明日の株式相場に向けて=上げ潮に乗る半導体関連の中小型株
週明け13日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比17円高の3万2585円と小反発。相場は果たして強いのか、弱いのか判然としない。日経平均の水準だけ見るとかなりの強調展開に見えるのだが、投資マネーは妙に冷めている。空売りの買い戻しが原動力で、これが止まると全体相場の上値も途端に重くなる。
まず、前週末を振り返ってみたい。アジア株市場は総じて軟調で、それを引き継いで欧州株市場もほぼ全面安商状であった。ところが、米国株市場が無双ぶりを発揮し、朝方売り物を吸収して主要株価指数が揃って高くスタートした後、尻上がりに株価水準を切り上げる強調展開をみせた。これは先物主導のスライス買いが入った時に見られることが多いチャートパターンで、特にハイテク株への買いが顕著となりナスダック総合株価指数の上昇率は2%を超えた。こうした経緯から、ナスダック市場との連動性が高いといわれる東京市場にも週明けは望外の強気相場のバトンが回ってきた。
日経平均は寄り後早々に350円近い上昇で3万2900円台まで値を飛ばし、9月20日以来となる3万3000円台乗せが視野に入ったかに見えた。だが、「この水準で上値を買おうとする実需筋は少ない。ショートカバーが切れると途端に買い板の薄さが目立つ」(中堅証券アナリスト)というように、その後は上値が重く、後場に入るとあっという間に値を消した。無人エレベーターとは言わないまでも上昇相場を一皮むけば高揚感に乏しい地合いが露呈するのが今の東京市場であり、日経平均は3万3000円まであと一歩というところで電池が切れたような状態となった。
今週はあす14日に10月の米消費者物価指数(CPI)、15日には10月の米生産者物価指数(PPI)と米小売売上高が発表される。重要経済指標が相次ぐなか、これまでであればマーケットは固唾を飲んで見守る場面だが、米インフレ懸念とそのバロメーターである米長期金利の動向は既に最大の関心事ではなくなっている感触がある。もちろん、その内容次第で相場は大きく上下に振れる可能性はあるが、インフレに対する警戒感は本音の部分では過去のものとなっている。むしろ、ここから先は急速な米景気の冷え込み、つまりリセッションに向かう可能性が相場の波乱要因として意識される段階へと移行しそうだ。今度はこの米経済のブレーキのかかり具合が利下げ催促のシナリオと表裏一体となって、投資家心理は強気と弱気の狭間で揺れ動くことになる。
そうしたなか、グロース株復権の流れも必ずしもアテにはできないが、日米ともに半導体関連の主力株が先駆して買われていることで、同関連で出遅れている中小型株に目を向けておくのは一法だ。岸田政権に対する期待感が希薄化し、政権支持率急低下で国策関連という切り口自体が市場では忘れ去られている。そうした事情からテーマ買いが盛り上がらないのは仕方ないが、それでも 半導体の持つテーマ性は別格といえる。直近では23年の補正予算案で経済産業省が半導体支援に1兆8537億円を計上したことが伝わっている。最先端半導体の量産を目指すラピダスやTSMC・ソニー連合による熊本新工場稼働に向けた資金支援は、まさに国を挙げて後押ししようとする確かな意思が感じられる。
レーザーテック<6920>、東京エレクトロン<8035>という主力どころは恒星の輝きを放つシンボルストックだが、その周辺で噴き上げる惑星銘柄をきっちり捉えていくのが実践的だ。当欄で継続注目してきたミナトホールディングス<6862>は、きょうは好決算を好感されストップ高カイ気配に張り付く人気となった。2匹目、3匹目のドジョウもいるはずである。きょう後場取引時間中に好決算を発表した浜井産業<6131>はリバウンドの初動とみられるほか、キオクシア関連で実績の高いティアンドエス<4055>や、半導体商社で自社開発も行う佐鳥電機<7420>などは一段の上値余地が感じられるポジションにある。
あすのスケジュールでは、10月の投信概況、5年物国債の入札など。海外では10月の英失業率、7~9月期ユーロ圏実質GDP改定値、11月のZEW独景気予測指数のほか、10月の米消費者物価指数(CPI)にマーケットの関心が高い。10月の全米自営業者連盟(NFIB)中小企業楽観度指数も発表される。なお、インド市場は休場となる。国内主要企業の決算発表ではヤクルト本社<2267>、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>、第一生命ホールディングス<8750>などが予定されている。(銀)