株高追い風に6月IPO発進へ、AI関連など目立ち物色人気は沸き立つか <株探トップ特集>

特集
2023年6月6日 19時30分

―今年最高となる18社が登場、小型銘柄多く初値の飛ぶ展開に期待感が膨らむ―

6月の新規株式公開(IPO)が13日から始まる。5月の小休止を経て、約1ヵ月半ぶりのIPO再開となるが、6月は18社が登場と今年最高の上場企業数となる。時流に乗る人工知能(AI)に関連する銘柄などが目立ち、初値が飛ぶ展開も期待される。株高が続く東京市場の勢いに乗る格好で、6月IPOの人気は沸き立つか。

●3月上回る上場企業数に、DX関連銘柄など多数登場

6月IPOには18社が登場する。昨年6月の12社から6社の増加となる。また、例年年度末でIPOラッシュとなる3月の15社も上回り、今年最高数のIPOが登場する。その内訳は、東京証券取引所のグロース市場が12社、同スタンダード市場が4社、名古屋証券取引所のネクスト市場が1社、札幌証券取引所の本則市場が1社といった内容だ。東証プライム市場に直接上場するような大型IPOはなく、比較的小粒な企業が目立つ。

特に、6月下旬から上場ラッシュとなり27日と30日には1日に3社が同時上場する。業態的にはAIやデジタルトランスフォーメーション(DX)関連のほか、不動産関連バイオ関連銘柄などが目立つ。

●IPO人気次第で中小型見直しの契機にも

足もとで日経平均株価は、33年ぶりとなる3万2000円台まで値を上げ活況に沸く。この6月IPOラッシュも上昇相場を背景にしたものとみられる。しかし、中小型株の値動きを示す東証マザーズ指数は年初から小幅高にとどまる。この要因としては「買いの主体である海外投資家は、時価総額の小さい中小型株を素通りしているため」(アナリスト)と推測されている。ただ、その中小型株にもここ見直し機運が出ている。今後に関しても「全体相場が活況に沸くなか、新鮮味のあるIPO銘柄にも物色の矛先は向かうだろう」(同)と予想されており、状況次第では6月IPO人気が中小型株見直しのきっかけになることも期待されている。

●トップバッター「ABEJA」に期待、Globeeは堅調展開か

そんな6月IPOのトップバッターとなるのが13日に上場するABEJA <5574> [東証G]だ。同社はAIを活用した企業のDXを支援するデジタルプラットフォーム事業の運営を手掛ける。資金吸収額は20億円台だが「AI関連株として人気化するのでは」(市場関係者)との声が出ている。アルファベット<GOOG>傘下のグーグルの出資を受けたことでも注目を集めている。

14日にはAIを活用した英語教材「abceed」などを手掛けるGlobee <5575> [東証G]が登場する。英語学習銘柄には目新しさはないが、資金吸収額は10億円強で、株価は底堅い展開が見込まれている。

●アイデミーやARアドバンなど人気展開も

19~23日の週では22日に登場するアイデミー <5577> [東証G]と23日のARアドバンストテクノロジ <5578> [東証G]などが値の飛ぶ展開が期待されている。アイデミーは、デジタル人材の育成支援を行うオンラインDXラーニングの提供などを手掛ける。仮条件から弾いた資金吸収額は5億円前後、時価総額も40億円前後の見込みだ。ARアドバンはクラウド技術とデータ・AI活用によるDXソリューション事業を展開。アマゾン<AMZN>やマイクロソフト<MSFT>などのクラウドネイティブ技術を活用したシステムインテグレーションやプロダクトの開発・販売などを行っている。同社の資金吸収額は10億円前後の見込みだ。

一方、21日のシーユーシー <9158> [東証G]は医療機関支援事業や在宅ホスピス事業などを手掛けている。同社の場合、資金吸収額は140億円前後の見込みと大きいことが警戒されているが、高齢化などの追い風に乗っており、セカンダリー市場での展開も注目されている。

●「東京ガールズコレクション」のWTOKYOなども

26~30日の週では26日のブリッジコンサルティンググループ <9225> [東証G]と29日のW TOKYO <9159> [東証G]、30日のジーデップ・アドバンス <5885> [東証S]などが注目されている。ブリッジGは公認会計士に特化したワーキングプラットフォーム「会計士.job」を運営。同プラットフォームを通じたプロシェアリングでは、IPO支援などが高い実績を持っている。資金吸収額は3億円前後、時価総額も20億円台と小さく値が飛ぶ展開が期待される。

WTOKYOはファッションイベント「東京ガールズコレクション」のブランドを活用したブランディング・コンテンツプロデュース事業を展開。知名度の高いイベントを展開しており、個人投資家などの注目度も高いとみられている。同社の資金吸収額は14億円前後の見込み。

ジーデップAは、AIやビッグデータなどを扱う研究者や開発者に対して最先端のサーバーなどハードウェアを提供。特にエヌビディア<NVDA>と強い関係を持ち、同社製品の占める比率が高い点が注目されている。資金吸収額は19億円前後の見込みだ。

加えて、22日のリアルゲイト <5532> [東証G]と27日のエリッツホールディングス <5533> [東証S]は不動産関連企業、27日のクオリプス <4894> [東証G]と28日のノイルイミューン・バイオテック <4893> [東証G]はバイオ関連企業だ。30日に上場するブライダル大手のノバレーゼ <9160> [東証S]は2016年に上場廃止して以来の再上場となる。同じく30日上場のクラダシ <5884> [東証G]は、食品廃棄削減を目指すソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」を運営。SDGs(持続可能な開発目標)関連企業だが、前期に続き今期も業績は赤字見通しだ。

■6月IPO 一覧

上場日 コード・上場市場 企業名(主幹事)

6月13日 5574・東G ABEJA(野村)

14日 5575・東G Globee(大和)

21日 9158・東G シーユーシー(三菱UFJモルガン・スタンレー)

21日 5576・東S オービーシステム(SMBC日興)

22日 5577・東G アイデミー(みずほ)

22日 5532・東G リアルゲイト(大和)

23日 5578・東G ARアドバンストテクノロジ(みずほ)

26日 9225・東G ブリッジコンサルティンググループ(SBI)

26日 7075・名N QLSホールディングス(Jトラストグローバル)

27日 5533・東S エリッツホールディングス(みずほ)

27日 4894・東G クオリプス(野村)

27日 5579・札H GSI(岡三)

28日 5580・東G プロディライト(野村)

28日 4893・東G ノイルイミューン・バイオテック(SMBC日興)

29日 9159・東G W TOKYO(野村)

30日 9160・東S ノバレーゼ(野村)

30日 5885・東S ジーデップ・アドバンス(みずほ)

30日 5884・東G クラダシ(大和)

(注)東Sは東証スタンダード、東Gは東証グロース、名Nは名証ネクスト、札Hは札証本則

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