再資源化で富を創出、脱炭素の神髄「サーキュラーエコノミー」関連急浮上 <株探トップ特集>

特集
2023年9月20日 19時30分

―新時代への適応で欠かせないキーワード、循環経済実現に向け連携組織立ち上げへ―

経済産業省は12日、循環経済(サーキュラーエコノミー)に関する産官学のパートナーシップに参画する会員の募集を開始すると発表した。これは、サーキュラーエコノミーに野心的・先駆的に取り組む国、自治体、大学、企業・業界団体、関係機関・関係団体などを構成員とする連携組織を立ち上げ、関係主体の有機的な連携を通じてサーキュラーエコノミーの実現に必要な施策の検討をオールジャパン体制で行うための基盤となるもの。サーキュラーエコノミーは廃棄物などの無駄を富に変える循環型の経済モデルであることから、世界が目指す脱炭素社会やSDGs(持続可能な開発目標)の実現に関連するキーワードとして注目を集めそうだ。

●資源循環で自然への負荷を低減

サーキュラーエコノミーとは、従来の3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取り組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化などを通じて付加価値を生み出す経済活動のこと。これまで廃棄されていた原材料や製品などを「資源」として捉え、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑制などを目指すものだ。

大量生産・大量消費型の経済社会活動は、大量廃棄型の社会を形成し、健全な物質循環を阻害するほか、気候変動問題、天然資源の枯渇、大規模な資源採取による生物多様性の破壊などさまざまな環境問題にも密接に関係している。また、世界的な資源需要や地政学的なリスクの高まりも憂慮すべき事態で、資源の効率的・循環的な利用と付加価値の最大化を図るサーキュラーエコノミーへの移行が喫緊の課題となっている。

既にブリヂストン <5108> [東証P]が2050年以降を見据えた環境長期目標で製品原材料の「100%サステナブルマテリアル化」を掲げ、ファーストリテイリング <9983> [東証P]が不要になったユニクロの服を回収してリユースとして活用する循環型プロジェクト「RE.UNIQLO」を推進するなど、サーキュラーエコノミーの実現に向けた自主的な動きがみられているが、企業ごとの取り組みだけでは経済合理性を確保することは難しい。

同パートナーシップでは、日本全体のサーキュラーエコノミーの実現に向けたビジョンや中長期ロードマップの策定を目指すとしているほか、循環に必要となる製品・素材の情報や循環実態の可視化を進めるため、25年をメドにデータの流通を促す「サーキュラーエコノミー情報流通プラットフォーム」を立ち上げる計画。加えて、地域の経済圏の特徴に応じた「地域循環モデル(循環経済産業の立地や広域的な資源の循環ネットワークの構築など)」を構築するとしており、関連銘柄をマークしておきたい。

●重要な役割担うリサイクル業者

資源の循環を前提とする経済構造への移行が進められるなか、重要な役割を担うのが リサイクル業者で、解体・輸送・リサイクルという一貫した資源循環サービスを提供するイボキン <5699> [東証S]、収集運搬から最終処分までを請け負う一貫処理体制を構築しているミダックホールディングス <6564> [東証P]、水平循環型リサイクルを実現した再生素材「リファインパウダー」などを販売するリファインバースグループ <7375> [東証G]、 廃棄物処理・再資源化事業や資源リサイクル事業を展開するTREホールディングス <9247> [東証P]、産業廃棄物の収集や運搬など処理事業の周辺業務を行うダイセキ <9793> [東証P]など。

このほか、大手が手掛けていないような扱いにくい廃棄物や極微量の含有物から貴金属を回収する三和油化工業 <4125> [東証S]、使用済みのアルミニウムを溶解してアルミニウム二次合金地金を製造する大紀アルミニウム工業所 <5702> [東証P]、独自の溶媒抽出法によって低品位スクラップからでも有価金属を回収するアサカ理研 <5724> [東証S]、貴金属リサイクルと廃棄物処理が2本柱のAREホールディングス <5857> [東証P]、貴金属などの資源リサイクルで循環型社会に貢献する松田産業 <7456> [東証P]、鉱山で産出されたイリジウムパウダーを溶解・加工し製品化する技術とリサイクルを中心とした高純度化技術を持つフルヤ金属 <7826> [東証S]などのビジネス機会も広がりそうだ。

●アミタHD、エンビプロにも注目

また、直近では蝶理 <8014> [東証P]が14日、繊維の循環型スキーム「B-LOOP(ビーループ)」を本格的に始動したと発表。繊維製品の製造工程で発生した廃棄繊維や古着など、これまで捨てられてきた繊維を新しい繊維に生まれ変わらせ、新しい価値を持たせるという。

マクニカホールディングス <3132> [東証P]傘下のマクニカは12日、「廃棄物の乾燥減量装置メルトキング」の改良に関わる研究開発プロジェクトをダイソー(神奈川県相模原市)とともに10月からスタートすると発表した。メルトキングは、廃棄物を高温で間接加熱し攪拌しながら乾燥させることにより、滅菌・減量をする装置で、廃棄物の容量を5分の1から50分の1まで減らすことが可能になるとしている。

三菱総合研究所 <3636> [東証P]は8月、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期課題「サーキュラーエコノミーシステムの構築」の研究推進法人である環境再生保全機構から研究開発機関の一つに選定されたと発表。研究開発プロジェクト「再生プラスチックのマッチングツールの開発及び活用実証」を実施し、プラスチックの循環経済実現に向けた検討を推進する構えだ。

アミタホールディングス <2195> [東証G]と東レ <3402> [東証P]は8月、「サーキュラーエコノミーシステムの構築」の研究開発テーマである「自治体協力回収プラスチックの分別・供給システムの確立」に採択され、共同研究を実施することを明らかにした。マテリアルリサイクル率や高品質な再生プラスチックの供給量を向上させるサーキュラーモデルの構築を目指すという。

エンビプロ・ホールディングス <5698> [東証P]は7月、三井住友トラスト・ホールディングス <8309> [東証P]傘下の三井住友信託銀行とサーキュラーエコノミー社会構築を目的とした連携協定を締結したと発表している。これにより、エンビプロが持つサーキュラーモデル構築の実績やノウハウと、三井住友信託銀行が持つ顧客基盤など互いの強みを生かし、地域や顧客のサーキュラーエコノミーへの移行を支援するとしている。

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