明日の株式相場に向けて=世界を俯瞰しながら日本株を考える

市況
2024年5月9日 17時00分

きょう(9日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比128円安の3万8073円と続落。大型連休明けとなった今週は上下に激しく揺さぶられたが、結局のところは材料不在、週末のオプションSQ算出をにらんだ先物を絡めた仕掛け、というのが実体のようだ。きょうは後半に売り込まれたものの、TOPIXはしっかりプラス圏で着地し値上がり銘柄数が全体の65%を占めた。後場の崩れ足を過度に悲観すると間違える可能性がある。

市場関係者の声を聞いても強気と弱気が入り乱れている状況で、しかもいずれも決定的な根拠に乏しい。それだけ先が見えにくい相場環境といえる。ひとつ確かなことは、年初からの急騰を目の当たりに一時は「新NISA特需」を囃し今後も下値を切り上げる相場が続くというイメージがあったが、これは修正を余儀なくされたということ。一本調子とはいかないまでも「とりあえず4万円台固め」を経て、次のステージつまり年内5万円大台を目指すというシナリオは希薄化した。ネット証券大手の話では、4月に入ってからNISAの口座数が今年に入って初めて減少に転じたという。決して悪い意味で言うのではなく、“夢から醒めた”というのが現在地なのかもしれない。実際問題、今は近くて遠い4万円大台ラインをいつ、どういう形で跨いで行くのか、ということが現実的な関心事となっている。

世界を俯瞰すれば相場は決して弱くはない。欧州株式市場ではここまで英国FTSE100が最高値街道を邁進中だったが、直近は独DAXも遂に史上最高値圏に回帰した。年内の利下げ有るや無しやで一喜一憂する米国株市場とは異なり、欧州市場はECBが6月利下げに動く可能性がかなり高いとみられており、流動性相場復活への期待が募る。

一方、アジア市場に目を向ければ、不動産バブル崩壊でリスキーな経済環境が喧伝されていた中国・上海株の戻り足が鮮明だ。香港ハンセン指数もこれに歩調を合わせてにわかに上値指向に弾みがついている。ついこの間まで中国からの投資資金退避(流出)の観測がメディアを賑わしていた。少々の景気指標の改善で、潮の流れが劇的に変わるとも思えないが、もしそれが根拠であるとしたなら、中国株凋落のシナリオを底値圏で喧伝したメディアの先見性のなさは罪深いものとなる。

個別株は決算発表が佳境を迎えつつある。社数的にはあす10日をピークに来週半ばまでに集中的に開示され、15日でほぼ終了形となる。決算跨ぎで株を保有するのはなるべく避けた方が無難だが、好決算を発表した銘柄の中から日柄とチャートを吟味して改めて投資対象を選別していくというのは有効な作戦である。好実態株はそれが表面化した時に過剰に買われる傾向があるが、それが一巡した後に調整を入れても大半は下値切り上げ波動を維持しているケースが多く、いわば「買いの目印」がついたような状態となる。

例えば、工業炉トップの中外炉工業<1964>の業績は好調を極めており、4月末に発表した25年3月期の営業利益は前期比74%増益予想で、配当も前期実績から20円増配となる100円を見込む。PER・PBRともに割安感があり、7日に3545円の高値をつけた後に調整を入れているが、そろそろ狙い場が近づいているように見える。全固体電池関連としてのテーマ性も内包しておりチェックしておきたい。また、九州電との関係密接で存在感を示す正興電機製作所<6653>も好チャート。24年12月期は大幅増収増益で売上高・経常利益ともに過去最高を更新する見通しだが、株価面では最高値が21年2月の2615円で時価とかなりのギャップがある。このほか、好決算発表組で押し目買い妙味のある銘柄としては、航空機などのオペレーティング・リースを手掛けるジャパンインベストメントアドバイザー<7172>や中古車クレジットや自動車保証などを主力展開するプレミアグループ<7199>。また、SNSでの炎上対応などネットセキュリティービジネスを展開するエルテス<3967>の底値離脱を先取りする作戦も面白そうだ。

あすは、株価指数オプション5月物の特別清算指数(オプションSQ)算出日。このほか、3月の家計調査、3月の国際収支、4月の貸出・預金動向などが朝方取引開始前に開示されるほか、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札、30年物国債の入札が予定されている。午後取引時間中には4月の景気ウォッチャー調査が開示される。海外では5月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)、4月の米財政収支など。インドネシア市場は休場となる。国内主要企業の決算発表では、資生堂<4911>、オリンパス<7733>、東京エレクトロン<8035>、三井不動産<8801>、NTT<9432>などが予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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