馬渕治好氏【33年ぶり高値の日経平均、上げ潮相場どこまで?】(2) <相場観特集>
―バブル後最高値で意気揚がる一方、高値警戒ムードも―
週明け22日の東京株式市場は日経平均株価が朝方安く始まったものの、その後は下値抵抗力を発揮して上昇に転じた。日経平均は前週までの7営業日で、1600円以上も水準を切り上げていたことで、目先スピード警戒感も拭えない。ところが、前週末の米国株市場でNYダウ、ナスダック総合株価指数いずれも軟調だったにもかかわらず、東京市場の買いニーズの強さは際立っている。このまま、33年ぶりの高値圏を突き進むのか、それとも反動局面がくるのか。経験豊富でマーケットの読み筋に定評のあるベテラン市場関係者2人に今後の展望を聞いた。
●「目先の天井接近で3万円割れも視野に」
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
全般は強気優勢の地合いながら、前週の日経平均の急上昇は行き過ぎに買われている感は否めない。今の相場環境のプラス面が複数ピックアップされているが、株価動向を見てからのポジティブ解釈で必ずしも鵜呑みにはできない。
例えば、日銀の植田総裁がハト派的な政策スタンスを印象づけていることは確かだが、低金利環境が継続することへの期待が株高の背景となっているという見方についてはどうか。低金利環境はこれまでの延長に過ぎず、低金利を改めて日本株買いの材料に掲げるのは妥当性に乏しい。また、バフェット効果についても、著名投資家とはいえバフェット氏のひと言で、同じプロである海外機関投資家が投資手法を右に倣えとするかには疑問がある。
更に東証の低PBR改善要請が、海外投資家の琴線に触れたという説については、ファンド筋の意見を聞くと「(当該企業が)東証に言われて経営改善が進むというのは思惑先行に過ぎず、もし言われてすぐにできることなら既にやっているはず」という意見も聞かれる。足もとで進む円安による輸出企業の業績面への追い風も、輸出採算の改善が収益拡大に直結すると考えるのは早計だ。今月18日に発表された4月の貿易統計では日本の輸出数量指数は前年同月比6.2%減少しており、これは7ヵ月連続の減少となる。グローバル景気が減速傾向を強めるなかで、数量ベースでの減少が続けばたとえ円安であっても企業の収益拡大は期待しにくい。
このように日本株優位論は株高局面ではそれらしく聞こえるが、本質よりも行き過ぎた解釈となっている可能性がある。早晩モメンタム相場も一巡し、向こう1ヵ月でみた日経平均のレンジは上値が3万1000円程度とみており、それに対して下値余地は大きいといえそうだ。今後の1ヵ月間では、3万円台割れから2万9000円近辺へ下落し、更に夏場にかけては一段の深押しも想定される。ただし、年末にかけて全体相場は再び浮上する展開を見込んでおり、夏場に深押しがあれば、そこは買い場提供場面と考えている。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
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