佐藤志樹氏【日経平均反発、4万円台復帰は視野に入るか】 <相場観特集>
―雇用統計発表後の米株高受け安心感、今後の見通しは―
8日の東京株式市場は日経平均株価が急反発、一時600円を超える上昇で3万9000円台後半まで水準を切り上げる場面があった。前週は日米ともに調整色の強い地合いとなったが、前週末の米国株市場でNYダウなど主要株価指数が揃って上昇したことで、東京市場でも足もとリバウンド期待の買いが集まった。ただ、上げ一巡後は伸び悩んでおり、気迷いムードも拭い切れてはいない。ここからの投資戦略はどうあるべきか。東洋証券の佐藤志樹氏にここからの相場展望と物色の方向性などを聞いた。
●「企業実態良好で再び上値指向に」
佐藤志樹氏(東洋証券 ストラテジスト)
東京株式市場は新年度入りとなった4月第1週に大きく下値を試す展開となったが、例年4月初旬は機関投資家の益出しで売りが先行する傾向がある。今週明けはその売り圧力が一巡し、前週オーバーシュート気味に売り込まれた反動で買い戻しが優勢となった。
発表された3月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数の増加幅が30万人強と急増し、事前コンセンサスであった20万人を大幅に上回った。現状では強い景気指標はFRBによる早期利下げ期待が遠のくことから株価にマイナスに作用しやすいが、今回の雇用統計で平均時給の伸び率については前月比0.3%の上昇と事前予想と合致し、投資家の不安心理が増幅するようなことはなかった。これに先立っての米連邦準備制度理事会(FRB)高官のタカ派的な発言、例えばミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が年内利下げ見送りの可能性を示唆するような発言によって事前にガス抜きが利いており、雇用統計の発表は結果的にショート筋の手仕舞い買い戻しを誘う形となった。
きょうの東京市場は雇用統計発表後の米株高で安心感が浮上し、広範囲に買い戻しが利いた。中東の地政学リスクは依然としてくすぶっており注意が必要だが、国内企業のファンダメンタルズは良好だ。25年3月期は24年3月期ほどの業績変化率は見込めないものの、引き続き好調が維持されると考えられる。為替の円安効果については、目先的には政府・日銀の介入思惑、中期的にも日銀の利上げに向けた思惑などが想定され、過度に期待はできないが、一方で直近の日銀短観で開示された設備投資計画などは堅調であり、経済実勢は企業業績に追い風となっている。
5月のゴールデンウィークにかけて向こう1ヵ月の日経平均のレンジは、下値が3万8500円、上値が4万1000円程度を見込む。基本的に下値に対しては底堅く、上値を慕う頻度が高まりそうだ。また、物色対象としては引き続き半導体関連をマークしたい。相対的に後工程の銘柄が注目されやすく、SCREENホールディングス <7735> [東証P]やディスコ <6146> [東証P]などが優位性を発揮しそうだ。また、半導体の素材関連ではレゾナック・ホールディングス <4004> [東証P]のほか、東京応化工業 <4186> [東証P]、日本マイクロニクス <6871> [東証P]などに目を向けたい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(さとう・しき)
明治大学商学部卒。2013年東洋証券に入社。同年より、9年間個人投資家を中心とした資産アドバイザーを経験し、2022年4月より現職に。
株探ニュース