笹木和弘氏【中銀ウィークで要注意!? 6月後半相場を読む】(2) <相場観特集>

特集
2023年6月12日 19時45分

―下値切り上げ波動継続の日経平均、SQ通過後の相場は?―

12日の東京株式市場は目先筋の利益確定売りをこなし日経平均株価は続伸した。前週末にメジャーSQ算出後に買いが加速、600円を超える上昇をみせたが、きょうもその余韻冷めやらぬなか強調展開を維持した。ただ、今週は日米欧の中銀の政策金利発表を控えていることで、足もとはやや買い手控え感も浮上している。6月後半から7月初旬にかけての相場展望について、第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。

●「東京市場は『期待先行』から徐々に『現実意識』の局面も」

笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)

東京株式市場の上昇を演出した海外投資家の買い要因には次の3つのポイントがあるとみている。第1に東証がPBR1倍割れの是正を要請したこと、第2に米中摩擦を背景にしたサプライチェーンの再構築に絡み、半導体を中心に日本への直接投資の流れが強まったこと、第3に賃金上昇と物価上昇の好循環に向けた期待が高まったことだ。「失われた30年」に今度こそけりをつけるという期待が膨らんだことが大きいと思う。

ただ、期待は大分織り込まれており、これからは徐々に現実を意識する局面に入っていくことが考えられる。賃金に関しては、4月の毎月勤労統計調査では実質賃金は上昇せずマイナスとなった。また、テスラ<TSLA>のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)やJPモルガン<JPM>のジェイミー・ダイモンCEOは変わらずに中国詣でを続けており、親中国の動きが出始めた。国会が会期末を迎える21日に向け解散・総選挙があるかが注目されるが、すでに期待を織り込んでおり、総選挙があっても相場にはあまり影響はないかもしれない。

たとえ目先、相場がピークをつけたとしても、その後どんどんと下がっていくわけではないだろう。2021年の相場も2月に高値をつけ調整した後に9月にかけ再上昇した。比較的早く高値を取り戻す可能性もある。米国では、米短期国債大量発行に伴い、大型ハイテク株上昇の流れに変化が出る余地があり、物色の矛先は今後、バリュー株にシフトすることもあり得る。

こうしたなか、今後1ヵ月程度の日経平均株価のレンジは下値3万500円、上値3万3500円前後を見込んでいる。個別銘柄では、エルニーニョ発生に絡む異常気象関連でダイキン工業 <6367> [東証P]や冬場に向けて欧州向けヒートポンプ式温水給湯暖房機などに絡むパナソニック ホールディングス <6752> [東証P]など。それに再生可能エネルギーに絡みペロブスカイト太陽電池でK&Oエナジーグループ <1663> [東証P]、水素関連でトクヤマ <4043> [東証P]などに注目している。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(ささき・かずひろ)

証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家の傍ら投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・香港・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。

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