国内金は最高値更新も、円安一服で急落 <コモディティ特集>

特集
2023年7月19日 13時30分

国内金は円安進行を受けて上値を伸ばし、現物(店頭小売価格、税込)が9886円、先物(JPX金先限)が8962円とともに最高値を更新した。6月の日銀金融政策決定会合で金融緩和の継続が決まり、円相場は昨年11月以来となる1ドル=145円台前半まで円安に振れた。ただ、当局者の円安牽制発言が目立つなか、米10年債利回りが4%台を回復すると、介入警戒感が高まって円が買い戻され、国内金は急落した。また、6月の米消費者物価指数(CPI)でインフレの伸びが鈍化し、今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げは最後との見方が強まったことも、円を買い戻す要因となった。さらに国内の長期金利が上昇すると、日銀の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール:YCC)修正の見方も台頭し、円相場が137円台前半まで円高に振れ、金先物は5月8日以来の安値8661円を付けている。

来週の日銀金融政策決定会合では「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)が発表されるが、物価見通しがポイントとなる。ただ、インフレが継続する条件として来年も賃上げが続くかが指摘されているほか、YCC修正があったとしても、金融政策の正常化が始まるのは来年以降とみられる。米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀金融政策決定会合の決定が、円高転換につながるかどうかが当面の焦点である。

●現物相場は米利上げ停止見通しが下支えに

金現物相場は7月、米消費者物価指数(CPI)や米生産者物価指数(PPI)でインフレの伸びが鈍化し、為替がドル安に振れたことを受けて、地合いを引き締めた。各国中銀の利上げ見通しを受けて現物相場は一時1900ドルの節目を割り込んだが、米個人消費支出(PCE)デフレータでインフレの伸びが鈍化すると、買い戻されて下げ一服となった。

CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFedウォッチでは、今月のFOMCでの0.25%ポイント利上げをほぼ織り込んでいるが、その後は年末までフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準を5.25~5.50%に据え置くと見込まれている。ただ、米金融当局者からは年内あと2回の利上げが必要との発言もなされており、来週のFOMCで今後の金利見通しがどうなるかを見極めたい。

一方、中国の景気回復の遅れに対する懸念は、金の上値を抑える要因となる。中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)の低下や輸出減少を受けて景気減速懸念が高まっている。また、第2四半期の中国の国内総生産(GDP)は前期比0.8%増と事前予想の0.5%を上回ったものの、第1四半期の2.2%増から大幅に鈍化した。中国の景気減速懸念を背景に、金相場は戻り場面で実需筋の買いが見送られる可能性がある。一方で、景気刺激策に対する期待感も出ており、中国政府の発表を確認したい。

●金ETFから資金流出も、ファンド筋の買い越しが拡大

世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、7月17日に912.93トン(5月末939.56トン)に減少し、3月10日以来の低水準となった。3月にシリコンバレーバンクが経営破綻。金融不安が高まり金ETFに逃避買いが入ったが、地銀の破綻が一服したことを受けて手仕舞い売りが出た。

また、商業用不動産セクターのリスクが表面化する可能性もあったが、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が問題が発生しても影響は限定的としたことも、投資資金が流出する要因となった。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは5月9日の19万5814枚をピークに手仕舞い売りが進み、6月27日には15万1910枚まで縮小した。ただ、その後は下げ一服となるなか、新規買いが新規売りを上回り、7月11日時点で16万5754枚に拡大している。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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