格の浸透や生産設備の自動化、物流合理化などの効果発現により、期初の会社側想定を上回って推移。23年3月期は営業利益段階で従来計画の30億円から45億円(前の期比2.9倍)に大幅増額修正した。更に24年3月期も大幅な利益成長が続きそうで、18年3月期以来となる過去最高更新も視野に入る。株価は年初来高値近辺に位置するが、早晩昨年11月下旬につけた高値908円を通過点に21年6月以来となる4ケタ大台を目指す展開へ。
その2・【対話型AI】
米オープンAIの開発した「ChatGPT(チャットGPT)」は、これまでの対話型人工知能(AI)に対する世間の認識を大きく変えた。特に直近、同社が投入した第4世代の「GPT-4」は、専門的・学術的分野において人間を凌ぐレベルにまで進化を果たしており、大きな話題となった。あまりのレベルアップの早さに、起業家のイーロン・マスク氏などをはじめ一部でAIの開発中断を呼びかける動きが出るなど世界を揺るがせたが、AIの進化に歯止めが掛かることはないとの見方が強い。早晩、自然言語や画像分野で生成AIを中心に歴史の舞台が大きく回る可能性がある。また、株式市場においてAI関連という括りで投資対象となる銘柄の裾野は広く、今後そのテーマ性が色褪せることもない。
◎AI CROSS <4476> [東証G]~SMSや企業向けコミュニケーションツールを提供するほか、AI解析サービスの開発・提供も行う。社名にある通りAIテクノロジーの積極的な導入を経営戦略に掲げており、ホワイトカラー業務のAI代替が進むなか、同社のビジネスチャンス拡大が予想される。既に昨年、日立製作所 <6501> [東証P]が推進するDX事業「ルマーダ」のアライアンスプログラムに参画することを発表しており、大手との連携を契機に同社の技術が脚光を浴びる可能性がある。メッセージング事業への特化により収益性を高め、23年12月期は売上高が前期比10%増の36億5000万円、営業利益は同12%増の2億5000万円を見込んでいる。株価は3月24日に1424円の年初来高値をつけた後に軟化しているが、25日移動平均線との上方カイ離が解消された時価1200円台は買い場となっている公算大。上場してまだ3年半の企業だが、19年12月に2728円の最高値を形成、20年10月にもほぼツラ合わせの2727円の高値をつけている。
その3・【インバウンド】
新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした入国規制が大幅に緩和されたことで、3月以降、訪日外国人観光客の増勢が顕著だ。今月5日には中国からの入国者に対する水際対策も緩和され、国内の小売り業界などが免税対応店舗を急速に増やすなどの動きが相次いでいる。世界的にインフレが進行するなか、日本は物価の安さが際立っており、高めの商品価格設定でも訪日客の消費需要に影響が及びにくいという面もある。また、小売りだけでなく旅行やホテル業界、レジャー業界なども色めき立っており、株式市場でも今年前半の有力投資テーマとしてインバウンド 関連は外せない状況にある。
◎エアトリ <6191> [東証P]~ネット販売に特化した旅行会社で航空券予約サイトを運営している。新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした逆風環境から離脱し、足もとでは訪日外国人観光客急増によるインバウンド需要の復活が強力な追い風に変わっている。また、政府の中国からの入国者に対する水際規制緩和は一段のプラス材料となる。提携戦略にも積極的で新興航空会社のスターフライヤー <9206> [東証S]とは地方路線集客で協業体制にある。業績は足もと会社側の想定を上回って好調に推移しており、23年9月期は売上高を期初見通しの170億円から190億円(前期比40%増)に上方修正、営業利益は10億円から16億円(同29%減)に増額した。ただ、市場では売上高、利益ともに保守的との見方が強く、一段の上振れが有力視されている。株式需給面では信用買い残がひと頃と比べ大幅に減少しており、上値の軽さが意識されやすい。株価は2400~2700円のボックス圏往来が続いているが、早晩ここを離脱して昨年9月下旬以来となる3000円大台を目指す展開に。
その4・【子育て支援】
日本では少子化問題がクローズアップされており、これを食い止めることが政治の重要テーマとなっている。結婚して子どもを持つというかつての価値観に変容が見られ、現実問題として子育てにかかる経済的な負担も、若い世代に重荷となっている状況だ。少子化に伴い人口が減少傾向をたどることは、国家の経済成長を止める背景ともなり得る。そうしたなか、岸田政権では子ども予算を倍増させる方向で検討を進めており、具体的には児童手当の所得制限の撤廃などが俎上に載っている。また、出産費用の支援に加えて、将来の公的医療保険適用なども検討項目に掲げる。保育や医療、教育産業にとって追い風は強く、株式市場でも関連銘柄への注目度が高まっている。
◎テノ.ホールディングス <7037> [東証P]~保育関連ビジネスを幅広く展開しており、公的保育事業を主軸に、企業内・学童保育などの受託保育や人材派遣など家庭総合サービスを手掛ける。今後も事業ドメインとしている「女性のライフステージ支援」を中心に新サービス開発にも傾注する構えをみせている。このほかM&A戦略にも積極的で、相次ぐ買収により少額保険や料理教室運営などの新規事業にも展開し業容を広げている。今月1日付で傘下に置く100%子会社2社の合併を完了、販管費などコスト面で合理化効果が発現する見通しだ。トップラインは過去最高更新を続けており、23年12月期は前期比25%増の151億7000万円を見込む。また、営業利益は同2.1倍の3億2000万円予想と回復色を鮮明とする。株価は年初から2月にかけて上げ下げを繰り返しながらも強力な上昇トレンドを構築、上ヒゲながら2月3日に1268円の年初来高値を形成しその後は調整局面に移行したが、時価近辺は75日移動平均線をサポートラインに買い場が接近している。
その5・【超高齢化対応】
少子化と表裏一体で日本の課題となっているのが、超高齢化社会とどう向き合っていくかである。今から2年後の2025年には、人口に占める比率が最も多い団塊の世代の全員が75歳以上、つまり後期高齢者となる。長寿化とともに重視されるのが健康寿命だが、実際のところ年齢が高くなるにつれ病気を持つ人が多くなるのは避けられない。認知症やパーキンソン病などの難病を抱えて生活していくうえで、そのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を考慮した医療やヘルスケアはなくてはならない。同分野は紛れもなくこれからの日本にとって成長産業といえ、株式市場でも脚光を浴びそうだ。
◎サンウェルズ <9229> [東証G]~昨年6月下旬に東証グロース市場に上場したニューフェースで、パーキンソン病専門の有料老人ホーム「PDハウス」を中心に介護サービス事業を展開する。PDハウスは脳神経内科病院と連携し、専門的治療を継続的に受けることができるほか、入居者各人の状態に応じたリハビリプログラムを用意、更に看護師が24時間対応で服薬管理などのサポートを行う。旺盛な需要を背景に、既存施設の稼働率が向上していることに加え、新規開設に伴う業容拡大効果が収益を押し上げている。業績は19年3月期以降、目を見張る伸びを続けているが、23年3月期は成長加速局面に突入し、売上高が129億9000万円(前の期比54%増)、営業利益が13億2000万円(同2.7倍)と大幅増収増益を見込む。更に24年3月期は新規開設によるスケールメリットと値上げ効果が寄与して、一段と変貌する公算が大きい。株価は2月9日に上場後の高値である3053円(分割修正後株価)をつけた後一服していたが、直近大きく上値を伸ばし最高値圏に浮上している。
その6・【宇宙ビジネス】
国産ロケット「H3」の打ち上げ失敗は残念な結果ではあったが、日本が航空宇宙における技術力で世界に劣るということはなく、今後の巻き返しが期待されるところ。人工衛星や惑星探査機の開発、衛星データ活用といった分野ではこれまでに存分に実力を発揮している。米国では民間宇宙ベンチャーのスペースXにスポットライトが当たっているほか、中国でも「天宮計画」として宇宙ステーション運用を行っている。そうしたなか、日本では来週12日に初の宇宙関連ベンチャーであるispace <9348> [東証G]が東証グロース市場に新規上場することで、改めて「宇宙ビジネス」が投資テーマとして耳目を集めそうだ。
◎キヤノン電子 <7739> [東証P]~レーザービームプリンターやスキャナーの受託生産を行うが、過半の同社株式を保有する親会社のキヤノン <7751> [東証P]向け中心に好調な需要を捉え、業績は大幅増収増益トレンドにある。注目ポイントは超小型人工衛星の開発・製造に注力していることで、強みとする光学技術を生かし、世界最高レベルの解像度での撮影を可能としている。宇宙関連ビジネスの市場拡大を牽引する存在として、マーケットでも存在感を高めていくことが予想される。21年12月期以降、売上高・営業利益ともに2ケタ成長路線に突入、23年12月期営業利益は前期比12%増の89億7500万円を予想する。時価予想PER10倍台でPBR0.6倍台は株価指標面からも割安感が強い。今月4日に1880円の年初来高値を形成した後に調整を入れ、25日移動平均線近辺で売り買いを交錯させているが、ここは本格上昇に向けた踊り場となっている可能性が高い。信用買い残も直近データで7万株程度と枯れた状態にあり、株式需給面でも上値は軽い。
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