明日の株式相場に向けて=損益通算終了で復活の鐘を待つ銘柄群
きょう(26日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比51円高の3万3305円と3日続伸。前週末を境にハイボラティリティ相場から一転して様子見モードの地合いに変わったが、それでも下値は頑強で、直近3営業日は匍匐(ほふく)前進のようにジリジリと株価水準を切り上げている。きょうは核融合関連の一角がメディア報道に乗って動いた程度でテーマ買いの動きはあまりみられなかったが、それでも半導体関連株は相対的に強さを発揮している。
レーザーテック<6920>が異彩の上げ足で7連騰、上場来高値を連日更新している。AIアルゴリズム取引の影響もあって、相変わらず突出した売買代金をこなしているが、市場筋いわく「個人は売り建てている短期トレーダーが多い。買い手は海外ファンドで、外国人は大方ウインターバケーションに入っているはずだが、同社株は別格扱いのようだ」(ネット証券マーケットアナリスト)」とする。信用取組は一段と売り買いがタイト化し、信用倍率は0.94倍、日証金では大幅に売り長で逆日歩がついた状態が長く続いている。
同社株は株式需給面で踏み上げの様相が強く、ショートポジションに特化している投資家はたまったものではないが、これは理由なき上昇ではなく合理的な背景もある。生成AI市場の急拡大を受けて、エヌビディア<NVDA>の製造するGPUに爆発的需要が押し寄せたのは周知の通り。しかしこれは第1幕であり、今は第2幕が始まっているという。GPUを動かすメモリーとの間で電力消費量が膨大化するため、これに伴う熱も問題視されるが、その結果これらの課題をクリアする高性能メモリーHBMの普及に拍車がかかっている。併せて半導体微細化で必須となるEUV露光技術が改めて注目される状況にあり、EUV露光装置向けフォトマスク検査装置を世界で独占供給するオンリーワン企業のレーザーテクが脚光を浴びる格好となった。このHBM関連ではパッケージングを手掛けるTOWA<6315>なども強力に買い進まれている。半導体関連はグロース優位とかバリュー優位といった次元から離れて、今後も波状的な買いが続きそうだ。
また、半導体関連に限らない。海外投資家不在のマーケットでもそれなりに活気が感じられるのは、中小型株の個別物色が活発なことによる。きょうは小型株指数の上昇が目立ち、東証グロース市場指数も小幅ながら反発した。あすが12月権利付き最終日で損益通算の売り圧力はここまで。それが分かっているからこそ安値で拾いたいという思惑が錯綜し、ともすればフライング気味に小型材料株に火がつくケースが見受けられる。
新規公開では産直サイトを運営する雨風太陽<5616>がセカンダリーで怒涛の上昇パフォーマンス。これに刺激されたというわけではないのだろうが、農業総合研究所<3541>がにわかに動意含みだ。同社の株価は長期トレンドで大底圏に位置するが、ファンダメンタルズをみると黒字化が定着し始め業績は底が入った状態。同社が展開する「農家の直売所」が11月に2000店舗を突破したという。時価総額50~60億円の銘柄としてはこれだけでも結構な資産価値で見直しに値するインパクトがある。また、健康食品のネット通販支援システムを展開するテモナ<3985>が突発高を演じ、こちらは一時ストップ高の286円まで駆け上がった。長い上ヒゲをつけたものの、マックスで上昇率39%という低位株ならではの驚愕パフォーマンスを演じた。
このほか、前週末23日の株探トップ特集「新エース降臨!『究極の高配当バリュー』5銘柄」でも取り上げられていたエスケーエレクトロニクス<6677>の戻り足に弾みがついている。同社は液晶向けフォトマスクで断トツのシェアを有するが、半導体関連だけでなく液晶関連にも市況回復の恩恵が及び始めた。こうなると液晶製造装置を主力とするブイ・テクノロジー<7717>の存在に目を向けておく必要がある。月足でここ5~6年のチャートを眺めると大底。長期トレンドでみた夜明け前の暗闇を買う場面かもしれない。
あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の主な意見(12月18~19日開催分)が朝方取引開始前に開示されるほか、午後取引時間中には11月の建機出荷、11月の住宅着工統計などが発表される。なお、この日は12月の権利付き最終売買日となる。また、IPOが1社予定されており、東証グロース市場にyutori<5892>が新規上場する。海外では1~11月の中国工業利益などにマーケットの関心が高い。(銀)