明日の株式相場に向けて=ハイボラ相場で我が道を行く好実態株
きょう(7日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比436円安の3万2271円と5日ぶりに大幅反落。空売り買い戻しによる逆襲ステージはひとまず幕を下ろした感じとなり、前日の欧州時間からピタリと相場の上げ足が止まった。もっとも米国株市場ではNYダウ、ナスダック総合株価指数ともに高かったのだが、取引時間中はマイナス圏で推移する時間帯もあり、結局6日続伸とはいってもダウの大引けはわずか34ドル高。直前までの強烈なリバウンド相場を考えればその残滓(ざんし)のような上げにとどまった。
米長期金利の思わぬ急低下で株式市場は活気を取り戻したわけだが、果たしてこの金利低下が持続性を伴うものかどうかは疑問符がつく。前週1日に発表された10月の米ISM製造業景況感指数、3日に発表された10月の米雇用統計、いずれもコンセンサスを下回る内容であったが、これは自動車大手へのストライキの影響が反映されたもので、市場関係者によると「ISMも雇用統計も特段サプライズ感はないし、既にストは終了していることから、次回11月分の数値におそらくその反動が出る」(生保系エコノミスト)とする。米長期金利の低下は糠(ぬか)喜びにならないとも限らないと警鐘を鳴らす。
それにしてもボラティリティの高い相場である。躊躇や痛痒(つうよう)を感じることなく一方向に振り切るAI売買の影響が大きいと思われるが、しかしこれが潮の流れ(相場のトレンド)とは異なり一時的な波の上下動であるとするなら、先物の影響を受けにくい個別株に照準を合わせた投資戦略で対処することが可能だ。決算発表というイベントドリブンにも絡まない決算通過後の内容の良い銘柄の中から、株価が好位置にあるものを狙ってみたい。
個別銘柄では、好決算発表で買われた後ひと息ついている銘柄に照準を合わせる。前週の日銀金融政策決定会合で改めて植田日銀総裁のハト派姿勢が明らかとなったが、こうなるとメガバンクや大手生保株にとっては風向きが悪くなった。逆にポジション的に有利となるのが、調達コスト上昇が抑えられる不動産関連セクターだ。今の日本がインフレの初動とするなら、インバウンド特需なども考慮して土地周辺ビジネスは今後に期待が大きい。そのなかロードスターキャピタル<3482>は増収増益路線をまい進中。連結決算となった15年12月期以降の業績推移を見れば、その成長の軌跡に目を見張らされる。また、運送・倉庫関連ではヒガシトゥエンティワン<9029>の1000円近辺はマークしておきたい。PER9倍で配当利回りも3.4%前後あり割安に見えるが、時価は何と上場来高値付近に位置。ここをクリアすれば株式需給面で戻り売り圧力から解放される。
好決算銘柄の中では日本ギア工業<6356>も強い動きだ。24年3月期の営業利益は従来予想の6億5000万円から14億6000万円(前期比52%増)に大幅増額。10月27日に大陽線で立ち上がった後も上値を慕う展開にある。30日に大商いでザラ場510円の高値をつけた後に値を消し大陰線で引けたが、その後の株価の出直りに大きな特徴がある。30日にこなした出来高よりも遥かに少ない水準で高値奪回目前まで浮上してきた。大商いでつけた高値に再挑戦する場合に、通常は戻り売りをこなすだけの出来高が必要となるが、その例に当てはまっていない。上値にシコリがないことの証左である。
このほか生成AIによるフェイク動画が世界の耳目を集めており、AI関連株の一角に再脚光を浴びる銘柄が出てきそうだ。ここでも業績内容の良い銘柄をチェックしておきたい。例えば金融・流通・通信向けで実績が高い独立系システムインテグレーターのキューブシステム<2335>はAI技術を駆使したサービスに傾注している。足もとの業績も好調で23年4~9月期の営業利益は前期比33%増の7億9400万円と大幅な伸びを確保した。また、情報システムと電子デバイスを手掛ける都築電気<8157>は生成AIの活用支援サービスなどで時流を捉え、低PERかつ配当利回りの高さも魅力となっている。
あすのスケジュールでは、消費活動指数が午後取引時間中に発表される。また、東証グロース市場にDAIWA CYCLE<5888>が新規上場する。海外では9月のユーロ圏小売売上高、ポーランド中銀の政策金利発表のほか、米国では9月の卸売在庫・売上高に注目度が高い。米10年物国債の入札も行われる。また、ウィリアムズNY連銀総裁の講演も予定されている。国内主要企業の決算発表では富士フイルムホールディングス<4901>、リクルートホールディングス<6098>、三井不動産<8801>、ソフトバンク<9434>など。(銀)