明日の株式相場に向けて=来週はリスクイベント満載

市況
2023年8月17日 17時00分

きょう(17日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比140円安の3万1626円と続落。前日に470円強の下落をみせたが、きょうも雪崩のごとき下げで、前日から買い向かった個人投資家は動揺を余儀なくされたかもしれない。しかし、不思議なことに前場の午前10時半あたりから波が引くように売り物が途切れた。おおよそ中国株と香港株の取引が始まった時間帯で潮の流れが変わった。

難しい地合いである。前日ときょうの手口は似通っていて、個人投資家は絶好の押し目買いチャンス到来という見方で買い向かう一方、海外投資家は粛々と買いポジションを低めている。つまり、外国人売りの受け皿が個人という構図が浮かび上がる。だが、かといって相場がここから急落する可能性が高いかというと、そうともいえない。

中国景気の減速がクローズアップされているが、足もとの不動産バブル崩壊は中国政府が確信犯的に主導したものだ。長い目でみれば、かつて総量規制に端を発した日本のバブル崩壊の道筋と軌を一にする可能性は否定できないが、少なくとも短期的には当局にとって眼前に広がるのは想定通りの景色には違いない。不動産最大手の碧桂園控股(カントリーガーデン)や緑地控股集団(グリーンランド)のデフォルトリスクなどが喧(かまびす)しく取り沙汰されているが、その内容には売り方の煽りがある程度は含まれている。

きょうの東京市場は前場に日経平均が450円以上下落する場面もあったが、その後は下げ渋り、後場寄りに先物に引っ張られて下げ幅を急速に縮めた。市場筋によると「先物買いの背景は中国・上海株と香港株が急速に戻り足となったことを受け、空売り筋の買い戻しが反映されたもの」(ネット証券マーケットアナリスト)という。売り方にすれば中国政府が打ち出す経済対策を警戒している。不動産バブルは潰しても実勢経済への影響はできる限り軽微に収めたいというのが当局の意図するところで、機動的かつピンポイントに財政と金融両面からの刺激策を念頭に置いている。発動のタイミングは確定できないが、その際、上海総合指数や香港ハンセン指数の値動きは、ニュースヘッドラインよりも早く分かりやすいバロメーターとなる。しかし、ともすればこの日の後場のように水鳥の羽音に驚いて売りポジションを解消する、というようなケースにも陥りやすい。

来週はイベントスケジュール面で難所を迎える。週明け21日に中国で最優遇貸出金利が公表されるが、ここで同金利は下がる可能性が高い。下げ幅によっても状況は変わりそうだが、15日に引き下げられた市中銀行向け1年物金利の0.15%引き下げは「小出しでインパクトが薄い」(同)という指摘もあっただけにマーケットの注目度は高まりそうだ。また、22日にはブリックス首脳会議が24日までの日程で開催される。南アフリカが議長国だが、これがまたキナ臭い。プーチン露大統領の動向にも関心が集まるが、同会議では新興国経済圏で金本位制の新通貨発足に絡む思惑などが、一部の市場関係者の間で話題となっている。足もとで進む円安と因果関係があるのかどうかも含めて関心が集まる。

そして23日には米画像処理半導体大手エヌビディア<NVDA>の23年5~7月期決算が発表される。ちなみに同社が5月24日引け後に発表した2~4月期決算はその内容と次期見通しが好感され、翌日の米株市場で24%あまりの急騰をみせた。これは東京市場にも大きなインパクトをもたらし、アドバンテスト<6857>を筆頭に半導体関連株が軒並み値を飛ばしたことは記憶に新しい。果たして今回はどうなるのか。買い方にとっては希望の光には違いないが、首尾よく事が運ぶかどうかは神のみぞ知るである。更に24日にはジャクソンホール会議が26日までの日程で開催される。ここでパウエルFRB議長が中立金利の見直しに言及(自然利子率に言及)するとの思惑が、市場関係者の間で警戒材料のひとつとして挙げられている。これは端的に言えば長期金利の高止まりを誘導し、株式市場にはネガティブに作用するという見方である。

あすのスケジュールでは、7月の全国消費者物価指数(CPI)にマーケットの関心が高い。また、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札が予定されている。海外では7月の英小売売上高が開示される。このほか、バイデン米大統領、岸田総理大臣、ユン・ソンニョル韓国大統領による日米韓首脳会談がワシントン郊外のキャンプ・デービッドで行われる予定にあり注目される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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