明日の株式相場に向けて=あおぞら銀のS安にザワつく海外投資家

市況
2024年2月1日 17時00分

名実ともに2月相場入りとなった1日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比275円安の3万6011円と4日ぶりに反落。年明けから強烈な上昇気流に乗った東京市場だったが、日経平均ベースの騰落レシオ(25日移動平均)は前日時点で145%台まで上昇しており、過熱感は拭えない。また、テクニカル以外の要素も考慮して当欄でも今週は“休むも相場”を実践するタイミングではないかと主張してきた。そうしたなか、ようやくというと語弊があるが、日経平均は上昇一服局面を迎えた。

とはいえ、日経平均の下落率は1%にも満たない軽微な下げで、相変わらず押し目買い意欲は健在だ。3万6000円台を割り込んだら自動的にAIの買いスイッチが入るわけでもないのだろうが、軟化してもすぐその下にセーフティーネットが敷かれているような妙な安定感がある。これから本格化する個別企業の決算発表では、引き続き業績予想の上方修正期待がハヤされており、ファンダメンタルズ面から弱気筋に与する要素はないように見える。ただ、それでもきょうの相場つきには一抹の不安がよぎる。

耳目を集めたFOMCではFRBが4会合連続の政策金利据え置きを決めたが、これはほぼ既定路線といってよい。問題は会合後に行われたパウエルFRB議長の記者会見で、これが早期利下げ期待を霧消させる内容だった。「3月のFOMC会合までに利下げを始める確信に至る可能性は低い」というのは遠回しな言い方だが、要は3月利下げの線はないと宣言したようなもの。直前のFedウォッチで、3月利下げ決定の可能性については5月よりは低いとはいえ、それでも4割程度の織り込み度合いであったため、パウエル発言を受けて米株市場にはそれなりの風速で逆風が発生した。ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数の下落率は2.2%と大きく、頼みの綱のマグニフィセント・セブンが全面安となって投資家のセンチメントを冷やした。

こうなると東京市場でもハイテク株中心に売りの洗礼を免れることは難しい。半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が軟調だったこともネガティブ要因だが、厄介だったのはFOMC前に発表された1月のADP全米雇用リポートや1月のシカゴPMIが低調だったこと。これを受けて米長期金利は急低下しており、セオリー通り外国為替市場ではドル売り・円買いの動きを誘発、1ドル=147円台を割り込む円高に振れた。パウエルのタカ派発言に加えて、なおかつ逆モーションの円高というダブルパンチを東京市場は食らう羽目になった。ところが思いのほか底堅い。日経平均は1月に月間で3000円近い大幅な上昇をみせただけに、その反動で先物主導の大幅安に見舞われても不思議はなかったが、実際は後場に下げ渋り、大引けで3万6000円台をキープした。

半導体主力株も前日に今6月期業績の上方修正を発表したレーザーテック<6920>がコンセンサス未達で大きく売られた一方、アドバンテスト<6857>は今3月期の上方修正を素直に好感されプラス圏で着地。半導体関連では他にSCREENホールディングス<7735>も買われており、前日の米半導体株安や円高を考慮すれば上出来だったといえる。半導体セクターに対する投資マインドは決して冷めていない。

では、不安の萌芽をどこに感じるのかといえば、それはあおぞら銀行<8304>の急落である。朝方に今3月期業績予想を下方修正し、15年ぶりの最終赤字に陥ることになった。これを受けて株価はストップ安で売り物を残すという苛烈な下げに見舞われたが、懸念されるのはその背景だ。米国の不動産向けローンで追加引当金を計上したことによるもので、米国の不動産市況の厳しさを想起させる。中国の不動産バブル崩壊については当事者的な絡みはなさそうで距離感がつかみやすいが、邦銀が米国の不動産ファイナンスに足を突っ込んでいるケースでは注意が必要だ。「万が一今回の件が氷山の一角であるとするなら負の連鎖が警戒され、一部の海外投資家がザワついている」(ネット証券アナリスト)という。

あすのスケジュールでは、1月のマネタリーベースが朝方取引開始前に開示されるほか、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札が予定されている。また、午後取引終了後に1月の財政資金対民間収支が発表される。海外では1月の米雇用統計に対するマーケットの注目度が高い。このほか、12月の米製造業新規受注額、1月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・確報値)なども開示される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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